【日本選手権10000m展望】日本記録保持者の相澤、初戦で手応え。「レースを楽しみつつ優勝したい」
5月7日に、今夏のオレゴン世界選手権の日本代表の選考がかかる日本陸上競技選手権大会・10000mが東京・国立競技場で開催される。
昨年の東京オリンピック男子10000m日本代表の相澤晃(旭化成)、伊藤達彦(Honda)、そして、今年の箱根駅伝でエース区間の2区で区間賞を獲得した田澤廉(駒澤大)と、日本歴代トップ3が順当にエントリーリストに名前を連ねた(日本記録保持者:相澤、歴代2位・田澤、歴代3位・伊藤)。
シーズン初戦の金栗記念で手応え
日本記録保持者の相澤は、4月9日の金栗記念選抜陸上で今季初戦を迎えた。
2月26日の日本選手権クロスカントリーは欠場しており、状態が心配されていたが、トラック初戦にはきっちりと間に合わせた。
「怪我とかではなかったんですけど、クロカンの前から2月後半までずっと調子が悪くて、練習が全然できない状態だったんです。
そこからもう一度しっかり基礎に戻って、地道に、距離を踏むことから重点的にやってきて、今回のレースには間に合わせました。本当に良い練習ができたのは、この1カ月ぐらいでした」
スタートラインに立つことができれば、相澤が大きく外すことはない。
この日のレースは、条件が良ければ、(世界選手権に出場するための)参加標準記録(27分28秒00)を狙うつもりだったが、入りの1000mこそ2分45秒とまずまずだったものの、ペースメーカーのペースが予定よりも上がらず、5000mの通過は13分54秒と、参加標準記録を狙うにはやや難しい状況になった。
それでも、トップランナーの証とされる27分台のペースでは進んでいた。相澤にとっては「ちょっと遅い」ペースで、「ラスト1周ぐらいしかきついところはなかった」と振り返るほど、終盤までかなりの余裕を持ってレースを進めることができた。
「ラスト1周の前で、伊藤君よりも前にいないとダメだと思ったので、その前に行こうと思った」
こう話す相澤は、残り2周を切って、するすると先頭集団の前方にポジションを上げていった。
最後は伊藤に先着を許し、27分45秒26で日本人2位(全体5位)となったが、急ピッチで仕上げたわりには上々の結果だっただろう。相澤自身「シーズンインの初戦にしては、良い走りができたんじゃないかなと思います」と、手応えを口にした。
もちろん伊藤や外国人勢にラストスパート対決で敗れたことは課題として残った。
「今日は、あくまでもラスト勝負でどれだけ自分が走れるのかを確認しようと考えていたので、今日の反省を次に生かしたい。今日のような展開にならないように、もう一度基礎に戻ってスタミナを付けて、あとは、最後のキレを身に付けて、日本選手権に臨みたいと思います」
昨年11月の八王子ロングディスタンスに続き、同学年のライバル伊藤には2連敗中だが、日本選手権ではもちろん同じ轍を踏むつもりはない。
「レースを楽しみつつ、優勝したい」
「プレッシャーもありますが、僕はつまらない陸上は好きじゃないですし、単純に陸上を楽しみたいと思っている。レースを楽しみつつも、伊藤君や田澤君に勝って、日本選手権で優勝したい」
世界選手権の参加標準記録は、田澤がすでに切っているが、相澤と伊藤は、勝負だけでなく、記録をも狙わなければならない。そのため、日本選手権はハイレベルなレースが繰り広げられそうだ。
[*日本選手権の後の、ホクレン・ディスタンスチャレンジ2022の20周年記念大会(6月22日・深川)あたりでも、記録を狙うチャンスはあり]
相澤は、昨年の東京オリンピックでは、世界の壁に跳ね返され、苦い思いを味わった。相澤の視線はすでに2年後のパリ・オリンピックを向いており、日本選手権後からは3000mや5000mのレースに出場し、スピード強化に努めていくという。そして、秋には自身の日本記録を更新するという青写真を思い描く。
今度こそ世界と戦うため、国内のライバルに負けるわけにはいかない。