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山田孝之「『ありがとう』と言い合える場所を増やしたい」有機農法の師匠 “菌ちゃん先生”の農園を訪ねて

秋吉健太編集者

【山田孝之・長崎県佐世保『菌ちゃんファーム』を訪ねて】

俳優の山田孝之さんが「生きる力を身につけたい」と仲間を集めてスタートしたコミュニティ『原点回帰』は2021年春のスタートから数えて3年目を迎える。

山田さんはこの3年間、日本中にいる「有機農法」や「釣り」「野草」などの達人たちのもとを自ら訪ね様々なことを学び、コミュニティのメンバーにシェアをしている。

いまから3年前の『原点回帰』スタート時、まず山田さんが取り組んだのは有機農法を学ぶこと。現在では全国各地にある15箇所の農場で有機農法に取り組み、収穫した作物はメンバー同士でシェアしているという。

今回、山田さんは有機農法の師匠である長崎県佐世保にある農場『菌ちゃんふぁーむ』の吉田俊道さんのもとを訪れた。

吉田俊道さん(写真左)/吉田さんが提唱する『菌ちゃん農法』を紹介した『図解でよく学ぶ菌ちゃん農法』(家の光協会)を1月27日に上梓
吉田俊道さん(写真左)/吉田さんが提唱する『菌ちゃん農法』を紹介した『図解でよく学ぶ菌ちゃん農法』(家の光協会)を1月27日に上梓

約3haの面積を持つ『菌ちゃんふぁーむ』の農園をぐるっと回りながら、現在吉田さんが取り組まれていることを教えていただく山田さん。その時の様子を紹介する。

【山田孝之さん× "菌ちゃん先生" 吉田俊道さん対談】

山田孝之さん(以下:山田さん)「前にこの農園に来た時も『実験してる』って言われてましたけど」

吉田俊道さん(以下:吉田さん)「あれはまだ実験の途中。今度新しい実験やりますよ」

吉田さん「これは菜の花の仲間で『かき菜』といいます」

山田さん「めちゃくちゃ元気で、まったく虫食いがないですね」

吉田さん「冬の間に一生懸命栄養をためて、春になっていよいよ子作りに入ったわけ」

農園で育てているかき菜についてクイズを出す吉田さん
農園で育てているかき菜についてクイズを出す吉田さん

吉田さん「ひとつクイズです。かき菜が子作りの段階になったいま、これまでいくら伸びても葉っぱは固くならなかったのに、花を咲かせる花茎(かけい)だけは固くなるのはなぜだかわかりますか?」

山田さん「倒れないように?」

吉田さん「正解! 要は、一番てっぺんで花を咲かせて、そこに蝶を呼ばないといけないから。もし倒れたり、花が葉っぱに隠れたら蝶やほかの虫も来にくくて受粉できにくいでしょう。だから一番高いところでもしっかり花を咲かせられるように固くなるんです」

「正解! さすがやね!」(吉田さん)
「正解! さすがやね!」(吉田さん)

かき菜のクイズに正解し、吉田さんに握手を求められる山田さん。

山田さん「たくましい手ですね」

吉田さん「いやいや、もう。女子みたいなかわいい手ですよ」

山田さん「こっちはごついんですよ、結構大きいんですよ。指が短いんです(笑)」

吉田さん「あー」

山田さん「絶対、ピアノ弾けない」

吉田さん「ほんとだ」

『菌ちゃんふぁーむ』の中で対談していただいた
『菌ちゃんふぁーむ』の中で対談していただいた

二人の交流はどのようなきっかけで始まったのか訊ねてみた。

山田さん「『原点回帰』はいまは主に畑で作物を育ててみるということをやっていますが、なるべく自然なかたちで作物を育ててみたいんです。『昔はこうやってたのかな』みたいなかたちで野菜を育ててみたいという中で、長崎県の佐世保にある農場『菌ちゃんふぁーむ』で有機農法に取り組まれている吉田俊道先生のことを知って、『是非お話を聞かせていただきたい』という感じでした」

