【泉佐野市】「ケーキ屋さんになりたい女の子」考案『夢のお菓子』販売へ! "職人の意地"で見事に再現
“色鉛筆で描いた「お菓子のイラスト」を菓子職人が再現し、販売する”。
そんな夢のような話が間もなく実現します。
昨年、第2回「夢のお菓子イラストコンテスト」(応募期間2023年3月3日~5月5日)が開催され、厳正なる審査の結果10名の子どもたちが栄えある賞に輝きました(受賞者発表2023年7月21日)。
応募対象となる大阪府・和歌山県在住の小学生から寄せられた“夢のお菓子”は130作品。大人顔負けの画力で表現された自由過ぎる発想にお菓子のプロたちも唸ります。
第1回目は、販売には至りませんでしたが、今回「最優秀賞」に選ばれた作品は “イラストそっくりに再現し販売する”とのこと。
“職人の意地にかけて再現します!”と製造チームも気合十分の様子です。
この素敵なコンテストを手掛けたのは、明治25年創業 老舗菓子店「むか新」。
創業130周年を迎えた年に “地元に育ててもらった企業なのでお菓子屋として何か出来ることはないか”と考え 企画したそう。
「お菓子で子どもたちの想像力を育みたい」
「お菓子で子どもたちの夢のお手伝いをしたい」
そんな想いから開催している「夢のお菓子イラストコンテスト」。
「最優秀賞」に選ばれた作品は? お菓子完成までには様々なご苦労もあったようです。「むか新 本部工場」を訪ね、この企画の管理・運営に携わる マーケティング室 室長 金勝 明紀(かねかつ あきのり)さんにお話をうかがいました。
*第2回 「夢のお菓子イラストコンテスト」の公募は終了しています(2023年3月3日~5月5日)
「応募総数130作品」すべてお菓子にしてあげたかった
「みんな絵がとてもお上手で…力作ばかりでした。本当はすべてお菓子にしてあげたかったんですけど」
130作品の中からどのように入賞作品を選ばれたのですか?
「第一次審査は、子どもたちから寄せられた130枚のお菓子のイラストをこの部屋(本部工場の一室)の壁に貼って、店長や製造のメンバーで投票をおこないました。一人3作品を選び、上位10作品が入賞となりました」
これは意地悪な質問なのですが、正直、職人の目から見て“お菓子にしやすいもの”を選ぶ…などはなかったですか?
「子どもが描く絵ですから、“何を表現しているのかわからないものは選びにくい”というのはありました。みんな素直にいいなぁと思った作品を選んでいますよ。次に、その10作品をポスターにして店頭(全店舗)に貼り出し、お客様と製造・販売スタッフで二次審査をおこないました」
え? “お客様投票”もおこなったのですか?
「はい。第一回目は社内だけで選考をおこなったのですが、お客様も一緒に楽しんでいただけたらと思い、このような方法をとらせていただきました」
入賞した10作品を掲載したポスターがこちら。
どの作品も素晴らしい! お菓子になったら楽しいだろうなぁと思うものばかりです。お客様投票をおこなったのであれば、「オトナの事情なし」の“ガチ審査”であることは間違いありませんね。
そしてこの中から「最優秀賞」に選ばれた作品は…
【07】伏尾 麻緒莉(ふしお まおり)さんの「ねこまかろん」でした!
ほか、優秀賞5作品は、生駒龍之介さんの「ジェンガクッキー」、鈴子彩音さんの「丸ごとアップルパイ」、坂下姫那さんの「食べるお花タルト」、山川日菜乃さんの「お菓子達のはこぶね」蔵元心奏さんの「思い出の水族館ゼリー」。
奨励賞4作品は、高木寧々さんの「夢のお菓子タワー」、小林栞さんの「パズルクッキー」、くすもとまのさんの「もちエナガ」、尾畑美月さんの「家ぞく大すきボックス」。受賞した子どもたちには「お菓子セット」や「賞状」「お菓子のメダル」が贈られました。
それにしてもみなさん「詩人か!」と思うほど、ネーミングセンスが抜群ですよね!
着想からイラスト完成までのプロセスも楽しんでいた様子がうかがえます。
「ねこまかろん」とは、なんとも斬新なアイデアですね! このお菓子に決定した時、製造チームの反応はいかがでしたか?
