子育て中の人、不安・負担を感じる人は7割強、主な要因はお金の問題
少子化の一因に挙げられる、保護者世帯における不安や負担。その具体的要因は何だろうか。子育てをしている人達の心境を、厚生労働省が2015年10月に発表した、人口減少社会に関する意識調査結果から探る。
次に示すのは調査対象母集団(2015年3月6日から9日にかけてインターネット経由で実施。有効回答数は3000人。男女構成比は1対1、年齢構成比は15~29歳、30代、40代、50代、60~79歳の仕切りで均等割り当て。国勢調査の地域・性別・年齢人口構成比に応じたウェイトバック実施済み)のうちゼロ歳から15歳の子供がいる人に対し、子育てをしている中で負担を感じているか、不安があるか否かを尋ねたもの。設問上は単に「負担・不安に思うことがありますか」ではあるが、日常生活においても不安をまったく感じない事例はほとんど無いことから、また回答時における回答者の解釈の仕方を想定するに、回答実体としては「気にかかる、負荷を覚えるほどの不安や負担」と認識した方が間違いは無い。全体としては7割強が不安や負担があると回答している。
男女別の差異はあまり無く、むしろ世代別の不安・負担の回答率に大きな差異が見受けられる。40代までは男性では7割強、女性では50代までが7割超え・30代から40代に限れば8割超えが不安派に属しており、不安・負担の大きさがうかがえる。さらに強度の高い不安は若年層ほど高く、歳を経るに連れて減っていく。
具体的な不安・負担要素としては、やはり金銭面での負担が大きい。現時点で出費がかさむとする意見が46.2%、子供の成長に連れて経済的負担が増加することへの懸念が40.8%となり、上位2つがお金の問題。
子育ての問題に関しては、まずは経済的な負荷の解決を図るべきだとする一方で、それを否定する意見も少なくない。しかし今調査結果の限りでは、やはり金銭的な問題がもっとも大きな重圧としてのしかかっていることが分かる。
次いで子供が病気になった時の心配が上位に。そして回答者=保護者自身の自由時間が削られてしまうことが続く。さらに精神的な面での疲れ、肉体的な面での疲れが並び、保護者個人の負担の大きさと拘束性の高さが負担となっていることがうかがえる。
子育て問題では良くスポットライトが当てられる「子供を通じた親同士の付き合い」「子育てへの自信が持てない」「夫婦の時間が取れない」「仕事ができない」なども不安・負担要素として挙げられているが、いずれも2割に届かない。比較論だが優先順位としては低い状態といえる。
上位2位を占めた金銭面に関して、回答者の性別・年齢階層別に仕切り分けした結果が次のグラフ。
大よそ男性よりも女性の方が不安度が大きく、そして持続的。また男女とも大よそ30代から40代がピークで、子供がそれなりに成長して経済的負担が大きくなる年齢で、不安などが増える実情がうかがえる。特に女性は40代までにおいて両方の項目とも5割超が負担・不安を感じており、金銭的なプレッシャーが非常に強いことが改めて確認できる形となった。
今件はあくまでも実際に子供を有する人の不安・負担の話だが、圧迫感が強ければさらなる子供を有することを躊躇してしまう可能性は上乗せされる。また同様の不安はまだ子供を持たない夫婦も容易に想起でき、それが子供を持つことへのあきらめにもつながってしまう。
若年層の実入りを増やす、支出を減らす、さらには安定的な収入源を確保する仕組みを創るなど、手立ては多数考えられる。不安要素の軽減化こそが、少子化問題の解決策に直結するのではないだろうか。
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