「丸パクリ疑惑」中国発のSHEIN(シーイン)また訴えられる 米で止まない訴訟問題
世界中で急成長中の、中国発のEコマース企業、SHEIN(シーイン)。日本ではここ数年、インフルエンサーのSNSやユーチューバーの爆買い動画などに影響を受けて購入する顧客が急増している。
アメリカ国内で販売を開始したのはEC調査会社によると2012年という。インスタなどの影響で、それから程なくして「驚きの安さと可愛さ」を求める層の間で人気が爆発した。筆者も日本で話題になる数年前にすでに購入体験済みだが、生地の薄さやクオリティ(写真との違い、洗濯後の状態)などに失望し、もう利用しないと決めた消費者の一人だ。私のような客層は一部であり、シーインにとって痛くも痒くもないだろう。一定数いるいわゆる質は二の次で「安くて可愛く&セクシー」な「使い捨て」衣料を求めるZ世代を中心に、相変わらずの人気だから。
その急成長ぶりは、アメリカで高く評価されている。
止まない「まんまパクリ疑惑」
飛ぶ鳥を落とす勢いのシーインだが、良からぬことが起こっている。以前よりルイ・ヴィトン、ラルフローレン、無印良品などに似たような商品を販売し、模倣疑惑の訴訟が起こっているが、最近はそれが頻発しているのだ。
今月11日も、米デザイナーが「まんま同じコピー商品が販売された」と、シーインに対して訴訟を起こした。
独立系デザイナーのクリスタ・ペリー(Krista Perry)さん、ラリッサ・マルティネス(Larissa Martinez)さん、ジェイ・バロン(Jay Baron)さんの3人がカリフォルニアの連邦地方裁判所に提出した訴状では、同社が秘密のアルゴリズムを使ってトレンドやデザインを迅速に特定し複製しているとの主張があり、「悪質な著作権侵害」だと同社を非難している。
米ヤフー!ファイナンスによると、原告の一人、ペリーさんは、自身が制作した作品を無断でシーインのウェブサイトに掲載されたという。同氏はシーインに問い合わせたところ、同社のスタッフが地元業者からデザインを入手したと説明され、500ドル(約6万9000円)の支払いを提案された。
マルティネスさんのデザインと、シーインで売られた模倣疑惑のある商品
「シーイン帝国の背後にココ・シャネルやイヴ・サンローラン(といった才能のあるレジェンド的なデザイナー)はいない。謎を秘めたテクノロジーの鬼才、クリス・シュー(Chris Xu)として知られるXu Yangtianがいるだけ。彼は高度な技術によってシーインを世界トップの衣料品会社に押し上げた」「何百万もの顧客のために日毎6000点の新商品を生産し、その過程である種の著作権侵害に関与しているとされる。詐欺的な商取引を防止するためのRICO法(Racketeer Influenced and Corrupt Organizations)違反の疑いがある」と、NBCニュースは報じた。
シーインに対する訴訟問題は、これまでも前述したブランド以外にステューシーやドクターマーチンなど世界的企業が起こしている。最近も、アーティストのマギー・スティーブンソン(Maggie Stephenson)さんがアーバン・アウトフィッターズやセフォラで販売している作品が模倣されシーインで廉価で販売されているとして、著作権侵害などでシーインを提訴した。
Stüssy(ステューシー)のロゴにそっくりなシーインの商品
「ファッション業界の著作権法が複雑なため、衣料品の模倣のデザインに対して法的措置を取ることが困難になっている中、かねてからスモールビジネスの経営者はシーインがデザインを盗用したとして反対の声を上げてきた」とタイムは報じた。
シーインはこのほかにも、企業体質がたびたび非難の的になっている。その驚異的な低価格の裏には、劣悪な労働環境や人権侵害があると指摘されている。(以下タイムより)
先月も、シーインがインフルエンサーを中国の製造工場や倉庫の視察旅行に招待したことが報じられたばかりだった。これはシーインが新規株式公開(IPO)を申請するため(非公開)、企業イメージを良くするために行ったと見られており、「薄っぺらい試み」と物議になったばかりだった。
(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止