「正直申しまして、『このお菓子が選ばれたらどうしよう…』という声もあがっていたほど難易度の高さを感じさせる内容でした。そもそも『マカロン』というお菓子は、縦に高さを出すことがないので生地から工夫が必要だと感じました」
ここからは、金勝さんのお話を参考に完成までの道のりを製造スタッフのお話とともにご紹介します。
試作すること8回。最大の難関は「生地づくり」と「色の調整」
「ねこまかろん」を担当する製造スタッフは、室谷さん、三島さん、根来さんの3名。“職人の意地にかけて再現します!”と公言した以上、プロのお菓子職人として引くに引けない状況でもあり、みなさん真剣な表情です。
まず、見えてきたのは二つの壁。一つ目は、「通常のマカロンはツノがないものをつくるのでネコの耳を再現できるか?」。二つ目は、「マカロンの側面にネコの顔を描かないといけないので、マカロンを高く焼き上げられるか?」など。
お菓子づくりのすべてを知り尽くした職人だからこそ感じる「壁」。子どもたちが自由に描けば描くほど、その壁は高くなると想像します。
製造チームは、勢い余って既に試作を3回重ねていた模様(金勝さんも知らない間に)。
高く焼き上がらず失敗した時の「マカロン」の写真がこちらです。
(以下、カッコ内は製造スタッフのお話です)
「もちろん、普段はこの『マカロン』で問題ないのですが、この高さでは顔を描くことはできません。通常は、焼き上がりの質感を考え、生地とメレンゲの泡を潰しながら混ぜ合わせて生地の固さの調整をするのですが(この作業をマカロナージュという)、マカロナージュを行って焼いたら、全然高く焼き上がらなかったので、マカロナージュをあまり行わず、あえて泡を潰さずに混ぜていきました」
「このくらいで混ぜ終え、絞り袋に入れて高めに絞っていきます。
上のマカロンを絞り終えたら、次は下のマカロンを通常の高さに絞ります」
次は難関のひとつでもある“耳”の工程です。
「当初は、生地を絞るのではなく、土台の生地から耳を引っ張りあげる感じでつくってみましたがうまくいきませんでした。『上から見てネコ型のマカロンにさせてもらっても良いのでは?』という案も出ましたが、『なんとか、イラスト通りにがんばろう!』と試作を繰り返して、ようやくこのやり方に行きつきました」
たしかに“上からみてネコ型”では、普段のマカロンの形にイラストを描くだけのものになってしまい、伏尾さんから「そうじゃない」と言われてしまいそう。
職人が感じる難しさ、苦労ゆえの本音。リアルに伝わってきます。
子どもの「真剣」に、真摯に向き合う大人たち。「子どもの夢を壊したくない」という一心で試作を重ねていきます。
「たくさんの量を作る時と違って、生地の量に対して色の割合がわからないため、色調整も苦労しました」
色も決まったところで先程の焼きの工程に戻ります。
「絞り出した生地を一度乾かしてから焼いていきます。
飛び出した耳に火が強くあたり過ぎてしまい、色が黒ずんでしまう失敗もありました」
ネコっぽい形になっていますね! 耳もうまく焼けたようですよ。
次は顔を描く工程です。うまく書けるかな?
可愛く描けていますね! 伏尾さんのイラストには「耳が描かれたネコ」と「耳が描かれていないネコ」がいて、そこも忠実に再現したそうです。
ホントだ! いろんな耳のネコがいますね!
そして完成した「ねこまかろん」がこちら。
可愛い! イラストの躍動感も再現されていて、今にもネコたちが “ニャーニャー”と鳴きだしそうです。
スポンジと生クリームで作った「おふとん」と、可愛らしい「鈴」までついていますよ。
どちらも伏尾さんが希望していたもの。細かいオーダーも製造チームは見逃しませんでした。
製造工程でのご苦労については、記事ですべてを書ききれないため省略してお伝えしました。再現までの詳しい道のりはこちらをご覧ください。
『夢のお菓子』初の販売へ
受賞の副賞として完成したお菓子を伏尾さんにお渡ししたことをSNSで報告したところ、「販売はあるんですか?」などのうれしい反響があり、その後 検討を重ね、2月22日(木)のネコの日(ニャンニャンニャン)にあわせて販売する運びとなったそうです。『夢のお菓子』初の販売です!
「ねこまかろん」を見た伏尾さんの感想は、「すごく似ていて、かわいいから食べるのがもったいない」と出来上がったお菓子に愛着を感じているご様子。
「大人になったらケーキ屋さんになりたい」と話す伏尾さん。「むか新」で一番好きなお菓子は「こがしバターケーキ」なんだとか。なかなかのツウですね!
