Yahoo!ニュース

ウクライナ軍ドローン監視部隊、上空からロシア軍を監視して攻撃を指示:1日6000発の大砲発射

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

ドローンによる監視で精確な砲撃、各国からの軍事支援を無駄にしない

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生品ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。

ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍もドローンを監視・偵察、攻撃で多く使用している。ウクライナではドローンのことをウクライナ語で「目(eye)」を意味する「Очі」(Ochi:オチ)と呼ぶことが多い。ウクライナ紛争では攻撃でも監視・偵察でも多くの面で戦場でドローンが使用されている。ドローンは「上空の目」として戦場では欠かせない重要な兵器、監視システムになっている。上空から敵の様子を探り、敵を発見したら、その場所をめがけてミサイル攻撃を行ったり、ドローンから爆弾を投下したり、神風ドローンが標的に突っ込んでいき爆発したりしている。これほど多くのドローンが戦場で活用されているのは人類の戦争の歴史上でも初めてである。

そんななか、英国のメディアのザ・インディペンデントがウクライナの最前線にいるウクライナ軍兵士のドローン監視部隊を紹介していた。動画の中では、破壊された建物や塹壕など上空のロシア軍の監視ドローンに見つからないように隠れながら、中国メーカーDJI製の小型監視ドローンでロシア軍の陣地を監視している。上空の監視ドローンに居場所を探知されたらすぐにミサイルなどで大量に攻撃をされてしまう。そのため、ロシア軍だけでなくウクライナ軍も戦場では上空のドローンには敏感になる。ウクライナ軍もロシア軍を徹底的に監視しているが、ロシア軍もウクライナ軍の動向を監視しているので、動画のウクライナ兵もあちこちを転々としていると語っていた。

そして監視して敵軍を見つけると大砲やミサイルを扱っている部隊とリアルタイムにコミュニケーションをして、大砲やミサイルを扱っている部隊が発射して攻撃を行っている。

監視ドローンのおかげで、精確に敵陣にミサイルや大砲を発射して攻撃を行うことができている。英国のメディアのザ・インディペンデントによるとウクライナでは1日に6000発の大砲が発射されている。その多くが上空からの監視ドローンで敵軍を発見して、場所を精確に定めてから発射されている。これらの大砲やミサイルは周辺諸国から供給されたものである。英国のメディアのザ・インディペンデントは監視ドローンのおかげで、これらの武器も無駄になっていないと報じていた。

上空のドローンは見つけられたら、すぐに破壊されたり機能停止させられたりしてしまう。そしてドローンを操縦している部隊もすぐに攻撃対象にされてミサイルなどを撃ちこまれる危険性がある。動画に出てくるウクライナ兵も、敵軍のドローンに見つからないように地下で生活をしており、市民団体が生活物資提供などで支援をしている。

▼ウクライナ軍のドローン監視部隊を伝える英国のメディアのザ・インディペンデント

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事