ウクライナ危機で、パンもカップ麺も更に値上げ覚悟?
シカゴ穀物相場が急伸している。ウクライナ情勢の緊迫化を受けて、穀物供給への影響が警戒されているためだ。トウモロコシ先物相場は9カ月ぶり、小麦先物相場は3か月ぶり、大豆先物相場は9カ月ぶりの高値を、それぞれ更新している。
ロシアとウクライナはともに主要な穀物・農産物の生産・輸出国である。パンやパスタなどの原料となる小麦の2021/22年度輸出量は、米農務省(USDA)の統計によると、ロシアが3,500万トン、ウクライナが2,400万トンと予想されており、二か国合計で世界全体の2億0,669万トンの28.5%をカバーしている。飼料や工業、食品などで使われるトウモロコシの輸出量は、ロシアが450万トン、ウクライナが3,350万トンと予想されており、二か国合計で世界全体の2億0,367万トンの18.7%をカバーしている。他の雑穀やひまわり油、更には農業に必須の肥料などの輸出規模も大きく、今後のウクライナ情勢の展開状況によっては、世界の食料需給・価格環境に大きな混乱が生じる可能性がある。
ロシアは世界3番目の原油生産国、2番目の天然ガス生産国とあって、エネルギー需給環境に対する影響はメディアでも広く報じられている。今回のウクライナ危機の影響もあって原油先物相場は7年半の高値を更新しており、ガソリンや灯油価格、電力料金の高騰といった形で既に家計や企業活動に大きな影響を及ぼしている。
穀物相場の高騰は、家計に影響を及ぼすまでにタイムラグが存在するために原油相場の高騰と比較すると深刻度が分かりづらいが、今回のウクライナ危機は日本の食卓にとっても対岸の火事とは言えない。今年は異常気象ラニーニャ現象の影響もあって南米で干ばつ傾向が強く、既に南米産のトウモロコシや大豆が不作に陥るとの見方が強くなっている。このため、需要家は各種穀物の高値での調達を容認せざるを得ない状況に追い込まれているが、今回のウクライナ危機をきっかけに小麦を筆頭とした穀物相場高が更に加速すると、これから各種食品の値上げ圧力が一段と強まるのが確実視される。
輸入小麦の政府売渡価格は年2回改訂されるが、昨年9月には前期比で19.0%引き上げられたばかりである。これが小麦粉価格の値上げを経由して、今年に入ってからパンやパスタ、カップ麺などの小麦を使った食品価格の値上げを促している。このまま小麦高が加速すると、今年の価格改定では更に大幅な引き上げが行われる可能性が高まることになる。また、トウモロコシ相場の高騰は肥料コストの増大で肉の価格を押し上げる。大豆相場の高騰は、食用油や大豆を使った各種食品価格を押し上げることになる。最近の食料品価格の値上げは、更に続く可能性が高まっている。