吉田さん「急にこの農園に来ていただいてね。びっくりしましたよ」

山田さん「あのとき、僕花粉症でした」

吉田さん「いまは違うんですか?」

山田さん「基本的には僕は花粉症ではないんですけど、30歳から10年くらい役づくりで体を大きくしていたときだったから、効率よく太るために添加物を摂取していたんです。いまは添加物は取らないので花粉症は治りました」

吉田さん「なるほど、役づくりってそこまでするんですね」

長崎県佐世保市にある『菌ちゃんふぁーむ』
長崎県佐世保市にある『菌ちゃんふぁーむ』

3年前、はじめてここを訪れた時の山田さんの第一印象について吉田さんに聞いてみた。

吉田さん「テレビでしか見たことのないような大俳優が『野菜を作りたい』って、佐世保にあるこの農園までやって来られて。こんなにありがたいことはないですから、ぜひ成功してほしくてこちらも一生懸命『こんな感じですよー』ってお伝えしたことを覚えておりますけど」

山田さんは吉田さんから有機農法を学び、それを原点回帰のメンバーにシェアし、全国15箇所にある畑で実践している。筆者は以前、佐賀県神崎にある原点回帰の畑でメンバーたちで畝作りをする様子を取材させていただいたが、畝作りから半年後にはたくさんの野菜が育っている様子を目の当たりにして「ここまで育つんだ」と感心したことがある。

『原点回帰』メンバーと一緒に『菌ちゃん農法』を実践した佐賀県神崎の畑
『原点回帰』メンバーと一緒に『菌ちゃん農法』を実践した佐賀県神崎の畑

有機農法を行う吉田さんは“菌ちゃん先生”の愛称で親しまれている。取材日、農園には全国から吉田さんの元で有機農法を学びたいと集った人たちがそれぞれ作業をしていた。中でも若い人の姿が多かったのが印象的だった。

『菌ちゃんふぁーむ』でには全国から有機農法を学びに来ている人の姿が
『菌ちゃんふぁーむ』でには全国から有機農法を学びに来ている人の姿が

山田さん曰く、”菌ちゃん先生”こと吉田さんは原点回帰メンバーのアイドル的存在なのだそう。

山田さん「最初に始めた山梨の畑もそうですし、吉田先生は講演会で日本全国回られてるので、タイミングが合ったときは畑に来てもらって、みんな、もう、メンバーもそうすると、『うわー、菌ちゃんだー!』ってなるんですよ」

「野菜が元気になると虫や病気にならない」

吉田さんが農園で取り組まれている「菌ちゃん農法」について教えていただいた。

吉田さん「『菌ちゃん野菜』っていうのは、いわゆる有機野菜、オーガニック野菜と言ってもいいんですけど、そう言ってしまうと少し意味が異なるんですね。オーガニック野菜、有機野菜というのは単に農薬を使ってない、農薬、化学肥料を使ってない野菜っていうことになってしまうんですね」

「これ、食べてみてください」と春キャベツを手にする吉田さん
「これ、食べてみてください」と春キャベツを手にする吉田さん

吉田さん「ところがそれってね、農薬を使う代わりに防虫ネットを張ったり、あとは安全だと周知されてる農薬を使ったりしてるんです。そうじゃなくて、『野菜が元気になると本来病気や虫は来ないんだよ』という考えなんですね。そして、野菜を元気にしてくれるのは土にいる微生物なんです。私たちも腸内細菌が体を健康にしてくれるように、お野菜も土に菌ちゃんがいっぱいいないことには元気になれないんですよ」

山田さんが考える「菌ちゃん農法」の魅力

山田さん「最初に吉田先生から教えていただいた頃は、まず竹を燃やして炭にして、それを土に混ぜて、あとは茅(かや)を干して畝に使うというものだったんですね、それが3年前。竹や茅などのみんなが処分に困ってるものを使って、土の中の菌を元気にすることで良い野菜をつくるっていうのが面白いなと思いましたね」

