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交流戦たけなわの間に「ひっそり」と行われる球宴ファン投票

豊浦彰太郎Baseball Writer

5月29日(木)、2014年NPBオールスター戦の開催概要が発表された。

今年は7月18日(金)に西武ドームで、翌19日(土)に阪神甲子園球場で開催される。

毎年のことながら残念なのは、ファン投票がずいぶん遅く開始され早々と締め切られることで、今年は5月30日から6月19日までの21日間しかない。MLBでは7月15日(日本時間16日)に開催される球宴の投票は4月25日には始まっており、締め切りは開催12日前の7月3日だ。ファン投票を開幕から1ケ月も経ずして始め、ぎりぎりまで継続するMLBに比較しても、NPBの投票期間はあまりに短い。

ファン投票数は12年に18年ぶりに200万票を割り、昨季はそこからさらに約20万票も減った。ネット投票に制限を加えるという時代に逆行した運営も問題だが、交流戦たけなわの時期に「ひっそりと」行っていることも悪影響を与えているのではないか。球宴冠スポンサーの自動車メーカーはファン投票の懸賞として自社のクルマを提供していたが、今季はそれも廃止された。もともと玄人好みのブランドイメージのため、票を伸ばす効果がなかったのだろうか。

おそらく、早期の締め切りにはそれなりの理由があるのだろう。選手間投票結果の発表もあるし、ホームランダービー出場選手のファン投票期間も確保しなければならないのも事実だ。しかし、それらのしわ寄せを各ポジションのファン投票期間が受けているとすれば本末転倒である。事務方の事情が必要以上に優先されているのは、その上位概念であるはずの戦略が欠如しているからだと言わざるを得ない。

本来、球宴のファン投票はそれ自体がNPBの大プロモーションである。それを短期間で早々と終了させてしまうとは、会場の手配やポスターの印刷と同様の「事前準備」としか認識していないのではと心配になる。

また、今回から3年間の3試合制を経て2試合制に戻っている。NPB球宴の複数試合開催は、1試合だけのMLBと比較し「魅力が薄れている」との指摘が従来よりあった。

しかし、私は必ずしもそうは思わない。せっかく試合数が多いのだから、そのメリットを最大化すれば良い。安易にMLBの仕組みを称賛するのは慎みたい。MLBでは1試合のみの試合のために、昨年の例を取れば計78人もロースターに名を連ねている。はっきり言ってこれは異常だ。実際出場したのは55人のみだし、そもそもダルビッシュ有(レンジャース)のように故障で出場しないことを事前に明言した選手や、岩隈久志(マリナーズ)のように球宴2日前の日曜日に先発したため登板できない投手らが、計10人も含まれていた。

怪我でプレーできない選手は来る必要はないと思う。日曜日に登板した先発投手も球宴に投げる気があれば参加、そうでない者は「来なくて結構」とすれば良い。そうできない理由のひとつは、多くの選手がタイトル獲得などと同様に、球宴選出をインセンティブ獲得の条件として契約に盛り込んでいるからだろうか。

オールスターは日本シリーズと並ぶNPB機構の重要な収入源だ。もっとビジネスに貪欲になって欲しい。プロ野球は衰えが指摘されるとはいえ、日本最大の「国民的娯楽」だ。もっともっとプロモートする余地は残っている。この点は大金を払っている(はず)のスポンサーが厳しく指摘して欲しい。

その観点からすると、地方開催がなくなり試合数が減った今回は「退歩」だと思う。地方の野球人気の活性化という長期的戦略と、3試合開催によるNPB機構の収益確保という短期的視点の双方において残念だ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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