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NY原油11日:米原油在庫急増で、5週間ぶりの安値更新

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油4月限 前日比0.12ドル安

始値 48.77ドル

高値 49.05ドル

安値 47.33ドル

終値 48.17ドル

米国内の原油在庫積み増しが続く中、期近2限月は小幅続落した。

米国内の需給緩和状態が再確認される中、期近は戻り売り優勢の展開に。引けにかけては短期的な下げ過ぎ感から安値是正を進める動きがみられ、3番限以降は小反発したが、戻り圧力は限定された。急激なドル高環境が維持されていることもネガティブ。

米エネルギー情報局(EIA)発表の原油在庫(3月6日)は前週比+451.2万バレルの4億4,888.6万バレルとなった。製油所向け原油需要の落ち込みは一服しているが、米国内産油量の増加傾向が続く中、在庫積み増し傾向は維持されている。前日引け後にAPIが発表した原油在庫は前週比-40.4万バレルと予想外の減少になっていたが、EIAの統計では大幅な在庫積み増しトレンドが再確認されたことが、改めて原油相場の上値を圧迫している。WTI原油先物の受け渡し場所であるクッシング地区に限定しても前週比+232.2万バレルと急増しており、5,000万バレルの大台に乗せている。

製油所のリグ稼動数減少も未だ米国内の産油環境に与えるダメージは限定される一方、目先は季節要因から製油所向け需要の伸びづらく、在庫積み増し傾向は維持されやすい。年後半には需給均衡状態に向かうとの楽観ムードもあるが、足元の過剰供給環境が原油相場の上値を圧迫する展開が維持されている。依然として2月から続くボックス圏内での値動きだが、2月3日以来の安値を更新しており、ボックス下抜けを打診し始めている。

需給バランスの歪み是正の動きが強くなっていることは間違いないが、この時期から原油相場が反発してしまうと、需給均衡化をもたらすのに十分な生産調整が進まず、今後の反発力が限定されてしまうことになる。中長期的にはボトム圏に近づいているのは間違いないが、短期スパンでは依然として戻り売り対応の方に魅力を感じる。特に急激なドル高傾向が続いている間は、地政学的環境に大きな変化などが生じない限り、本格反発は想定しづらい。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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