吉田さん「逆転の発想みたいな感じでね、なるほど」

『原点回帰』がスタートした当時、3年前の様子。山梨県にある原点回帰の畑では、近くの竹林にて倒れていたり放置されている竹を集めて燃やし、竹炭を作ってそれを畑の土に混ぜ込んだ
『原点回帰』がスタートした当時、3年前の様子。山梨県にある原点回帰の畑では、近くの竹林にて倒れていたり放置されている竹を集めて燃やし、竹炭を作ってそれを畑の土に混ぜ込んだ

山田さん「さっきも『菌ちゃんふぁーむ』を一緒に周りながらいろいろ教えてもらいましたけども、実験を繰り返して、どんどん、どんどんアップデートしていくから、以前教えていただいたことをずっとやってると『もう古い!』とかって、すぐ言われるんだけど」

吉田さん「すみません」

山田さん「いやいや…、いつもこうして教えていただいてありがたいです」

吉田さん「どんどんってほどじゃないけど、微妙にいろんな改良が進んでいて、それを毎回シェアさせていただいています」

吉田さんは有機農法をはじめて約30年になるが、いまも日々挑戦を続けているのだろうか。

吉田さん「そりゃそうですよ。いろんな条件を変えてどれが一番いいかを見たり、新しい仮説を考えて実際うまくいくか検証してるわけです」

畝に刺さっている木片には「木チップ5cm+小丸太」「木5cm」「木10cm」などが書かれており、土の中の菌にどんな影響を及ぼすかの実験がされていた
畝に刺さっている木片には「木チップ5cm+小丸太」「木5cm」「木10cm」などが書かれており、土の中の菌にどんな影響を及ぼすかの実験がされていた

『原点回帰』が「菌ちゃん農法」を取り入れて畑で野菜作りを始めて3年間が経ち、いまでは全国15箇所の畑でメンバーが日々作物を育てている。

山田さん「各都道府県の畑はそれぞれ育てている作物が違うんです。気候も違えば土壌も違うし、皆さんそれぞれお仕事もあるからどのタイミングで畑に行けるかも異なったりするから」

農薬を使わず、山田さんたちは具体的にどんなことをやってみたのだろう。

山田さん「山梨の畑は要らなくなった竹を燃やして作った竹炭を土の中に混ぜたし、佐賀の畑の場合はメンバーの中に庭師の方がいてたので切った材木とかが余っていて、それが置いてあって既に発酵して熱を持ってるような状態だったものを土の中に入れちゃおうみたいな。トラックでドカーッと入れましたね」

吉田さん「竹、茅などそこにあるものを使うわけです、そこで邪魔になるものをね。それらを土の中に混ぜてあげると菌が活性化する」

佐賀県神崎にある畑で『原点回帰』メンバーと一緒に畝作りをする山田さん
佐賀県神崎にある畑で『原点回帰』メンバーと一緒に畝作りをする山田さん

山田さん「『原点回帰』のメンバーには野菜を育てたことある人もいるけども、ほとんどは農の経験がない人たちでやってる中で『菌ちゃん農法』というものをやってみる。するとちゃんと野菜が育つわけですよね、3年前に初めて取り組んだ山梨の畑もそうでしたし。『ほとんどのメンバーが土を触りだして半年』みたいな状態で、『こんなに野菜ってできるんだ』『育ちすぎて、空心菜とかとりきれない』みたいな」

佐賀県神崎にある『原点回帰』の畑では約半年で沢山の作物が収穫できた
佐賀県神崎にある『原点回帰』の畑では約半年で沢山の作物が収穫できた

山田さん「吉田先生は畝(うね)を作るときに土を触って『菌ちゃん元気に育ってね、大きくなってね』みたいに言うことは大事だよって言われてるんですが、そういうのもうちのメンバーには伝わってるんじゃないですかね」

