環境問題やAIに24年前から着目 知的な物語 気になるゲーム「ANGEL WHISPER」
日本のゲーム市場規模は2兆円超(ファミ通ゲーム白書2023調べ)で、家庭用ゲーム機やPC、スマートフォンなどで多くのゲームがリリースされ、近年はインディーズゲームも活況です。タイトル数が多く、「何をやれば…」と迷う人のために、遊んで気になった作品を取り上げてみます。今回は、ニンテンドースイッチのダウンロード・ソフト「ANGEL WHISPER~あるゲーム作家が遺したサスペンスアドベンチャー」(マメクジラ)です。
同作は24年ぶりのリメークで、元は1999年にゲーム創作集団「Child-Dream」が公開した作品。小説のように文章を読み進めていくアドベンチャーゲームです。
製作者が自ら明かしていますが、24年前は世紀末ということに加え、サイトを活用した凝った仕掛けもあって、現実とゲーム内容を混同した人もいたようです。
リメーク版の内容ですが、一言でいえば「遺作に隠された謎を解く」というものです。
あるゲームクリエーターの娘が、消息を絶った父・由島の残したゲーム(=ANGEL WHISPER)の謎解きを、プレーヤーに依頼する……というところから始まります。そのゲームをプレーすると、由島の実体験と思われるものでした。
過去に何かの傷を持つ様子を見せる由島は、ゲーム会社「レムソフト」のプロデューサーから、ノストラダムスの世紀末予言をモチーフとしたゲーム「アンゴルモア」の開発サポートを要請されます。ところが同作を仕切る人気ゲームクリエーターから拒絶されてひと悶着。それでも何とか妥協する形で、由島は4人の仲間と共にゲームの開発を始めます。そしてJohnと名乗る者から、謎のメールが届くのです。
ゲーム制作は、完成までのスケジュール管理はもちろん、結果も求められる過酷さがあるのですが、ゲーム内でもしっかり描写されています。ギスギスする中、由島の彼女・咲子のさりげない気遣いにホッとさせられたり……。
そしてゲーム開発の最中に仲間が死ぬ事件が起こり、最初は謎だったJohnの存在がクローズアップされてきます。そして用意された選択肢から答えを選ぶのではなく、プレーヤーが文字を打って「答え」そのものを要求する場面があります。このあたりは、ミステリー好きにはたまらないところで、一発で答えが合うと快感かもしれません。
もちろんリメーク版は、ヒント機能があるので、スムーズに進むでしょう。さらに、原作ゲーム用ヒントがメーカーのサイトに用意されていて、現在も見ることができます。苦戦する人たちの助けになるかもしれません。
元は24年前のゲームなのに、環境問題やAIといった人類の課題・テーマを先読みしているような知的な内容で、物語の展開も予測を裏切ってくれました。驚きと共に、未来について考えてしまう不思議なゲームでした。おそらく普段から社会問題について考える人ほど、楽しめるのではないでしょうか。
小説とはさほど変わらない1500円(10月24日までは990円)という価格設定もポイントです。
同作を企画したゲーム会社「ミスタ・ストーリーズ」は、将棋をテーマにした「千里の棋譜」や、累計100万ダウンロードを突破した「人形の傷跡」なども手掛けています。謎解きが好きな人は、手に取ってみると楽しめるかもしれません。
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