【元動物看護師解説】猫が1日16時間も寝るのはなぜ?ロングスリーパーな理由4つ
猫は「寝子」といわれるほど、よく眠る動物として知られています。しかしどうして猫は1日の多くを、睡眠に費やしているのでしょうか?
実はそれには、いくつか猫なりの理由があるようです。
1.猫の睡眠時間は平均16時間
多くの猫は、1日の約16時間を睡眠に費やしています。
これは人間の睡眠時間の約2倍。人間が平均して7〜8時間の睡眠を取るのに対し、猫は倍以上の時間を眠って過ごしているのです。
とはいえ16時間ずっと熟睡しているわけではありません。猫は8割がレム睡眠(浅い眠り)といわれており、人間のように長時間熟睡はしないのです(人は8割がノンレム睡眠なのだそう)。
その理由は「いつでも逃げられるようにする」ため。人間と違って自然の脅威に晒されていた猫の祖先は、外敵に襲われてもすぐに応戦・逃走できるように浅く眠りながら休息をとっていました。
その習性は現代のイエネコたちにも引き継がれていて、たとえば猫の寝顔を観察しているときに猫と目が合うのは、浅い眠りのなかで飼い主の存在に気づいたから。
16時間眠るとはいえ、8割が浅い眠りで緊張状態とは…野生で生きる(生きた)動物の過酷さを思い知らされますね。
2.猫がロングスリーパーな秘密4つ
睡眠のほとんどがレム睡眠とはいえ、なぜ猫は16時間も眠るのでしょうか?それにはいくつかの理由があるようです。
2‐1.薄明薄暮性の動物だから
猫が長時間睡眠をとる理由の一つに、「薄明薄暮性」の動物であることが挙げられます。
薄明薄暮性とは、主に夜明けと日暮れ時に活動が活発になる性質のこと。猫は「夜行性」だと思われがちですが、実は「薄明薄暮性」の動物なんですね。
猫の祖先は、獲物が活動的になるこれらの時間帯に狩りをすることで、野生を生きてきました。
この特性により、猫は夜明けや日暮れ時に活動的になります。逆に言えば、日中の明るい時間帯は猫にとって活動に適さない時間であるため、猫は日中の多くの時間を睡眠に費やすのです。
人間は猫が眠る日中帯に活動するので、「よく寝てるな」と思うのもそのためでしょう。
ただし、全ての猫が完全に同じ行動パターンを示すわけではありません。イエネコの場合、飼い主の生活リズムに合わせて自身の活動パターンを調整することがあります。
それでも、多くの猫は夜明けや日暮れ時により活発になる傾向があるようです。
2‐2.無駄なエネルギー消費を抑えるため
猫が長時間の睡眠をとる重要な理由の一つに、エネルギー消費の効率化があります。
猫は小型の捕食動物です。野生下では、。獲物を捕まえるために短時間で爆発的なエネルギーを使用する必要があります。
しかし狩りの成功率は必ずしも高くありません。そのため、狩りと狩りの間の時間を効率的に過ごし、エネルギーを蓄える必要があるのです。
さらに猫は食事にもエネルギーを使います。実は猫の主食となる「肉」は、消化に多くのエネルギーを使うのです。
そのため食べた肉を消化するのも眠りながら行い、なるべくエネルギーを使わないように工夫しているんですね。
もちろん眠っているときでもエネルギーは使いますが、そうでないときよりも消費量は大幅に抑えられます。
このように、猫は無駄にエネルギーを使わないよう、使う必要がないとき(狩りをしないとき)は眠って体力を温存しているのです。
イエネコの場合は狩りをする必要はありませんが、この無駄なエネルギー消費を抑える習性は依然として残っています。
規則的に食事が与えられる環境下でも、猫は本能的に長時間の睡眠をとり、エネルギーを温存する傾向があるようです。
2‐3.子猫・高齢だから
猫の睡眠時間は、年齢によっても大きく変化します。とくに子猫と高齢猫は、成猫に比べてより長い睡眠時間をとる傾向があるようです。
まず子猫ですが、平均睡眠時間は約18~20時間です。ズバリ「成長」のために、1日のほとんどを睡眠に費やしています!
実は猫の成長ホルモンというのは、寝ている時間に分泌されるのです。そのため子猫はたくさん眠って、ぐんぐん体を成長させないといけません。これが子猫が長く眠る理由です。
また老猫ですが、こちらも平均睡眠時間は約20時間ほど。やはり、1日のほとんどを寝て過ごしています。
しかしその理由は子猫とは異なり、ズバリ「体力温存」のためです。
老猫というのは身体機能も低下し、体力・食欲が落ちます。そのため必然的に活動量も減って、眠る時間が長くなるというワケです。
また少ない体力を無駄遣いしないためにも、なるべく寝て過ごすようにしているんですね。
ほかには周囲への興味関心がなかったり、体の節々が痛くて動くのが億劫といった理由も、老猫のロングスリープの秘密です。
2‐4.体調不良だから
猫は体調不良のときも、眠る(横たわる)時間が長くなる傾向があります。人間も体調不良なのにアクティブな人はいません(稀にいるかもしれませんが…)。猫も同じです。
しかし猫は自分の不調を隠す習性があるので、飼い主からしたら具合が悪いのか、ただ眠いだけなのか判断が難しいところ。
そのためもし「今日いつもより良く寝ているな」と思ったら、ほかの症状の有無や食欲などチェックしてみましょう。
判断が難しいときも、突然横たわったり、動きに活気がないと感じたら必要に応じて獣医師に相談してもいいでしょう。
3.まとめ
猫が1日16時間も眠るのは、今回紹介したような猫なりの理由が隠されています。
人間社会で暮らすイエネコも、生き残りの戦略といった野生の習性を色濃く残しているため、長く眠る傾向があるんですね。
つまり猫たちの長い睡眠時間というのは、猫本来の姿を垣間見せてくれる貴重な機会なのかもしれません。