吉田さん「それは伝わってるよね。『原点回帰』の仲間は、めちゃくちゃ元気だからちゃんと伝わるってるだろうね。問題はずっと続かないとダメなんですよ。やっぱり継続、繰り返しが大切なんで。そういった意味では、メンバーが頻繁に足を運んでいる『原点回帰』の畑ほど、よりいいものができてるという感じじゃないですかね」

菌ちゃん先生は元公務員。当時のあだ名は「鉄砲玉」

元々は農業改良普及員として農家を指導する県の公務員だった吉田さん。当時の職場では朝「行ってきます!」と言って朝から農家をまわり、いつまでも戻ってこないということから、付けられたあだ名は「鉄砲玉」だったという。

吉田さん「農業改良普及員の仕事は大好きだったんですよ。有機農法に取り組まれている先進地で技術を学んで『これを広めたい!』と思ったんですけど、受け売りではなく自分がまず有機農法を実践して、自分が成功してそれをみなさんに見せたら、『面白そうやね』と農家のみなさんもやってくれるんじゃないかと思って。それで県職員を辞めました。でも県職員は辞めたけど農業改良普及員は辞めたつもりはなかったんです」

吉田さんが県職員を辞めたのは1996年。それから約30年ほどを経たいま、当時と比べて有機農法はやりやすくなったのだろうか。

吉田さん「そりゃそうですよ。私、いっぱい失敗したもん。失敗して、わざわざいまから始める人が同じ失敗をする必要ないじゃないですか。その先を行ってほしいからね、失敗した事はそれを聞いて、その先で頑張ってもらう。そうしないと、地球環境の問題とか、食糧問題とか考えたときにもうさっさやろうよということで、だいぶやりやすくなってます、今のやり方は」

3haの農園をぐるっと回りながら現在の取り組みを案内する吉田さん
3haの農園をぐるっと回りながら現在の取り組みを案内する吉田さん

全国にある『原点回帰』の畑を訪れている吉田さんに、メンバーについて聞いてみた。

吉田さん「変わった人ばっかり」

山田さん「でしょうね(笑)」

吉田さん「元気なんですよ、『なんであんな元気なの?』っていうほどね」

山田さん「土を触って、太陽の光浴びて、『菌ちゃんげんきっこ』を食べて」

『菌ちゃんふぁーむ』で収穫した野菜で作って販売しているふりかけ『菌ちゃんげんきっこ』
『菌ちゃんふぁーむ』で収穫した野菜で作って販売しているふりかけ『菌ちゃんげんきっこ』

吉田さん「その割には、みんな今まで土触ったことないって人がいてね。『天空の城ラピュタ』でシータが言ってるように私たちは『土から離れては生きていけない』んですよ。その一つの科学的根拠として、腸内細菌が今減っちゃってるの。いつから減ったかというと土から離れてからなんですよ。土に触れることによって、もう一回ね、菌の種類が増えるの。そうするとほんとに健康になるから。『原点回帰』の人たち、だいぶ健康になってるんじゃないですか」

山田さん「僕が年々元気に、健康になってます(笑)」

吉田さん「それ以上元気になってどうするんですか?」

山田さん「爆発しちゃうんじゃないかと思います、いずれパーンって」

吉田さん「いやいや、そんな(笑)」

取材後に立ち寄ったカレー店では『菌ちゃんげんきっこ』を大量にかけて食す山田さん。ロケなどで地方に行く時も常に常備しているのだそう
取材後に立ち寄ったカレー店では『菌ちゃんげんきっこ』を大量にかけて食す山田さん。ロケなどで地方に行く時も常に常備しているのだそう

山田さん「あと僕は納豆よく食べるんですけど、納豆にキムチと、『菌ちゃんげんきっこ』を入れてます」

吉田さん「そうなんですね、ありがたい」

山田さん「面白いですよね。吉田先生に有機農法を教えてもらって僕らが育てた菊芋を先生に買ってもらって、今度は僕らが菊芋の入った『菌ちゃんげんきっこ』を買って、それを自分たちのキムチに入れて」

