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全英オープン出場を控え、想いを語ったタイガー・ウッズ。右足が「ある」ことに感謝し、「素晴らしい日々」

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ゴルフ界の王者タイガー・ウッズが今年5月の全米プロ以来の大会出場を果たし、元気なプレー姿を披露した。

 とはいえ、ウッズが出場したのは公式大会ではなく、アイルランドで開催されたJPマクマナス・プロアマという2日間36ホールの非公式大会。ウッズは77-74の通算7オーバーで回り、優勝したザンダー・シャウフェレとは17打差で終わったが、スコアこそ振るわずとも、来週の全英オープン出場を控え、いい感触が得られた様子。

 「少なくとも、もう1度、高いレベルで勝利を競いたい」と語り、笑顔を輝かせた。

【全英オープンへの想い】

 昨年2月の交通事故で右足に重傷を負ったウッズは、今年4月のマスターズで14か月ぶりの試合出場を果たし、「奇跡のカムバック」と呼ばれた。

 起伏が激しく、歩くだけでもタフなオーガスタ・ナショナルで初日71で発進したこと、予選通過も果たしたことは、まさに奇跡だったが、決勝2日間はどちらも78を喫し、47位で戦いを終えた。

 続く5月の全米プロでは、初日74、2日目69で、やはり予選通過を果たした。しかし、右足を引き摺るようにして歩く姿は痛々しく、右足の状態は日に日に悪化。79を叩いた3日目のラウンド後、棄権を表明し、コースを去った。

 そして、6月の全米オープンは欠場する道を選んだが、その時点で7月の全英オープンには出場する意思を示していた。その全英オープン前週に参加した今回の非公式プロアマ戦は、ほぼ2か月ぶりの試合出場となる全英オープンに向けたウォーミングアップ的な意味合いが大きかった。

 大会を終え、欧米メディアと向き合ったウッズは、右足の状態を尋ねられると、「ちゃんと付いてるよ」と笑いながら答えた。そして、いまなお回復途上である右足以外には体の故障や懸案事項はないことを明かし、全英オープンへの自分なりの準備が万端であることを明かした。

 「元々は全米オープンに出る予定だったけど、あのころは右足にある問題が生じ、そのまま無理して全米オープンに出ると、全英オープン出場が危うくなりかねない状況だった。その危険を冒してまで全米オープンに出る理由はなかった」

 全米オープン欠場当時の様子をそう説明したウッズは、ゴルフの聖地セント・アンドリュースが舞台となり、記念すべき150周年を迎える今年の全英オープンへの熱い想いを、こんなフレーズに込めた。

 「今年は歴史的な全英オープンになろうとしている。幸運にも僕は過去の全英オープン覇者として、そこで戦うことができるし、戦うことを望んでいる。少なくとも、もう1度、高いレベルで勝利を競いたい」

【素晴らしい日々】

 ウッズはセント・アンドリュースで開催された全英オープンで2000年と2005年に勝利を挙げている。だが、舞台は同じでも、当時と今とでは、同じ戦い方ができるわけではない。

 右足を酷使することができないため、スイングの際にウエイトシフトが上手く行なえず、かつてのように異なる弾道を自在に打ち分けることは、今はできない。

 今回のプロアマ戦では、ウッズは乗用カートを利用しながらのプレーとなったが、「できる限り、右足への負担を減らし、できる限りエネルギーをセーブして、全英オープンに備えたい」。

 肉体にも、ゴルフのワザにも、今ではいろいろな形で制約ができてしまっているが、ゴルフ界の王者は、それさえもポジティブに捉えている。

 「自分の足が2本あることを、当たり前だと思っている人々はいると思うけど、もはや僕は当たり前だとは思っていない。足を失いかけた人や失った人は、僕のこの言葉の意味がわかるはずだ。(制約がある中での日々は)大変な日々だけど、それは素晴らしい日々でもある」

 ゴルフ界が新ツアー騒動で大揺れしている昨今、王者ウッズの言葉は、久しぶりに耳にしたゴルファーから人々への素晴らしいメッセージだった。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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