「こがしバターケーキ」の紹介記事はこちら↓
【泉佐野市】食品界の名だたる賞を総なめ。世界20カ国以上の“一流美食家”が認めた『極上バターケーキ』
さて、ここまで記事を読んだ感想として「たしかに子どもが考案した『ねこまかろん』というお菓子は可愛いけれど、見た目が可愛いだけなんでしょ?」と思われている方も多いのではないでしょうか? 実は、わたしもそうでした。
今回、取材をしてお伝えしたいと思った理由が二つあります。
1.子どもの着想を“菓子職人”がカタチにしていく企画がおもしろいと感じたから。
2.最優秀賞作品「ねこまかろん」の素材に一切妥協がなく、老舗菓子店としてのプライドを感じたから。
子どもが考えたお菓子だからといって素材に妥協したりせず、最後までこだわり抜いたところがさすが「老舗菓子店」だと感じました。
味についても実食をし、お伝えしたいところでしたがそれは叶わず。
現在予約は始まっているものの、お渡しは2月22日(木)からなので、いくら取材だからといっても順番ぬかしはNGなわけです(そりゃそうだ)。
「ねこまかろん」は可愛いだけじゃなく味も本格派
現在、予約受付中の「ねこまかろん」4種詰め合わせセットがこちら。
いろんなネコちゃんの中から地域の素材や品質の優れた材料でつくれる4匹をセレクト。可愛いだけじゃなく味も本格派のマカロン。素材の良さを知ると、それも納得です。
左上から時計回りに
「宇治抹茶ねこまかろん」
むか新専用に生産された京都府産宇治抹茶を使用。
この抹茶は濃茶として飲めるほどの味と香りを有しています。
濃茶は抹茶をふんだんに使用するため、安価な抹茶だと渋みと苦味がかなりきつくなってしまいます。そのため美味しい高級な抹茶がつかわれます。
京都府産宇治抹茶をふんだんにつかった抹茶マカロンです。
「チョコねこまかろん」
一人当たりのチョコレート年間消費量が日本の約6倍。世界一の消費量を誇るスイス・シュヴィーツ市に1908年に創業した高品質なチョコ―レート製品をつくるフェルクリン社のココアを生地につかい、クーベルチュールチョコレートをクリームに。
豊かな味わいのチョコレートマカロンに仕上げました。
「レモンねこまかろん」
和歌山県産レモン果汁をつかった、レモンねこまかろん。
海外産の酸味の強いレモンと違い、やさしい酸味のレモンですっきりとした風味のマカロンに仕上げました。4種すべてのクリーム部分に付いている鈴のグミも和歌山県産レモン果汁を使用しています。
「いちごねこまかろん」
和歌山県九度山産の苺をクリームに使用。
使用している苺は少し形が悪いもの、小ぶりなものなどをSDGsの観点からむか新が買い取り加工して使用しています。
形が悪くても丁寧に育てられた苺の爽やかな甘みと酸味は変わりません。
(「むか新」公式HP参照)
いかがでしたか? 「めちゃめちゃ本格派のお菓子やん!」と思いませんでしたか?
2023年の「小学生のなりたい職業ランキング」(ベネッセ調査)で、「パティシエ」と「イラストレーター」がベスト10入りした背景から、今後 益々この企画も盛り上がりそうです。
ちなみに、このコンテストは販売を目的におこなっているものではなく、“子どもたちが描いた「夢のお菓子」を菓子職人が再現する”という目的のもとに開催されています。「最優秀作品」が必ずしも商品化されるわけではないことをご理解ください。
「ねこまかろん」の売上の一部は、子どもたちの明るい未来のために『こども食堂』に寄付いたします。
ぼくも! わたしも! と思う子どもたちは、ぜひ次回チャレンジを!
第3回「夢のお菓子イラストコンテスト」の応募期間は3月3日(日)~5月5日(日)。
詳細は公式ホームページ(外部リンク)でお知らせがありますのでお楽しみに!
未来の子どもたちへエールを届けましょう
子どものお題に対して真剣に頭を悩ませる大人たちの姿がカッコよく、また、大人たちも子どもの自由な発想にアイデアのヒントを見出したのではないかと感じます。
子育ての環境も様変わりし、子どもの“自由さ”を受け入れてくれる場所も少なくなりました。ですが、真っ白なキャンバスの上ならどうでしょう? 何にでもなれるし、“自由さ”は無限大。
次回は、どんな『夢のお菓子』が誕生するのかな? ぜひ、みなさんも投票に参加して、未来の子どもたちにエールを届けましょう。
【基本情報】
第2回「夢のお菓子イラストコンテスト」(応募期間2023年3月3日~5月5日)
「最優秀賞」 受賞作品『ねこまかろん』
「ねこまかろん」のご予約はこちらから(2月22日(木)~4月7日(日)の間、「むか新」各店舗でのお渡しとなります)
*ご予約のページ内の”配送希望日”とは”受け取り希望日”のことです。2月22日以降の受け取り希望日を入力してください。
〈お問い合わせ〉
店名:「むか新 羽倉崎店」/ 本店、泉南店他17店舗で予約販売
公式ホームページ(外部リンク)
公式インスタグラム(外部リンク)
住所:泉佐野市羽倉崎1-4-7 (Googleマップ参照)
アクセス:南海本線「羽倉崎」駅より徒歩10分
Tel:072-462-0724
営業時間:9:00~19:00
定休日:水曜
駐車場:あり(店舗横と第二駐車場あわせて22台駐車可)
取材協力・画像提供 「むか新」 マーケティング室 室長 金勝 明紀 様
*記事内容は取材当時のものです。最新の情報は、公式HP or インスタグラムでご確認をお願いいたします。