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マンフレッド・コミッショナーも悲観するオークランドがすべてのプロチームを失いかけているワケ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
オークランドの新球場建設に悲観的な見方を示したマンフレッド・コミッショナー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【コミッショナーがオークランドの新球場建設に悲観的な見方】

 MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーが現地時間の10月29日、米衛星ラジオのインタビューに応じ、新球場建設および移転問題に揺れているアスレチックスに関し、オークランドが検討している新球場建設計画について「実現するとは思わない」と悲観的な見方を示した。

 マンフレッド・コミッショナーは以前にも、アスレチックスが現在使用している「リングセントラル・コロシアム(旧称オークランド・コロシアム)」について「MLBの公式戦を主催するレベルにない」と酷評しており、オークランドで新球場建設が実現しない限り、1968年からオークランドを本拠地にしてきたアスレチックスは、コロシアムのリース契約が切れる2024年シーズン終了に合わせ、新たな本拠地を探さなければならない状況にあった。

 今回のマンフレッド・コミッショナーの発言により、アスレチックスは新球場建設から本拠地移転に大幅に路線変更していくことがさらに現実味を帯びてきた。

【有力候補地はラスベガスだが現時点では「未定」】

 長年オークランドの新球場建設計画が協議される一方で、アスレチックスの移転に関しても様々な案、噂が浮上していた。その中でもここ最近は、NHL、NFLのチーム誘致に成功しているラスベガスが有力候補地だと目されていた。

 マンフレッド・コミッショナーも前述の衛星ラジオ上で、ラスベガス移転について「おそらく(likely)」と応じている。

 だがワールドシリーズ第2戦前に行われた全米野球記者協会主催の記者会見に出席したマンフレッド・コミッショナーは、ロサンゼルス・タイムズ紙のビル・シャイキン記者の質問に応じ、「正式なものでもないし、すぐに決定するものでもない」と慎重な発言に止まっている。

 さらにコミッショナーは「アスレチックスは今も2つのオプション(新球場建設で残留か本拠地移転)がある。まだオークランドは時間を残しているが、個人的には時間切れになると考えている」とした上で、さらにラスベガスに移転について以下のように述べている。

 「(まだアスレチックスは)ラスベガスといろいろ協議していかねばならないし、まだどの移転計画についても固まっているわけではない。現時点では今後も2つのオプションを検討していく必要がある」

【すでに2つのプロチームを失ったオークランド】

 シャイキン記者の記事によれば、ラスベガス移転は未定としながらも、マンフレッド・コミッショナーはオークランドの新球場建設について改めて悲観的な見方を示している。

 その背景にあるのは、これまでのオークランドとプロチームの寂しすぎる関係性にあるように思う。

 つい最近までオークランドは、アスレチックスの他にNFLのレイダーズとNBAのウォリアーズを抱えるスポーツタウンだった(ちなみに1967~76年までNHLのチームもオークランドを本拠地にしていた)。

 レイダーズは1966~81年と1995~2019年の期間(一時ロサンゼルスに移転する)、ウォリアーズは1971~2019年までオークランドを本拠地にし、レイダーズはアスレチックスとともにコロシアムを共用し、ウォリアーズはコロシアムに隣接する「オラクル・アリーナ(旧称オークランド・アリーナ)」を使用していた。

 しかしコロシアム、アリーナともに1966年に開業した古い施設であるのだが、財政的に余裕のないオークランドは、コロシアムは1995~96年に、アリーナは1996~97年に大幅な改修工事を実施しただけだった。

 そうした施設の老朽化もあり、レイダーズは新スタジアムを求めてラスベガスに、ウォリアーズも新アリーナ建設に合意できたサンフランシスコに移転していった。

 残念ながらマンフレッド・コミッショナーの発言を聞く限り、プロチームに非協力的なオークランドの姿勢はあまり変わっていないようだ。

 アスレチックスをオークランドに残すには、2025年春に新球場を開業しなければならない。最早待ったなしの状況だ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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