日銀の次のステップは利上げに
6月13、14日の日銀金融政策決定会合では「バランスシートの縮小は、拡大した日本銀行の市場への関与を市場への攪乱的影響を避けつつ減らしていくことが目的であり、金融政策とは切り離して行うものである」とあった。
そうであれば、7月の会合では国債の買入減額についての議論はあってもそれは金融政策とは切り離して行なわれる可能性が高い。それでは金融政策についてはどのような議論が行われるのか。今度は「利上げ」に関する意見をみてみたい。
「展望レポートで示した経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになる」
いうまでもなく、日銀の次のステップは利上げとなる。緩和方向から向きを変えようとしなかった今年3月決定会合以前の日銀とは様変わりしていることをあらためて確認した。
「見通しに沿った物価の推移が続く中、コストプッシュを背景とする第2ラウンドの価格転嫁によって物価が上振れる可能性もあるだけに、リスクマネジメントの観点から金融緩和のさらなる調整の検討も必要である」
当然ながらコストプッシュだから利上げしないということは理由にはならないと。
「来年度後半の2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、オントラックで進んでいるが、上振れリスクも出てきている。こうした点が消費者マインドに影響していることも意識しつつ、次回会合に向けてもデータを注視し、目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要である」
オントラックとは「軌道に乗っている」ということで、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げてほしいとは思うが、そうなるとどうして6月の会合で利上げが議論されなかったのかがむしろ不思議と思う。
「政策金利の変更を考えるタイミングは、消費者物価が明確に反転上昇する動きや、中長期の予想インフレ率の上振れなどを経済指標で確認してからで良いと考えられる」
利上げが議論されなかった背景のひとつとして、こういった慎重姿勢の委員が多かったためともいえるか。今回の意見でも利上げ積極派はまだ少数か。
そして下記のような意見もあった。
「金融政策運営は、物価の基調とその背後にある賃金動向を見極めて行うものであり、為替の短期的な変動には左右されない」
しかし、これをあまり強調してしまうと4月の会合後の総裁会見をきっかけとし円安を再び招くリスクがあり、このあたりは慎重に発言も求められよう。ということで下記のような意見も出ていた。
「円安は物価見通しの上振れの可能性を高める要因であり、リスクマネジメントアプローチに立って考えれば、リスク中立的な、適切な政策金利の水準は、その分だけ上がると考えるべきである」
イエレン米財務長官から、円安に対しては介入よりも別な対応を求めるような発言も出ていた。このため、個人的に6月の会合での利上げの可能性を意識していたが、6月の利上げは見送られ、国債買入減額についても具体的な対応は先送りした。
しかし、これで日銀が国債買入減額や利上げに向けて慎重との見方は違うとみている。
より相応、つまり大規模な国債買入削減を7月までに決定する。さらに、国債買入削減を金融政策と切り離す。そして金融政策については利上げを軸に検討し、円安への影響も踏まえた上で、7月の会合で実質的な検討に入る。今回の主な意見からはそのように感じられた。