【富田林市】5月20日弁士付き無声映画上映会。普段非公開の登録文化財、五軒家岩根家住宅が1日だけ公開
富田林市の文化財を見ると、国指定の文化財が9件、国登録文化財が7件、府指定文化財が10件、市指定文化財が4件あります。この中には旧杉山家住宅のように内部の見学ができるものがある一方、内部非公開の文化財も数多くあります。
そんな中、普段非公開となっている国登録文化財の内部見学ができるという、またとない機会があります。その場所は、五軒家にある国登録文化財の岩根家住宅です。
それは5月20日に大阪府登録文化財所有者の会が主催する第3回酒蔵映画祭です。阪東妻三郎が主演する「雄呂血(おろち)」という映画で、無声映画なので今では大変珍しい弁士付きの映画鑑賞会です。
そしてこの酒蔵こそが、国の登録文化財の岩根家住宅ということで、普段非公開の文化財を見学することができるのです。
ところで、私は昨年行われた前回の酒蔵映画祭に参加して、映画鑑賞と岩根家住宅を見学する機会に恵まれました。
そこでその時に撮影した映画祭の雰囲気と、岩根家の建物の様子を、主催者と所有者の方の許可をいただいたのでここでご紹介しようと思います。
岩根家住宅までの行き方を確認しましょう。公共交通の場合、藤沢台二丁目バス停がいちばん近いです。バス停から続く道を北西方向に歩いていきます。
十字路になっているところは、五軒家街道と接しているところで、そこを左に曲がってまっすぐに歩くと岩根家住宅の前に行けます。
こちらが五軒家街道です。古い街並みを見ながら、岩根家住宅の前に向かいます。
今回頂いた資料によると、もともと17世紀に廿山(つづやま)村から出郷(でごう:元の村を出ること)して、この場所に五軒家の集落が形成され、岩根家もその時に移ったとあります。つまり五軒家の初期から存在していた名家だったんですね。
また岩根家のお屋敷の南側は五軒家街道に接していて、石垣と籠塀(かごべい)が歴史的集落の面影を残しています。
こちらが岩根家住宅です。資料によると東側には入口の長屋門があり、さらに内部には江戸時代後期の建築と伝えられる主屋のほか、奥座敷、内蔵(うちぐら)、茶室、物置などがあるそうです。
普段は外からしか見られない岩根家住宅の内部は非常に楽しみですね。
ちなみに私はバスを使って藤沢台方面から岩根家住宅に向かいましたが、こちらの地図のように大阪狭山市駅からも行けます。
小さな堀を越えて関西みらい銀行の前の道を左(北)方向にまっすぐ直進。加太を縦断するように北北東に歩いていくと、岩根家住宅の前に行きます。
この日はイベントなので、入口に写真が貼ってあります。
私が参加した昨年はこの画像のイベントで、映画は「伊豆の踊子」でした。
約1000坪あるという岩根家住宅の中に入りました。
煙突がついている山荘のような建物があります。こちらが酒蔵で、資料によれば明治30年代の建築で、8寸の勾配を持つ切妻屋根を持つ土蔵造りとのこと。
また当初は桟瓦葺(さんかわらぶき:軽量で波型の瓦を積んだもの)の大屋根だったそうですが、現在はガルバリウム鋼板(ガルバリウムという合金でメッキされた鉄)に改修したそうです。
さらに酒の麹を作る麹室(こうじしつ)はレンガ造りとのことで、中央あたりに煉瓦造の煙突が見えます。
住宅の見学の前に、最初に映画鑑賞会があります。酒蔵を改装した会場の中に入りましょう。
蔵の様子が見えます。映画鑑賞会の後に解説付きで見学しました。
こちらが映画の視聴会場です。天井を見るとかつての酒蔵時代の名残が感じられますね。今回は無声映画会ですが、酒蔵では音楽会なども開催しているそうです。
映画が始まりました。私は弁士付きの無声映画初体験だったのでどんな感じなのか楽しみでした。
大変失礼なことですが、ひとりの弁士の語りは映像技術が未発達だった時代の名残と思っていました。
ところが弁士の遊花さんは、見事に役ごとに声を使い分けられ、あたかも映像の人が本当に語っているように感じました。映画の中に引き込まれるような語りで、弁士付きの白黒の無声映画がこんなに楽しいものだとは!
