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NY原油15日:米原油在庫の伸び悩みで急伸、年初来高値を更新

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油5月限 前日比3.10ドル高

始値 53.55ドル

高値 56.69ドル

安値 53.39ドル

終値 56.39ドル

米原油在庫の増加ペースが鈍化する中、期近主導で大幅続伸となった。

米シェールオイルの減産観測が根強いが、米エネルギー情報局(EIA)の週間統計によると、4月10日の週の米産油量は日量938.4万バレルとなり、前週の940.4万バレルから下振れした。まだ増産と減産を繰り返す不安定な地合が続いているが、少なくとも大規模な増産傾向にはブレーキが掛かり始めていることが、原油相場の下値不安を後退させている。加えて、原油在庫は前週比+129万バレルとなり、市場予測+360万バレルを大きく下回っている。在庫増加トレンドが続いていることには変わりがなく、今週の在庫積み増しが抑制されたのは、輸入量が抑制された一時的要因の影響が大きいとみられる。ただ、製油所向け需要の着実な回復が続く中、目先はドライブシーズンに向けて在庫急増ペースが鈍化するとの観測が裏付けられた可能性が高いことが、原油市場で短期筋のショートカバー(買い戻し)を誘っている。

基本的な理解としては、仮にシェールオイルの増産が止まったとしても、国際原油需給の緩和状態が直ちに是正される訳ではない。日量数万バレルの供給量の変動は、現在の需給緩和状態においては「焼け石に水」である。このため、少なくとも原油相場が大きく上昇する必要性を見出すことは難しい。国際エネルギー機関(IEA)は、イランの市場復帰リスクから原油市場の先行きがなお厳しいとの見方を示しているが、需給均衡状態の実現に向けてのハードルはなお数多く存在しており、4月入りしてからの上昇相場に対しては違和感が強い。

ただ、米国内のシェールオイル増産傾向が緩んでいることも事実であり、将来的な需給均衡化を先取りする動きが強まるリスクには注意したい。需給面からは依然として安値低迷が必要なステージとみているが、相場が先走りするリスクが浮上している。弱気派は、シェールオイル減産でも需給構造に大きな変化がないことを重視しているが、強気派はシェールオイル減産の先にある需給均衡状態の実現を先取りする動きを活発化させている。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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