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破綻したFTXサム・バンクマン-フリード 弁護士に口止めされるも公の場に現れ、失笑を買う

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
サム・バンクマン-フリード氏。今年7月の時点ではまだ笑顔だった。撮影場所は不明。(提供:FTX/ロイター/アフロ)

先月、経営破綻した仮想通貨取引所のFTX。元CEOのサム・バンクマン-フリード(Sam Bankman-Fried)氏が破綻後初めて、オンライン上で公の場に姿を現した。

バハマに滞在中のバンクマン-フリード氏は先月30日、ニューヨークで開催されたニューヨークタイムズ主催「ディールブック・サミット(DealBook Summit)」に、リモートで予定通りに登壇した。イベントでは、同紙のDealBookニュース担当で金融系ジャーナリストのアンドリュー・ロス・ソーキン(Andrew Ross Sorkin)氏のインタビューに答える形で話し、その様子はニューヨークタイムズのウェブサイトとCNBC局で放送された。

いつものラフなTシャツ姿で登場したバンクマン-フリード氏は90分間のインタビューで、「誰に対しても詐欺を犯そうとしたことはない。ショックを受けている」と話し、「起こったことについて深くお詫びする」と謝罪した。

バンクマン-フリード氏が共同設立し、FTXの資産の多くを保有する暗号資産投資会社のアラメダ・リサーチ(Almadea Research)とFTXとの関係性について、「意図的に資金を混ぜ合わせたわけではない」と説明した。

「ビジネス自体、繁栄し成長していると思っていた」と振り返り、「悪い1ヵ月だった。まったく楽しいことではない。しかしそんなことは重要ではない。重要なことは何百万の顧客とFTXの利害関係者であり、それらの人々をいかに助けようとするかだ」と述べた。

自身の個人的な財政状況を尋ねられると、「おそらく使えるクレジットカードが1枚残っていると思う」と答え、現在の純資産がどこにあるかについてはわからないとした。また「思わしくない数字を言うのは許されるか?」と冗談を言った後、「最後に確認したのは、銀行口座に10万ドル(約1350万円)があったこと」とした。

この1ヵ月間、同氏は米国司法省、証券取引委員会、テキサス州証券委員会、およびバハマ当局によって着手された民事および犯罪捜査の対象となっている。弁護団から「捜査中につき話をするな」と口止めされているはずのバンクマン-フリード氏がこのような公の場に現れ口を開いたことについて、不可解とする見方もあった。

NPRによると、このイベントへの登壇はFTXが経営破綻する1ヵ月前にブッキングされていたという。この日、本人が本当に姿を現すのかに注目が集まっていたが、予定通りオンライン上で現れたバンクマン-フリード氏。ソーキン氏から、「弁護士は(このような場に現れ)口を開くことについて、良いことだとあなたに提案があったのか?」と尋ねられると、神妙な口調で「いいえ、まったくそうではない。(今は)何も語るな、穴に隠れろと言われている」と正直に答え、聴衆から失笑を買った。登壇した理由については「正しい行いのためにできる限りのことをし、説明する義務があるから」と述べた。

バンクマン-フリード氏は同日、経営破綻後初となるテレビインタビューにも登場した。ABC局の朝の番組『グッドモーニングアメリカ』に録画出演し、「何が起こっているのかを理解する責任感をもっと持つべきだった」「多くの人が損害を被った。私の責任だ」と自責の念を表した。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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