Yahoo!ニュース

ダルビッシュ好投の裏でなかなか勝てないパドレスが露呈した不協和音

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
カージナルス戦の試合中に味方選手に詰め寄るマニー・マチャド選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【WC争いのカージナルスに手痛い連敗】

 すでに報じられているように、パドレスのダルビッシュ有投手が現地時間の9月18日に行われたカージナルス戦に登板し、7回3安打無失点9奪三振の好投を演じた。勝利投手の権利を有して降板していたが、後続投手が打たれチームが逆転負けを喫し、今シーズン9勝目を挙げることができなかった。

 ダルビッシュ投手が勝利を得られなかったことは残念なことだが、それ以上に深刻と捉えるべきなのが、現在ワイルドカード争いをしているカージナルスとの直接対決に、勝利を目前にしながら逆転で連敗してしまったことだ。

 この時点でワイルドカード圏内にいるカージナルスに、2.5ゲーム差を離されることになった。まだパドレスは14試合を残しているとはいえ、対戦相手はジャイアンツ、ドジャース、ブレーブスと、すべて地区優勝を争う強豪ばかりなのだ。

 本来なら今回のカージナルス3連戦で何とか勝ち越して、残り試合に臨みたかったところだが、逆に1試合を残して連敗で負け越しが決まってしまった。しかもダルビッシュ投手の好投を不意にしてしまったのだから、チームにとってこれ以上の痛手はないだろう。

【試合途中で起こった主力選同士の言い争い】

 そんなチームの厳しい状況を象徴するかのように、カージナルス戦の試合中に重大な出来事が起こってしまった。

 FOXスポーツが18日付けでTwitter上に、パドレスの2枚看板であるマニー・マチャド選手とフェルナンド・タティスJr.選手が激しく言い争う画像を投稿しているのだ。間違いなく今日の試合中の出来事だと判断できるものだ。

 この画像を見る限り、言い争いというよりも、マチャド選手がタティスJr.選手を一方的に責めて立てるようにも見えるが、もちろんチーム状態が万全なら、こんな場面が起こるはずはない。現在のパドレスは、チーム内に不協和音が流れている証と受け取れる画像だろう。

【言い争いについて詳細を報じるESPN】

 この一件について、ESPNがさらに詳細を報じている。

 この言い争いは、5回表のパドレスの攻撃中に起こったものらしい。この回の先頭打者はタティスJr.選手だったのだが、高めのボールをストライクと判定され、見逃し三振に終わっていた。

 ストライクと判定されたタティスJr.選手は明らかに不満そうな仕草を見せ、直後に球審に抗議に行ったジェイス・ティングラー監督が退場処分を受けている。

 中継映像をチェックすると、退場処分を受けたティングラー監督がベンチ裏に引き上げようとする際、タティスJr.選手が不満をぶちまけてベンチ内の椅子に何かを投げつけたシーンが確認できる。多分この後に言い争いが起こったと考えられる。

 ESPNによれば、マチャド選手はタティスJr.選手に対し、「お前のことなんてどうでもいい。しっかり野球をしろ」と怒気を込めて伝えていたようだ。

 この時点でチームは2対0でリードしていた。しかしチームは追加点を奪えないまま、8回に3点を失い逆転負けしてしまった。

【指揮官「ネガティブに捉えるものではない」】

 さらにESPNによれば、ティングラー監督は言い争いについて、以下のように説明している。

 「ネガティブに捉えるものではない。我々はファミリーだ。細かいことについて話し合うことはしないが、ケアはしていく。それは熱情であり、フラストレーションだ。すべては感情が表に出たもので自然なことだ。こういうことは起こってしまうものだ」

 繰り返しになってしまうのが、1つの目標に一致団結したチームは雰囲気もよく、こうした言い争いが起こることは稀だ。

 シーズン開幕前はドジャースとともにMLB屈指の戦力との評価を受け、ポストシーズン進出が確実視されていたにもかかわらず、月間成績は7月からずっと負け越しが続いている状況に、選手たちも相当の苛立ちを抱えていたはずだ。

 チームの大黒柱であるマチャド選手ならば、尚更のこと。そうして積み重なってきたフラストレーションが、カージナルス戦で一気に噴出してしまったのかもしれない。

 果たしてパドレスは、チーム状態を立て直すことができるのだろうか。残り14試合が正念場だ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事