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女性のほうがプライバシー意識は低い?

森井昌克神戸大学 名誉教授
SNSとプライバシー保護(写真:アフロ)

昨年の11月6日から8日にかけて、(株)ジャストシステムは15歳から19歳までのスマホを所持する600人に対して、スマートフォンの利用方法を中心にネットやメディアに関する実態および意識調査を行いました。調査対象の600人中、約9割が学生で残りの一割が会社員等であることを付け加えておきます。

まずスマホではなく、パソコンをプライベートで使うかという問いでは、週に2、3日以上使うと答えたのは男性で1/2で、女性では大きく下がって1/4であるようです。スマホユーザはプライベートでパソコンを使うことはあまりないと言っても良いようです。そのパソコンの使い道ですが、インターネット検索を除くと、ネットショッピングやオークション、次に音楽のダウンロード、動画の視聴が主になります。やはりスマホとパソコンを使い分けるというよりは、ますますスマホにその利用がシフトしているといっても良いでしょう。しかしながら、スマホでインターネットショッピングを行っている人は多くなく、月1,000円未満では2/3以上、フリマ専用アプリやネットオークションでは8割以上が月1,000円未満と答えています。ゲームやコンテンツ視聴でも月1,000円未満しか払っていない人は9割近くになりますから、青少年はそれほどスマホで課金されるようなことは行ってないと言えるでしょう。

次にスマホユーザの他のメディアの利用状況ですが、意外とテレビも見ているようです。多くの人が一日平均2時間弱見ています。ちなみにスマホ自体の利用は2時間半の利用が大部分です。青少年のテレビ離れが話題になっていますが、テレビに対しては一定の安定感、信頼感があるようです。つまりメディアへのアクセスはスマホのインターネット閲覧かテレビであって、特にほとんど新聞を見ない人は80%を越えています。

スマホで一番利用されているSNS(ソーシャルネットワークサービス)はLINEで、次にTwitterとなります。LINEは9割近く、Twitterも7割以上が利用しています。特徴的なのはInstagramというサービスを女性の5割以上が利用しているに対して、男性は2割もいない状況です。Instagramとは画像共有サービスで、主に自分で撮った写真を仲間で見せ合うサービスです。

次にセキュリティ関係を見てみましょう。先に書きましたように、意外とスマホでの高額課金サービスは利用していないということで、お金に関するトラブルは心配するほど多くないかも知れません。「SNSで自分の写真を投稿する事に抵抗がないか?」という問いかけに、約1/3が抵抗がないと答えています。特に女性の場合は4割近くになり、特に抵抗があるとはっきり答えた人は1/4であって、男性の1/3以上に比較して少なくなっています。これは女性がInstagramを利用している割合が多く、しかも自分の写真を公開している人が多い事を表しています。男性よりもプライバシーに関する注意が幾分劣ると考えられなくはありません。SNSでは男性よりも女性のほうが、フォロワー数、つまりSNSで繋がっている人が多く、さらに投稿する回数も、情報をシェアする、つまり拡散させる回数も多いという調査結果が示されています。これらの結果から、少なくとも10代に関しては、女性のほうが自分のプライバシーを注意深く慎重に考える必要が有るようです。

10代のスマートフォン利用に関する実態調査【(株)ジャストシステム】

神戸大学 名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工繊大助手、愛媛大助教授を経て、1995年徳島大工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授(~2024年)。近畿大学情報学研究所サイバーセキュリティ部門部門長、客員教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。2024年総務大臣表彰。電子情報通信学会フェロー。

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