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上位指名はすでに確定?! 八村塁がNBAドラフト・コンバインに招待されていないワケ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
すでにNBA関係者から高い評価を受けている八村塁選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【NBAドラフト前の2大イベント】

 今やバスケ日本代表のエース格である八村塁選手が、アーリーエントリー制度を利用してNBA入りを目指すことを表明したことで、日本でもすっかり注目を集めることになりそうな2019年のドラフトだが、今年は6月20日に実施される予定だ。

 そこでドラフト本番を前に注目してほしいのが、関連2大イベントである『NBA Draft Lottery(NBAドラフト抽選会)』と『NBA Draft Combine(NBAドラフト・コンバイン)』だ。まずドラフト抽選会は、今シーズンのプレーオフに進出できなかった12チームによって、ドラフト上位12番目までの指名順をくじ引きで決めるというもので、5月14日に実施される。

 もう1つのドラフト・コンバインは、ドラフト指名候補選手を一堂に集め、彼らの身体能力やスキル能力を確認するため、フィジカルチェックや試合形式の練習を行うもので、まさに選手たちの品評会といえるものだ。今年は5月16-17日の日程で、シカゴで開催されることになっている。

【ドラフト・コンバインの参加リストに八村が含まれず】

 ドラフト抽選会は選手と直接関係ないが、ドラフト・コンバインは自分で道を切り開ける、ドラフト前の大事な登竜門ともいえるイベントだ。ただNBA入りを目指すすべての選手が参加できるわけではなく、リーグから招待を受けた選手に限られている。

 すでにNBAから公式リリースが発表されており、今年は5月8日時点で66選手が参加予定だという。リストには今年のドラフトで1位指名が有力視されているザイオン・ウィリアムソン選手を含め、注目選手がズラリと名を連ねている。だが肝心の八村選手の名前は入っていないのだ。

【ドラフト・コンバインがすべてではない!】

 参加者リストはあくまで予定であり、今後入れ替わる可能性もある。だが八村選手が招待されていないということで、本当は彼が日本で騒いでいるような注目選手ではなく、ドラフト上位指名の可能性を危惧する人がいるかもしれない。だがNBA入りを目指す選手にとって、ドラフト・コンバインがすべてではないのだ。

 過去の例を調べてみると、すでにドラフト上位確実な選手たちが招待されなかったケースが度々ある。わざわざドラフト・コンバインで彼らの実力をチェックする必要がないと判断されたからだ。つまり八村選手が招待されなかったのは、NBA関係者からすでに高い評価を受けているという現れと見ていいわけだ。

【本当に重要なのは各チームごとに実施される個別審査】

 実はドラフト・コンバインはチームから見て選手の品評会という要素だけでなく、逆に選手からすれば自分の実力を推し量れるバロメーターとしても機能している。今年もドラフト注目選手の多くがウィリアムソン選手をはじめ1年、2年生で占められている。NCAAのルールで5月29日までにアーリーエントリーからの撤退宣言をすると、再び大学に戻ることができるのだ。そうしたアーリーエントリーの選手たちに自分の実力を把握させる場として、ドラフト・コンバインに招待しているケースもあるわけだ。

 つまり大学で3年間を過ごし、しっかり成長過程を把握できている八村亜選手を、ドラフト・コンバインに招待する必要がなかったのだ。ドラフト候補選手たちにとって本当に重要なのは、ドラフト・コンバイン後に各チームが独自に選手を招聘して行う個別審査だ。そこでチームは選手をしっかり見極め、最終的にドラフト指名選手を決定することになる。この時期に八村選手がどのチームから声をかけられるかが大切なのだ。

 いずれにせよ今後1ヵ月の八村選手の動向に注目していくしかないだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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