吉田さん「本当の循環ですね」

『原点回帰』の畑かがある山口県の島で収穫した菊芋が『菌ちゃんげんきっこ』に入っている
『原点回帰』の畑かがある山口県の島で収穫した菊芋が『菌ちゃんげんきっこ』に入っている

『菌ちゃん農法』を行うことで生態系や環境などへの影響はどういうものがあるのだろう。

吉田さん「まず肥料を入れないっていうことですよね。実は肥料って全部野菜が吸ってるんじゃなくて、状況によっても違いますけど5〜7割しか吸ってないんですよ。畑に肥料をふって、耕して、種まくわけでしょ。根が生えても、根ってまだちょっとしか生えてないじゃないですか。そこで雨が降るわけですよ。そうしたら、その肥料が溶けて川と海に流れて、それが川や海を富栄養化してしまう」

「言いたいことはまだいろいろあるんだけど、このへんにしておきます」(吉田さん)
「言いたいことはまだいろいろあるんだけど、このへんにしておきます」(吉田さん)

吉田さん「いままでは肥料がないと育たないと信じ込んでたのよ。『菌ちゃん農法』はそれを『もともと肥料を与えなくても自然って回ってるじゃない』っていう考え方で。でも実は私が考えたんじゃなくてね、炭素循環農法とか、茅(かや)農法って昔からあったの。それを現代風に誰でも分かるようにね、いろいろ研究して始めただけなんですけどね。この方法が広がれば環境がよくなっていく、環境再生型農業なんです」

「農家の人が動くためには、農家じゃないある程度の人数がそれをやることなんです。その時始めて農家の人たちが『みんなにできるなら、プロの俺たちにできないことはない』と思って動かれるんですね」(吉田さん)
「農家の人が動くためには、農家じゃないある程度の人数がそれをやることなんです。その時始めて農家の人たちが『みんなにできるなら、プロの俺たちにできないことはない』と思って動かれるんですね」(吉田さん)

「最近は日々全てに感謝して生きている」

有機栽培を選ぶという選択は生き方にも直結しているのではないかと山田さんに訊ねてみた。

山田さん「どんどん、どんどんあまり考えなくなってきましたね。もう、ただただ日々、全てに感謝して生きてるだけですね」

吉田さん「究極やねー」

山田さん「全然、全然」

吉田さん「いやいや、そこが菌ちゃん野菜の魅力なんですよ。例えば野菜からすれば虫もモグラもミミズも敵じゃなかったし、みんなうまくつながって、みんなが協力し合って生きてるじゃないって。あまりそんな難しいことを考えなくて、ただ感謝。山田さんは先進んでるわ、ほんとに」

山田さん「原点に回帰してるだけだと思いますよ」

山田さんの言葉に深く感心する吉田さん
山田さんの言葉に深く感心する吉田さん

有機野菜を作るという取り組みに関して、誤解されているようなことはあるのだろうか。

吉田さん「誤解というか『ちょっとそれおかしい、そんなの理屈が合わないじゃない』って言う人たちはいらっしゃいますね。でも、あなたの理屈には合わないかもしれないけど、僕は実際にやってるんだもんって思ってますね」

山田さん「先生が畑で『菌ちゃんありがとう』って言うことが大事って言われるんですが、僕もなるべく『ありがとう』っていうこと人に伝えるようにしています。お店で店員さんを呼ぶときや仕事をしてるときに『あ、すみません』ってという風に『すみません』で終わるのではなく『これをやってくれて、ありがとう』っていう風になるべく言うようにしていますね」

吉田さん「もう山田さんは、ほんとに日ごろから『ありがとう』って言ってるんだなぁ」

山田さん「はい。言ってるとやっぱり感じますね、なんか」

吉田さん「やっぱりちょっと原点に戻ってますね」

山田さん「(笑)。単純にとにかく感謝、とにかくいろんなものに感謝して『ありがとう』って言っておくと、どんどん変わってきます、心も体も」

「有機農法を始めて考えがどんどんシンプルになっていますね」(山田さん)
「有機農法を始めて考えがどんどんシンプルになっていますね」(山田さん)

