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「ロシア軍のイラン製攻撃ドローンは枯渇か。2月15日からウクライナで使用されてない」英国防省が見解

佐藤仁学術研究員・著述家
インフラ施設などにイラン製ドローンで攻撃(写真:ロイター/アフロ)

2022年11月にも英国防省はイラン製軍事ドローンが枯渇と見解

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

2022年10月からロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃して、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設ではない民間の建物に攻撃を行っている。一般市民の犠牲者も出ている。12月に入ってからはロシア軍はイラン製軍事ドローンで電力施設にも攻撃を行いオデーサ近郊の150万人以上の市民生活に打撃を与えていた。さらにクリスマスシーズンも年末も大晦日でもロシア軍はイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」を大量に投入してウクライナ全土に攻撃を行っていた。

そんななか、英国防省は2023年2月25日にウクライナ情勢に関するレポートを発表。英国防省は2023年2月15日からイラン製軍事ドローンが使用されていないことから、イラン製軍事ドローンの在庫が枯渇したのではないかという見解を示している。

英国防省では定期的にウクライナ情勢に関するインテリジェンス・レポートを公表しており、イラン製軍事ドローンに関する考察も行っている。このようにロシア軍によるイラン製軍事ドローンが枯渇したのではないかという見解を示したのも今回が初めてではない。2022年11月にも同じようにイラン製軍事ドローンがしばらく使用されていない期間があったことからイラン製軍事ドローンが枯渇したのではないかという見解を示していた。

だが2022年11月は英国防省がイラン製軍事ドローンが枯渇したのではないかという見解を示したものの、すぐにロシア軍はイラン製軍事ドローンを使用してウクライナの軍事施設や民間インフラを標的にして徹底的に奇襲してきた。

▼英国防省がイラン製軍事ドローンが枯渇した可能性があるとの見解を発表(2023年2月)

▼2022年11月にも英国防省がイラン製軍事ドローンが枯渇した可能性があるとの見解を発表(2022年11月)

ロシアに軍事ドローン工場設置計画も。いずれ復活するであろうイランの軍事ドローン

2023年1月31日にはアメリカ商務省はイランの軍事ドローンを開発している企業など7団体に輸出規制を課していた。これに対してニュ―ヨークのイラン国連代表部はロイターの取材で「イランの軍事ドローンは全てイラン国内で製造されているため、米国による制裁はイランでの軍事ドローンの開発に全く影響を与えない。このことはウクライナで迎撃されて破壊されているドローンで西側諸国の部品を使用しているドローンが、イラン製ではないことを強く示唆している」と語っていた。

またアメリカのメディア・ウォールストリートジャーナルはイランが設計した軍事ドローンをロシアに設置する工場で生産していくとロシア政府とイラン政府が協議を進めていると報じていた。新たにロシアに設置する予定のドローン工場ではウクライナ紛争で使用するためのドローン6000機を生産する予定で、イラン政府の高官が2023年1月上旬にロシアを訪問して建設予定地の視察も行っていた。工場はまだ建設されていない。

イランの軍事ドローンをロシアの工場で開発、製造するという報道はこれまでにも何回もあった。現在、イラン製軍事ドローンはイランで製造されてロシアに納入されているが、ロシアで製造されるようになれば輸送コストも削減されるし、製造したらすぐに戦争で使用することができるようになる。

今回も一時的にはイラン製軍事ドローンが枯渇しているかもしれないが、またいずれロシア軍はイラン製軍事ドローンを使用して攻撃をしかけてくるだろう。

▼イラン製軍事ドローン「シャハド136」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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