感情労働が未来の職場をどう変えるか、フェミニスト経済学の新視点
エマ・ホルテン(1991)さんは、デンマーク系スウェーデン人のフェミニスト活動家、ジェンダー政策コンサルタントだ。
デンマークで開催されたスタートアップの祭典TechBBQで、ホルテンさんはフェミニスト経済学を基に、「感情的な労働や人間関係を無視すれば、非効率的で非生産的な職場環境につながる」と主張した。
誰がそれをするのか、そのための時間はあるのか、そのためにどれだけの資源が費やされているのか。
フェミニスト経済学は、測定が難しい人々のケアに焦点を当てる。
「人間や感情さえも数値化できる」としてきた、従来の機械的な西洋文化にホルテンさんは疑問を投げかける。
歴史的に「女性は感情的な生き物だ」とされ、デンマーク人に「女性は男性よりも感情的か」と尋ねると、男女を問わず64%が「そうだ」と答える。しかし、ホルテンさんはこれを悪いことだと捉えてはいない。
- 「感情とはどういうもので、どう使うことができるのか」
- 「感情(女性)の居場所がない政治は、何を意味するのか」
- 「感情や人間関係が欠けた職場は、何を意味するのか」
ホルテンさんはそのように考える。
女性が担いがちな「感情労働」の価値
主張はこうだ。
まず、社内には「昇進不可能で、利益を生みださず、定量化が難しいとされるタスク」がある。
- 新入社員の受け入れ
- 同僚が自分の仕事を解決するために助けを求めてくる
- 会議のために他の人のプレゼンを仕上げる
- 多くの時間を要求する難しいクライアントに対応する
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- このような「感情労働」ともされる仕事は、女性が担うことが多い
- 「複雑なのに、昇進につながらない仕事」に女性はついている
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しかし、企業がこのような仕事を排除しようとすると、「目に見えない多くの価値」を失うことになるだろう。
なぜなら、このようなタスクは会社の収益性や長寿にとって非常に重要な、「会社の社会的接着剤」だからだ。
そもそも、分析における費用対効果を測定することは非常に難しく、「誰が価値を生み出しているのか」を理解することは困難に近い。
- これでの社会では、「経済用語で説明できないものはすべて不適切、あるいは無関係」とみなされる制度文化が確立されてきた
- フェミニズム経済学が指摘するのは、いかに多くの人々が「定量化可能な指標」に目を奪われているかだ
- 「数値化できるもの」だけで価値を測定すると、組織は大切なものを見失う→生産性が低く、仕事に対する喜びが少なく、最後にはひどい定着率と離職率の高さにもつながるだろう
- 感情から目をそらしても、居心地の悪い冷たい部屋を作るだけ。居心地の悪い冷たい部屋は生産的ではない
- 「数字で価値を測ろうとする行為」は、私たちを盲目にする
「感情的な仕事をする人がいなくなると、製品、従業員、そして長期的には会社の維持に至るまで、すべての人が本当に苦しむことになるだろう」とホルテンさんは警告する。
社会や企業組織に感情・ケア労働は溢れているが、日本でも同様に、女性が担いがちなこれらの労働は過小評価されがちだ。
ホルテンさんが指摘するように、社会にとって不可欠な感情労働の重要性を改めて適切に評価することが、より構成で持続可能な社会を築く鍵となるだろう。