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住宅ローンとそれに影響を与える日銀の金融政策の行方を考察

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日本の住宅ローンの融資残高が膨張を続け、2022年6月末は220兆円を超えた。ただ、住宅の資産価値は伸び悩んでいる。ローンの負債以上に住宅の資産価値が上がり続けている米国と対照的だ。日本では金利上昇リスクがある変動型を選ぶ人が7割を超え、0.1%の金利上昇で利息負担が1100億円増える試算もある。返済に行き詰まり住宅を売っても、負債が残って家計が破綻するおそれがある(6日付日本経済新聞)。

 この記事ではまた、金利上昇リスクがある変動型を選ぶ人ほど、住宅価格に対して高額なローンを組む矛盾も目に付くと指摘している。

 住宅ローンを組むタイミング、そしてその後の金利の行方など不確定要素が多く、今、組むとしたらどちらが良いのかと問われても、適切なアドバイスはしにくい。

 さらに現状、日銀が短期金利だけでなく、長期金利もコントロール下に置くとともに、物価や経済実態、海外金利とは関係なく非常時緩和を続けてしまっているという、過去にあまり例の見ない状況にあることも先行きを見通しづらくしてしまっている。

 ちなみに住宅ローンの変動タイプは短期金利、固定タイプは長期金利に結果として連動する。

 現在の日銀の金融政策に対して、疑問視する声も強まり始めている。世論調査でも日銀の現在の金融緩和に対して反対の声のほうが多くなってきている。

 足下で物価が上昇し、円安も進行するなか、日銀はさらに物価上昇に働きかけようとしていることに矛盾を感じている人も多いはず。

 しかも日銀が無理に無理を重ねた結果、新発10年国債を発行額以上購入するという異常事態も発生している。

 これを少なくとも黒田総裁の任期となる来年4月まで続けられるのかは、甚だ疑問である。

 日銀の現在の金融緩和の異常さの象徴が、長期金利コントロールとマイナス金利政策、そしてオーバーシュート型コミットメントにある。これらをまず廃して、ノーマルな金融緩和策に戻すことで、柔軟で機動的な金融政策に修正できる。

 これを意地でもしたくないのが現総裁とそれを補佐する日銀執行部となり、政策委員も何故か全員一致でこれに賛同している。

 しかし、これが実情にそぐわないことは、日銀内部の人達ばかりでなく、外部の人達も感じつつあるのではなかろうか。

 ここからさらなる金融緩和策はあまりにリスキーであり、今後の日銀の金融政策に変更があるとすれば緩和の修正になる。それを前提として住宅ローンを組むことも必要ではないかと考える。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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