「いろんな物事への執着がなくなってきた」

山田さん「若いときとかは『もうめんどくさいこと多いから、いつ、俺は死ねるんだろうか』みたいなことを考えたりもしました。そこから『いやもうちょっと、やっぱりちゃんと生きたいな』みたいに思ってきてたけど、いまは別にそういうのもなくて、長く生きられたらラッキーだし、仕事に対してもそうですけど、いろんな物事への執着がどんどんなくなってきましたね。だいぶ減ってきました」

吉田さん「私も少しはそれあるんですよ。皆さん、いろんなことで不安になってるけどね、『なんでそんなに不安なんだろう』って。だって、微生物が私を支えてくれてるから、『微生物が私をもし殺すっていうんだったら、それはそれで死んでもいいか』っていう」

収入が生まれた時にどうするかが大事

有機農法の第一人者である吉田さんが『原点回帰』に期待することについて教えていただいた。

吉田さん「とにかく元気なんですよ。みんな若いからね。あの人たちが本物を作り出したら、それは、どんどん広がると思いますよ。ひとつ心配なのは、楽しかったり、強い動機付けがあってグループができて農業をやる。それがうまくいって収入が生まれると、逆に問題になるっていうことがよくありますんでね。収益を分配しないといけなくなるからね。そこで、そのときに原点に戻って『俺がこんだけ働いたから』じゃなくてね、『みんなで分ければいいじゃん』という、そういうふうにみんながそう思えたらいい」

山田さん「昨年『原点回帰』ではお米を作ったんですが、お米はそうできました。田んぼに行った、行ってない関係なく『全員1キロ』を分けました」

吉田さん「そこですよ。それができるだけの心。心がちゃんと精進してあれば、どんどんうまくいきますね。ある程度お金がないと次の投資もできないしね」

ことし春で4年目の活動となった『原点回帰』の次の目標はあるのだろうか。

山田さん「そんな大きな目標とかないんです。とにかく、みんなが原点回帰を通じて心も体も健康になれれば。会えば笑って『ありがとう』って言える。そう言える場所が『原点回帰』。どんどんその笑顔が全国に増えればいいなって思っています」

『菌ちゃんふぁーむ』のみなさんと一緒に
『菌ちゃんふぁーむ』のみなさんと一緒に

第十一期『原点回帰』メンバーが募集

現在、国内15箇所で無農薬自然農法を行う『原点回帰』。4月12日(金)からは第十一期となる新しいメンバーを募集するのだそう。以前、『原点回帰』の畑を訪れたメンバーとなった人に話を聞いた際、「農業をやってみたかったけど、何をやればいいかわからなかったからこのコミュニティと出会えてほんとによかったんです」という話を聞いた。この機会に、あなたもここで野菜を育ててみてはどうだろう。

『原点回帰』 第十一期メンバー募集要項
募集期間/2024.4.12(金)〜2024.4.21(日)
応募に必要な書類などを添え、
「原点回帰」(https://about.gentenkaiki.jp )からアクセス
問い合わせ:株式会社 原点回帰
担当・伊月(イヅキ) mail:izuki@gentenkaiki.jp

<現在田畑がある場所は以下の通り>
石川県能登エリア
山梨県富士川町
埼玉県さいたま市
神奈川県横浜市
愛知県豊川市
大阪府和泉市
京都府宮津市
香川県高松市
広島県尾道市
山口県萩市
山口県無人島
佐賀県神埼市
鹿児島県志布志市
沖縄県中部
沖縄県名護市

編集者

編集者としてのキャリアは出版、web合わせて約30年。雑誌「東京ウォーカー」「九州ウォーカー」、webメディア「Yahoo!ライフマガジン」など雑誌・webメディアの編集長を歴任。街ネタやおすすめの新スポットなどユーザーニーズを意識した情報を、それらの合わせ持つストーリーと共にお届けします。

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