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ネットで売られるホテル朝食券-無くしたと再入手したゲスト? 持ち出したスタッフ!? ホテルの対策とは

瀧澤信秋ホテル評論家
(写真:イメージマート)

ホテル朝食と朝食券

ホテルでは朝食が楽しみという方もいることでしょう。夕食はホテルでとらずとも朝食はホテルでというパターンは多いことと思います。

そもそも夕食の提供がない宿泊特化型ホテルであっても朝食は提供しているものですが、ビジネスホテルでいえば、宿泊者全員に無料で提供される朝食(宿泊料金に含まれてはいる)もあれば、別途料金の発生する有料朝食も当然に多く見かけます。

有料朝食の場合にはチェックイン時に朝食券が手渡されるケースをはじめ、朝食券は配布せず朝食会場でルームキーや客室番号がチェックされるパターンもあります。前者で言えば事前に配布しているので会場では朝食券を回収すればいいだけですが、後者であれば都度照合する手間が発生するでしょう。

朝食会場へのアクセス権確認という点でも省人化はテーマなのでしょうか、とあるビジネスホテルでは客室番号が一覧で印刷された用紙が入り口に置いてあり、ゲスト自ら自分の部屋番号に○をつける無人タイプもありました。

朝食券の悩み

ところで前者の朝食券について最近とあるホテル運営会社(宿泊特化型ホテル)の担当者から興味深い話を聞きました。そのホテルではチェックイン時に朝食券を配布するスタイルで朝食会場にて回収されます。朝食が人気のホテルであり、宿泊者でなくとも別途料金で一般の方も食べに来るので、会場には宿泊者ばかりではなく一般の方も見かけます。

興味深い話、とは朝食券がネットで個人売買されているというもので、ホテルとしてはそうした売買について注意深く確認するようになったとのこと。○○ホテルへ宿泊した際に使用しなかった朝食券です、などと説明されているものは稀で、多くは単に詳細の説明も無く出品されているといいます。

ホテルによっては朝食券に日付を入れるケースも見かけます。日付が入っていればネットでの売買は難しくなるでしょう。しかしながら、そのホテルの朝食券には日付や通し番号など入っていません。チェックイン時に日付のスタンプを押して手渡しすればいいのですが、チェックインが混み合うなか、スタンプを押すことだけならばまだしも、スタンプのインクが乾かないままだと指が汚れてしまうなど気遣う点が多くなるといいます(そこを割り切ってしまうのも方法ではあるというものの)。

事前に想定される喫食者数分日付スタンプを押しておくという方法もありますが、宿泊キャンセルや想定されない外部からのゲストなども勘案すると、どうしても無駄が出てしまうとのこと。

正当に入手したものなら何ら問題ないのですが…

個人売買について話を聞くと「朝食込みなど宿泊者ゲストが正当に入手した朝食券について、純粋に使用しなかったということで売買に出されるのは何ら問題はないのですが…」と前置きした上で、たとえば朝食券を無くしたと言われれば(一切再配布しないというスタンスもとれるが)やはり再度手渡さざるを得ないといい(疑義を生まないためにも朝食券は大切に管理しましょう)、正当ではない理由で入手した朝食券が売買されているとしたら対策を講じなくてはといいます。

また「これは社内の問題になるのですが…スタッフが持ち出したものが売られているのでは?という話も上がっていまして」と悩みを吐露してくれました。朝食券を廃止してスタッフを増やし都度チェックする形式でカバーするか、通し番号を入れるか(それはそれで管理する手間が大変)、バーコードやQRコードを発行する形式のシステムを導入するか(導入コストはバカにならない)など社内の議題に上がっているとのこと。

前出の担当者は、そうした疑義や問題を惹起させてしまうのも、そもそも会社の管理やシステムに問題があるわけで…と平身低頭の様子。性善説だけではなかなか難しいホテル運営の現場は朝食券1枚にもあらわれます。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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