今回の映画祭でも遊花さんが弁士とのことなので、一度聞いたことがあり感動した者としては、とても楽しみなイベントだと思いました。
映画鑑賞が終わり、いよいよ岩根家住宅の見学です。
先ほどちらっと見た酒蔵の様子です。資料によると平成9年および27年に内部空間を損なわないように耐震壁補強と修理工事を行い、内部に広く高い空間を残したのだそうです。
さらに2階への縦持(たてもち)滑車や酒槽(さかぶね)、煉瓦の煙道などを保存しました。
次に酒蔵内にある展示室に入りました。ここには当時のポスターや銘酒ラベルのほか、酒造りの道具や設備などを保存展示しています。
さらに明治36年第5回国内勧業博覧会に『君が代』などの銘酒を出展した資料なども残っており、今となっては非常に貴重な資料の数々です。
ダキダル(抱き樽)と書いてあります。これは酒のもととなる酒母(しゅぼ)を培養する時に使う重要な道具です。
これは麹作りに必要なものですね。
こちらの箱には文字が書いてあります。第五回内国勧業博覧会用に瓶詰した清酒を12個入れていたもののようです。さらに大阪府南河内郡川西村と書いてありますね。
また表彰状も掲げられていました。こちらは大正4年に第7回日本産業博覧会褒賞の証として二等賞銀牌を受賞したもののようです。
もうひとつありました。こちらは三等の銅賞を明治42年にいただいたとあります。
川西と聞くと近鉄川西駅を思い出すのでずいぶん遠い気がしますが、川西村は現在の川西駅から見て北西一帯、開発前の金剛ニュータウンの周辺も広く含まれていたので、昔は五軒家のあたりも川西村の一部だったんですね。
当時のポスターです。とても豪華な着物姿、蝶々が頭のうえに舞って何とも優雅ですね。
昔のラベルも展示していました。
こちら個性的な形をしていますが、キツネと書いてあります。調べると酒のもろみを汲み出し袋に入れる時に使う特殊な桶とのこと。
こちらにはカスリと書いてあります。これも調べてみると桶洗い、醪(もろみ)だしを行うときに、桶に残った少量の水や醪をすくい取るものなのだそうです。
他にもいろんな酒の道具が置いているので、これらを見るだけでも必見です。
天井の上にも部屋がありますね。
このレンガでできたところがかつての麹室のようです。
こちらは主屋(おもや)です。資料によると、敷地中央に建っている木造2階建入母屋造(いりもやづくり)。もともとは江戸代後期の大和棟の建物でしたが、大正時代に2階建に改修。その時に、主屋の西に奥座敷が増築されたそうです。
主庭の入口にある門です。
資料によると、これは酒樽でできた茶室で、知足亭(ちそくてい)と名づけられているそうです。後庭(こうてい)にあり、直径と高さとも約2メートルの酒樽に、円錐形の檜皮屋根を葺いているそうです。
内部に床を設けていて、躙り口(にじりぐち)や、側壁には樽の曲線に沿った円窓もあります。
敷地内には神社もありました。
ということで、岩根家住宅の酒蔵の内部と庭を見学しました。普段非公開の場所なので、酒蔵映画祭のようなイベントがないと入れません。
せっかくの機会なので、興味のある方はぜひ「第3回酒蔵映画祭~雄呂血~」に、申し込んでみてはいかがでしょう。
国指定登録有形文化財・岩根家住宅(第3回酒蔵映画祭~雄呂血~)(外部リンク)
住所:大阪府富田林市五軒家2-7-1
日時:5月20日(土)13:30〜16:30
参加費:2,500円
問い合わせ先:090-5136-6989(大阪府登録文化財所有者の会 事務局寺西さん)
アクセス:南海大阪狭山駅から徒歩14分、南海金剛駅からバス藤沢台2丁目バス停から徒歩16分
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