幹部粛清を笑い飛ばす「自虐ネタ」が平壌市民の間で広まっている
北朝鮮軍部の超大物、玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力部長(国防相)が粛清されたとの見方が浮上したのが、5月13日のこと。それからほんの数日のうちに、北朝鮮国内から、庶民の反応も含めて様々な情報が出てきている。
北朝鮮国内にいるデイリーNKの情報源のひとりによれば、朝鮮人民軍では上級軍幹部を対象とした講演が開かれていて、その中で玄永哲氏が次のように言われているという。
「首領(金正恩氏)の指示を拒否し、最高尊厳を冒とくした軍閥主義者」
いまの北朝鮮でこのように見なされれば、まず間違いなく死を免れることはできない。
実際、朝鮮人民軍関係者の中には「玄永哲が、他の軍将校の前で機関銃で銃殺された話を10日ぐらい前に上官から聞いた」と証言する者もいる。
一方、玄氏の名前や写真が、依然として北朝鮮の公式メディアに確認できることから、韓国の北朝鮮専門家の間からは、玄氏が「公開銃殺」されたとの見方を疑問視する声も出ている。
北朝鮮では、粛清された幹部の名前や姿を公式記録や国営メディアから削除するのが一般的だ。しかし、韓国の国家情報院が最近、「今年に入り北朝鮮の幹部15人が粛清された」と発表したことを受け、北朝鮮が玄氏粛清の事実を隠ぺいするために意図的にメディアから削除せずにいるとも考えられる。
そうこうしているうちに、北朝鮮が運営するウェブサイト「わが民族同士」が反応を示した。韓国政府の発表やマスコミ報道を非難しているのだが、玄氏の粛清説については否定も肯定もしていない。
全体的に見るなら、現状ではやはり、粛清は事実と考えるのが妥当かもしれない。
実際、玄氏の粛清説は、平壌市民の間でも急速に広まっているという。とくに若者の間では、早くも「4丁高射機関銃で撃たれたいんか?」という自虐ネタとも言えるジョークが生まれている。
高射機関銃とは、人体を跡形もなく破壊する恐ろしい武器なのだが、それさえも笑い飛ばす市民らのたくましさに、少しだけホッとさせられる。