『GK西川を責めることはできない理由』浦和vs神戸【浦和レッズ川柳試合レビュー】
■ルヴァン決勝とは違うファン層が来場
とりあえず寒い。夏が終わって、秋をすっ飛ばして冬が来た。さすがにきょうは観客5万人が見込めそうな試合なので、早めに席を確保しようと家を12時半くらいには出る。自転車で30分くらいだから、13時ころには埼スタに着く計算だ。1日で一番暖かい時間のはずなのに、寒い。さすがに吐く息が白くなったりはしないものの、ほんの数日前は「夏日」だったわけで、この落差に体が付いていかない。
まずは南側自由席で席を決める。試合開始2時間前だけあって、上の方に上がれば、出入りの楽な通路沿いの席はまだ残っていた。もちろん、すでに「きょうは自由席は満席が予想されます。」のプラカードを持って歩いている係員もいた。
時間がたっぷりあるので、コンコースをブラブラ。目立つのは、まだ小学校にも上がってないような小さい子供を連れたファミリー層だ。元気に走り回ってる子もいる。この前のルヴァンカップ決勝よりも多かったんじゃないかな。さすがに国立に比べて、観客の地元比率もだいぶ高いのかもしれない。20年後、30年後のレッズを支えるキッズたちだから、大事にしなきゃ。
寒くても 熱いキッズが コンコース
ヴィッセルの先発メンバー発表では、レッズサポのブーイングは定番。ただ、これも雰囲気を盛り上げる「効果音」と割り切った方がいんじゃないか、と私は個人的に感じている。
さすがに武藤や大迫のコールでブーイングが大きくなったりするが、これなかったら、やっぱり寂しい。
この大事な試合にパンヤが先発。監督がそこまで彼を買ってるのかとちょっと驚く。これはパンヤが決定的な仕事をしてくれるかもしれん、とこちらも期待し、後半、ちょっと惜しいシーンもあったものの、まだ十分に存在感を発揮しているとまでは言えず。
来年に 期待しとこう パン祭り
■同点後の雰囲気から西川の上がりを考える
前半は、相撲でいえば、ガップリ四つに組んだ上で両力士とも、足を払ったり、寄ってみたり、技はくり出しつつも、勝負はなかなかつかない展開。どちらかといえば、私たちのいる南側に攻めてくるヴィッセルの方がやや押してる感じで、相手のコーナーキックに、レッズサポが西川コールを乗せる展開が多かった。DFも、まずまずか。この前の埼スタの浦項戦やルヴァンの決勝は、みんなどこか疲れてるみたいだったが、だいぶ元気になってる。
もっとも、引き分けはあっても、勝てそうな予感はまったくしない。「優勝」狙うんなら、勝たなきゃしょうがないのに、点取れる可能性を感じさせてくれるのはカンテくらい。まったく、こっちが知らん間にカンテが「レッズのエース」になっている。
春先は お荷物秋には エースとは
ハーフタイムは、トイレが国立に負けないくらいの大渋滞。どこが列の最後尾がわからなくて、コンコースの外まではみ出してる。仕方ないだろう。観客の数も多いのと、この天候だ。冷える。特に下半身は冷える。カイロ持ってくればよかったか、と反省するくらい。まだ4時で、日は落ちきる前だったのに。
でも見てると、生ビールもそこそこ売れてた。自転車で来たのもあるけど、私はとても怖くて飲めない。こんな日にビール飲んだら、それこそ10分おきにトイレ行かなきゃならない。
日もささず トイレも近く 秋深し
へんな俳句みたいになってしまった。
試合が急に動き出したのが後半も半分過ぎたくらいから。大迫のヘディングパスみたいなのがあって、ヴィッセル側に1点入れられてしまう。負けじと大久保が、得意のドリブルの技を使ってゴール前に入り込んだり、ボレーシュートでゴールを襲ったりするものの、得点には至らず。
もうきょうは仕方ないかと諦めかけたアディショナルタイムで、あの「エース」カンテのゴールが来た。残りはあと5分くらい。追うものの強みで、こりゃ大逆転もあるかもしれない、と選手もサポーターも調子に乗って来た。
西川が相手ゴール前まで上がっていったのだって、絶対に責められない。調子に乗ってたんだから、もはや押せ押せで行くっきゃない。優勝を目指す限りは、「引き分けでいい」はあり得ない。
この最後の数分は、盛り上がった。残念ながら5万とはいかず、4万8千人あまりだった観客の大多数を占めるレッズサポも、「行けるんじゃないの!」って気になってしまった。
その浮ついて前かがみになったところを、相撲の「小またすくい」じゃないが、足を取られて、きれいにひっくり返されてしまった。まさか、GK不在のゴールに、ポコーンと大迫が放ったヒョロヒョロっとしたのんびりしたシュートが、そのまま入ってしまうとは。オーロラビジョンには「ゴール確認中」としばらく出ていたし。だが、「あんなシュートがそのまま得点になるはずがない」との私たちの祈りも敵わず、「確認中」は「ゴール」にかわり、ゴール成立。
レッズの今季優勝のメはまったくなくなった。だったら、ヴィッセルの初優勝でいい。
土壇場で 無人のゴールに とどめ刺す
北風や 今年も抱けぬ シャーレかな
寒かった。負けたと同時に、またトイレに駆け込んだ。
2006年から数えても、もう17年か。前のリーグ戦優勝の時に生まれた子供も、もうすぐ成人式だよ。
山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後30年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。2021年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。現在、去年一年の記事をまとめた単行本『浦和レッズ川柳2022』(飯塚書店)が好評発売中。
代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、8月、テレビの夢グループCMで、石田社長の横で「社長~! 安くしてエ~!」の甘え声でお馴染の歌手・保科有里の『愛人!? 困っちゃう・・・』という本を出す。秋には、タブレット純とエド山口の対談本を出す予定。
11月27日(月)、東京都江戸川区のタワーホール船堀・小ホールで『ちょっと昭和なヤングたち90回スペシャル』も開催。入場料は2000円ながら、地元の江戸川区民は500円割引して1500円。