コロナ一斉休校、ホテルに働くママのために若きオーナーがしたこととは?
新型コロナウィルス感染予防についての様々な対策には賛否渦巻いているが、多くの家庭へ実際に混乱を来している例として思い浮かぶのが「全国の小中高・特別支援学校への臨時休校要請」だ。小学校低学年の子育て家庭をはじめ、ひとり親や共働きのケースなどへの影響が指摘されている。
中でも不安が懸念されるのが働くママたち。その多くが非正規労働者といわれているが、休むこと=収入が減ることに直結するので、子供のために休めばよいという簡単な話ではなく悩ましいところだ。宿泊施設でいえば子育て世代の女性が働くケースは多く、中には託児所や保育園も運営する宿泊施設もある。
今回の臨時休校要請で異色の対応をしたホテルを紹介したい。日中、ホテルに働くママのために子ども用の客室を無料開放したというのだ。しかも、そのホテルがカップルズホテル(レジャーホテル)というから二度驚く。そのホテル運営会社とは、福岡市内で6軒のホテルを運営する「プランタンホテルグループ(有限会社プランタン)」だ。
代表取締役の森藤紳介氏(46)へ今回の対応について聞いてみた。「ホテルに働くママ達の力になれないかということで、臨時休校となったちびっ子たちのために一時的に1室開放してみましたが、みんなお利口さんに過ごしていました」といい、「働きやすい会社を目指し日々考えているひとつの形です」と語る。
カップルズホテルの運営会社ということで、“子ども”をイメージできない業態だけに常識的に見ると少々混乱する。特に風営法(風俗営業法)の届出施設については18歳未満の者を客として立ち入らせることは基本的にできない。客ではない、という話ではあるがそこはカップルズホテルである。
一方、同社が運営する施設には、「HOTEL&SWEETS FUKUOKA」のような、一般の人気ホテルと変わらない、いやそれ以上のコンセプトホテルもある。昨今、レジャーホテルと一般ホテルのボーダレス化が指摘されているが、現にカップル以外のビジネスマンや女子会といった一般利用もかなりの割合だという。
森藤氏は「今回の対応ではもちろんアダルトなイメージに結びつくものや設備は全て客室から排除した」というが、そもそも一般ユースにも資する施設であり、そうした際にも同様の対応をしているので特段現場が混乱することはないと語る。
早速、新聞社の取材も受けたというが、カップルズホテルは一昔前に比べると宿泊業としての社会的な認知が広がってきた。現に、風営法の適用を受けないカップルズホテルも増えている。業界団体でも、昔から続いている風俗営業法の枠というのはいかがなものかという声も強い。
カップルズホテルの特色として、客室ステイオンリーということがある。パブリックスペースという概念が基本的にないので、他のゲストと接触する機会はほぼない。今回の新型コロナウィルスの問題では、多くの人々が行き交うホテルが不安視されている側面があるが、カップルズホテルにはそうしたイメージはない。
森藤氏も「カップルズホテルだからこその目線で、特に客室の清掃や消毒、空気の入れ換えなどをはじめ、複数の人が触れる箇所の消毒にも力を入れている」というが、スタッフのゲストが対面できない業態だけに、その一貫した利用者目線の追求にはリアリティがある。
一般にはあまり知られていないが、社会的な貢献活動、優秀な人材の育成という点でも業界団体のそれは注目に値するものも多い。いずれにせよ、今回のように若きホテルオーナーが即断即決できる姿は、筆者がこれまで取材してきた業界そのものの機運の高まりと重なる。