米国トップで次いで中国、ロシアが続く…主要国の軍事費の現状
米中で世界の半分近くを占める軍事費
各国の軍事力の現状や意欲の物差しの一つとなるのが軍事関連への支出額こと軍事費。国際的な軍事研究機関・ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)が発表したレポート「Trends in World military expenditure 2014」から、最新の軍事費に関する現状を探る。
最初に示すのは主要国の軍事支出=軍事費の上位陣国。米ドルで換算・統一している。また「*」つきの国はSIPRIによる推定値。SIPRIが軍事費であると認識した額で、主に敵対する国外勢力に対抗する物理的国家軍事組織に向けた執行予算が計上されている。
SIPRIの計算による2014年の世界全体の軍事費は1兆7760億ドル。その1/3強をアメリカ合衆国一国が計上している。次いで多いのは中国で2160億ドル、12.2%。為替レートが影響しうること、単純な軍事費の多い少ないで軍事力の大小が推し量り切れるわけではないが、やはり両国の軍事力の大きさが改めて認識できる。それと共に、冷戦時代は「米ソ冷戦」との言葉にもある通り、アメリカと肩を並べる形で軍拡を行っていたソ連(一部独立した地域もあるが、実質的に今のロシア)の軍事費がここまで落ちていることに、改めて驚きを覚える。
昨今防衛費周りで一部から多様な意見が出されている日本だが、ここ2、3年はようやく持ち直してきたものの、それでも10年位前と比べれば(自国通貨比較でも)値を落としている。今回の統計でも9位に留まっている。
対GDP比較をしてみると
軍事支出の比較は単純な絶対額だけでなく、その国の実情に考慮すべきとの意見もある。そこで今回は、よく使われる指標の一つ、対GDP比を確認する。IMF発表の各国GDPと比較し、その国の軍事支出が何%に値するかを計算したもの。要は各国の経済力に対する軍事支出のバランスを示した値。なおグラフは軍事費そのものの上位陣に絞り、国の並びも軍事費の大きい順としている。
サウジアラビアが群を抜き、1割強。またUAEも5%を超えており、石油産出国・中東の軍事費の大きさが認識できる。次いでロシアが4.5%、アメリカが3.5%。日本は1.0%で、中国は2.1%。軍事支出上位陣の国は大よそ1%から2%台に収まっており、日本が一番少ない。
SIPRIでは「Trends in World military expenditure」のレポートを3年分収録・公開している。そこでその3年分につき、軍事支出絶対額と対GDP比の推移を、2014年時点の上位国に絞ってグラフ化したのが次の図。米ドル換算の際に、為替レートの大きな変動が影響しうるため(例えば日本では円安が進んだため、自国通貨比較では増加しているものの、米ドルベースでは逆に減少している)、あくまでも対外比較指標程度に見てほしい。
アメリカにおける軍事費の実情がよく把握できる。他方中国の大幅な軍拡が、GDPの底上げを背景としていること(軍事費そのものが大きく増大しているが、GDPも同時に成長しているため、対GDP比はさほど増えていない)、それらも合わせて先進諸国が軍縮、新興国が軍拡の方向を示していることがうかがえる。これはレポートでも指摘されていることに加え、冷戦終結後、特にここ数年の一つのトレンドとなっている。
繰り返しになるが軍事費はあくまでも指標の一つでしかなく、また為替レートで多分に影響を受ける。とはいえ、対外的要因が大きい軍事力の物差しとしては、十分以上に参考になるものに違いは無い。
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