雨の日に読みたい、絵画における雨の表現
こんにちは! 最近は雨が続きますね。梅雨ってジメジメしてあまり好きではないです……。
さて、今日の記事は絵画に描かれる「雨の表現」を掘り下げてみたいと思います。
雨の日の休日にはおうちにこもって美術の勉強をしませんか?
絵画における雨の表現
それではさっそく、雨をテーマにした絵画を見ていきましょう。
西洋絵画の雨の表現
まずは、雨が描かれた西洋絵画のご紹介です。
雨の絵と聞くと、19世紀イギリスの画家ウィリアム・ターナーの《雨、蒸気、速度―グレート・ウェスタン鉄道》が思い浮かびます。
描かれているのは蒸気機関車。蒸気機関車が発明されたのは19世紀に入ってからなので、この絵は当時にしては目新しいテーマの作品でした。
タイトルには「雨」と入っていますが、実際は靄がかかったような風景が描かれているだけで、雨がザーザー降っているようには見えないですよね。霧雨といったところでしょうか。
次は、もっと分かりやすく雨を描いた作品です。
カイユボットの《パリの通り、雨》は、ご覧のとおり通行人がみんな傘をさしています。とっても面白い絵画ですよね。19世紀パリの上流階級に生まれたカイユボットが描いたこの作品を見ると、パリのブルジョワジーがどのような姿で街を歩いていたかがよく分かります。
スーツを着た紳士淑女たちが傘をさしながら歩いているパリの空模様ですが、雨粒は見えず、描かれているのはあくまでも曇り空です。傘と、しったり濡れて光を反射する地面の石畳で雨の様子が再現されています。
「雨」と題が付く絵画でも、雨そのものが描かれている作品は少ないのでしょうか?
次に、こちらの作品をご覧ください。
この作品は、ゴッホが描いた風景画です。この頃、精神病院に入院していたゴッホは、病院の近くにあった畑に興味を持ち、その景色をいくつか描いたそうです。《雨の麦畑》は、秋の暮に降った大雨の光景が描かれています。
今まで見てきた2作品と比べると、明らかに雨の描き方が違いますよね。画面いっぱいに白色で描き込まれた斜めの線が、ザーザー降りの雨を表現しています。
ゴッホはほかにも、こんな作品を残しています。
ゴッホが亡くなる3日前に完成したと言われているこの作品は、晩年を過ごしたオーヴェル=シュル=オワーズの風景を描いたものです。こちらも、雨を線のようなもので表現していますよね。この表現方法は何を参考にしたのでしょうか?
その答えは、日本の絵画を見ると分かります。
日本画の雨の表現
こちらの絵画をご覧ください。
こちらは、江戸時代の浮世絵師・歌川広重が制作した版画作品です。《名所江戸百景》は、その名の通り江戸(現在の東京)の名所を描いた連作の作品で、これは隅田川にかかる新大橋が描かれています。
夕立が降る中、傘を被っていそいそと歩く人々がなんだか愛らしくもあるこの作品ですが、ここでも雨の表現を見てみましょう。先ほどのゴッホの作品と同じように、線で雨が表現されていますよね。しかも、描かれた年代を見てみると、ゴッホより30年以上も前。
ということはつまり……
そうなんです、実はゴッホのあの雨の表現は、日本の浮世絵に影響を受けたものだったのです!
ゴッホは熱心な日本愛好家で、浮世絵や日本画を何枚も集めていたそうです。それは、こちらの作品を見れば一目瞭然ですね。
先ほど見た広重の作品をゴッホが模写したものです。
このような日本画の技法や日本に関連する主題は、ゴッホを含めた当時フランスで活動していた画家たちの手によってヨーロッパへもたらされました。こうした日本趣味のことを「ジャポニズム」と呼びます。モネやルノワールも、日本の扇子や団扇を持った女性の姿を描き残しているんですよ。これはまたいつかご紹介したいと思います。
広重の弟子であった広景も同じような表現を用いて雨を描いています。ほかにも、雨を線で表現している浮世絵はたくさんあります。
雨を線で表す手法は浮世絵独自の手法でしたが、今となっては万国共通のものといっても過言ではないくらい、多くの人が用いていますよね。私がもし雨の絵を描けと言われても、きっと空から降る大量の雨を線で表現すると思います。
憂鬱な雨の日はおうちで美術鑑賞を
今回は、絵画に見られる雨の表現を西洋美術と日本美術それぞれご紹介しました。
当たり前だと思っていた雨の表現が、まさか日本発祥だったとはびっくりですよね。
これから雨の日が続くようなので、「せっかくの休日なのに外に出るのが面倒くさい……」という方は、おうちにこもってインターネットで美術鑑賞をしてみるのも楽しいかもしれませんよ。きっとお気に入りの作品が見つかるはずです!