Yahoo!ニュース

リフレとは距離を置いた日銀の櫻井審議委員のコメント

久保田博幸金融アナリスト
日銀の櫻井審議委員(写真:ロイター/アフロ)

 日本銀行の櫻井眞審議委員は27日に兵庫県金融経済懇談会で講演を行い、その要旨が日銀のサイトにアップされている。今回の櫻井審議委員の講演はある意味興味深いとの見方もあったので確認してみたい。

 海外経済について、櫻井委員は「米中貿易問題は、当初想定していたよりもその規模は拡大しているほか、期間も長引いており、政策対応ではカバーしきれていないのが現状です」と語っていた。

 現状の物価動向とその背景については、「デフレではないものの物価が加速しない状況の背景には、物価変動のメカニズムが近年徐々に変化してきていることがあると考えられます」としている。

 物価の先行きについて、「物価変動メカニズムが複雑化する中で、物価の先行きを見通すことは容易ではありません」と発言している。

 今後の金融政策については「仮にリーマンショックのように金融システム崩壊の可能性を伴うような危機の場合には、信用収縮を通じた急速な景気後退となるため、果断な対応が必要となります」としているものの、

 「一方、貿易問題に起因する海外経済の減速が緩やかなものにとどまる場合には、わが国の経済に波及するそのスピードも緩やかなものとなり、経済指標の動向を見極めた上で政策対応を考える余地が出てきます。拙速な政策対応を控えるべきであることは、次の副作用の論点とも関連してきます」としている。

 「拙速な政策対応」というはまさに何かあれば追加緩和を主張していたような意見とは異なるものとなる。これは特に問題視するべき箇所ではないが、櫻井委員の発言であっただけに、あれっということになる。

 櫻井審議委員はいわゆるリフレ派とされていた。政策委員のなかでは若田部副総裁、原田審議委員、片岡審議委員、そして櫻井審議委員がいわゆるリフレ派とされていた。

 しかし、このなかでいまだリフレ色の強い発言をしているのは原田審議委員、片岡審議委員だけとなり、それが金融政策決定会合での反対票にも繋がっている。しかし、若田部副総裁は執行部という立場も含め、発言等ではリフレ色を封じつつある。

 そして、今回の原田委員の発言内容は、本来の日銀の金融政策のスタンスに近いものとなっている。つまり原田委員はリフレ的な考え方から距離を置いてきたともいえる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事