「印象派」は悪口だった!? 【今さら聞けない美術様式】
ここでは、美術をもっと身近に感じ、アートを楽しく学べる知識をご紹介していきます。
ところで皆さん、「印象派」という言葉は聞いたことがありますか?
「全体的にぼんやりとした印象の作品」
「美術の教科書で見たことあるかも?」
詳しくは知らないけれど、よく見かけるから何となく取っ付きやすくて好き! という方も多いのではないでしょうか。
今日は、そんな印象派について分かりやすくご説明していきます。
印象派とは? いつどこで生まれた?
印象派は、19世紀後半のフランスで興った芸術運動で、戸外の風景や日常の光景といった身近なテーマを、柔らかな筆致と色彩豊かな表現で描き出したのが特徴です。
かつてのフランスにおける芸術家たちは、会員制の学術団体(アカデミー)によって支配されていました。
そこでは、キリスト教の教えをモチーフに描かれた「宗教画」や、歴史上の出来事や神話に基づいて描かれた「歴史画」こそが格の高いものとされ、「風景画」や「肖像画」は低俗とされていたのです。
そして、当時のフランスで画家として食べていくには、まずアカデミーの会員となり、王家主催の展覧会(サロン・ド・パリ)に出展して評価を受けることが1つの登竜門となっていました。
しかし、近代になるとアカデミスムに反旗を翻す芸術家が登場します。
印象派の画家たちもまた、これまでの保守的な美術界に異を唱えるべく、新たな絵画技法を模索しました。
さらに、サロン・ド・パリへの反抗の意味を込めて、1874年に独自の展覧会を主催します。これは後に「印象派展(正式名称:画家、彫刻家、版画家などの美術家による共同出資会社第1回展)」と呼ばれるようになり、印象派が誕生するきっかけともなりました。
「印象派」はじめは悪口だった?
そんな「印象派」、実は悪口だったことを知っていましたか?
こちらの《印象・日の出》は、クロード・モネが1872年に描いた作品で、第1回目の印象派展に出展されました。
フランス北西部にあるル・アーヴル港の朝の光景が、柔らかなタッチと大胆かつ繊細な色彩で描かれたこの作品は、伝統的な絵画作品からは大きくかけ離れたものでした。
これまで、絵を描くときはまずパレットの上で絵の具を混ぜ合わせ、色を作ってから画面に塗っていくのが基本でした。しかし、色は混ぜれば混ぜるほど明るさを失ってしまいますよね。
そこで、印象派の画家たちは、それぞれの色を混ぜずに直接カンヴァスに置いて色を作り出す「筆触分割」という技法を考案し、作品に取り入れました。
《印象・日の出》もよく見ると、筆の跡がしっかり残っていますよね。モネもまた、筆触分割を用いてこの作品を描き、朝の光溢れる港の空気感を表現を巧みに表現したのです。
しかし、批評家たちからは酷評され、「こんな作品はただ印象を描いただけのものだ」と皮肉を言われてしまいます。
実は、この評価こそが、「印象派」という名前の由来なのです。
日本でも人気の高い印象派が、まさか悪口から付けられた名称だったとはびっくりですよね。こうした悪評に負けず、自分たちの表現を貫いた印象派の画家たちの作品はとっても魅力的。
次回は、印象派の画家を一挙ご紹介します。更新をお楽しみに!