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新型コロナ対策、消費税は傷つけるべきではない。マイナンバーの活用でバラマキでない給付を。

森信茂樹東京財団政策研究所研究主幹 
コロナ緊急対策の記者会見(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスの緊急経済対策が議論されている。安倍総理は14日の記者会見で、「一気呵成にこれまでにない発想で思い切った措置を講じる」と述べたが、緊急支援は早急に決定・実施する必要がある。

インバウンドの落ち込み、国民の外出自粛から資金繰りが苦しくなっている小売店などの中小企業への緊急支援や、臨時休校で休まざるを得ない子育て世帯、休業補償のない自営業者などへの支援(給付)、さらには金融不安を招かないよう流動性の供給などが考えられる。

一点留意すべき点は、財源は国民の税金なので、一定の節度を守る必要があるということだ。その際の重要なポイントは以下の2つだ。

一つは、「真に困っている世帯に効果的・効率的に対策を打つためには、マイナンバー(番号制度)を活用する」ということである。

麻生内閣は、08年のリーマンショック対策として、09年3月に総額2兆円の定額給付金を国民全員に配布した。一人当たり1万2千円で、所得制限は付されず、高所得者にも配られた。この政策については12年に、内閣府から事後検証されているが、消費嵩上げ効果は総額の25%程度であること、効果があったのは子供世帯や高齢世帯、と検証されている。

現在、マイナンバー制度が導入され、国は個人や世帯の所得を把握している。緊急対策として定額給付金を配るということになるのなら、国民全員ではなく、必要な世帯にピンポイントで給付すべきだ。番号は、国民にとってメリットの少ない制度と認識されているが、この際、適切な活用法を考えることによって国民の見る目も変わってくる。

もう一つは、「緊急対策はわが国の中期的な政策と整合性をとる必要がある」ということだ。この観点から問題となるのは消費税の取り扱いである。

国民に不人気な消費税は、政治家にはもってこいのターゲットである。すでに自民党の有志(安藤裕議員ら)は、「当分の間、消費税を0%にする」旨の提言を公表し働きかけている。

しかし、消費税は全世代型社会保障の財源の切り札として10%に引き上げられたものだ。現在行われているポイント還元制度の拡充ならともかく、消費税を一度凍結すれば、政治の論理から考えて、再び10%に戻すには数年単位の年数を要し、その間全世代型社会保障は大きく後退する。コロナリスクより、少子化への対応が遅れることの方が、わが国経済にとって大きなリスクといえよう。

新型コロナ騒ぎは必ず収束する。それに従い経済も正常時に戻る。そのことを念頭に置いて整合性のある緊急対策を速やかに講じる必要がある。

これまで2度引き延ばしをした安倍総理の「これまでにない発想で思い切った措置を講じる」というのが消費税制度そのものを損なうようなものでないことを願っている。

東京財団政策研究所研究主幹 

1950年生まれ。法学博士。1973年京都大学卒業後大蔵省入省。主に税制分野を経験。その間ソ連、米国、英国に勤務。大阪大学、東京大学、プリンストン大学で教鞭をとり、財務総合政策研究所長を経て退官。東京財団政策研究所で「税・社会保障調査会」を主宰。(https://www.tkfd.or.jp/search/?freeword=%E4%BA%A4%E5%B7%AE%E7%82%B9)。(一社)ジャパン・タックス・インスティチュートを運営。著書『日本の税制 どこが問題か』(岩波書店)、『税で日本はよみがえる』(日経新聞出版)、『デジタル経済と税』(同)。デジタル庁、経産省等の有識者会議に参加

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