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スマホにいきなり「こんにちは。ユーチューブです」とかかってきた!謎の非通知電話の正体は?

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:イメージマート)

7月初旬、いきなりスマホに「こんにちは。ユーチューブです」という外国人の女性から電話がかかってきました。しかも非通知です。

「どちらさまですか?」と尋ねると「ユーチューブのナオミです」と答えます。

確かに、私は5月末から大学時代の友人からの企画提案を受けて、詐欺・悪質商法の仕組みを解説する「多田文明Channel」というユーチューブを始めていますが、同社に私の電話番号は伝えていません。

「会社はどちらですか?」と改めて尋ねると「ユーチューブです」と答えます。

「本当ですか?」と尋ねると「はい、ユーチューブです」と、あくまでもユーチューブの会社だといい続けます。

いきなり、稼げる仕事を紹介してくるとは怪し過ぎる

要件は何なのでしょうか?

話を聞くと「ユーチューブの動画を見て、報酬を得られる仕事の紹介をしています」と片言の日本語で話します。

いきなり、稼げる仕事を紹介してくるとは怪し過ぎます。

過去に「パソコンがウィルスに感染した」と嘘をついて、セキュリティ代をだましとろうとする詐欺グループの外国人女性と何度も電話で話をしたことがありますが、その話し方によく似ています。私を詐欺にはめようとしている可能性がでてきました。その手には乗りません。

そこで「なんで、この電話番号を知っているのですか?」と尋ねましたが、それには答えずに「ユーチューブの仕事を紹介しています」とだけ話します。

都合の悪いことは、日本語がよくわからないフリをしてスルーする。この辺りの対応も、過去の詐欺グループの女性の応対にそっくりです。

「電話番号はありません」って、電話をかけてきますけど

まずは相手の身元を確認しなければなりません。本当のユーチューブであれば本社は、アメリカのはずです。

「そちらの住所と電話番号を教えてください」

すると女性から驚くような答えが返ってきました。

「電話番号はありません」

「はい?そんなわけなでしょう。今、あなたは私に電話をかけてきていますけど。電話番号がないはずがないでしょう」

女性は「LINEで電話をかけています」とわけのわからないことをいい始めます。

「嘘つかないでください。非通知でかかってきているんですから、電話番号があるはずです」とさらに私が追及をすると、沈黙が続いた後に「IDは、887・・・」といいだします。

どうやらメッセージアプリのIDを伝えているようですが、よくわかりません。

嘘をつく相手に、つい頭に血が上ってしまう

「何をいっているのか、よくわかりません。電話番号を教えてください。そちらの住所はどちらですか?」

女性はひたすらに「電話番号はありません」を繰り返します。

もともと嘘をつく相手に対して、頭に血が上ってしまうタイプなので、声のトーンが厳しくなります。

「だから、電話番号と住所を教えてくださいよ!嘘はつかない!」

「お客様、怒らないでください」と私は女性になだめられます。

「怒ってしまうのは、あなたがしっかりと身元を教えてくれないからでしょう。電話番号は?」

「ありません」

「だから、ないわけないでしょう。住所は?」

「ユーチューブの住所です」

「だから、どちらですか?」

「日本です」

「国だけでなく、住所を聞いているのです。本当は、日本から電話をかけているのでないのでしょう。本当の会社の場所をいいましょうよ。インドですか?タイですか?それとも、その他の東南アジアの国ですか?」と私が聞き続けていると、一方的に切られてしまいました。

その後、この種の電話がかかってこなくなりました。もしかすると、私の電話番号が詐欺グループのブラックリストに入ってしまったのかもしれません。

今、被害が多く起きている、少額報酬を手にさせる副業詐欺の手口

結局、それ以上は、どんな稼げる内容かを聞くまでには至りませんでしたが、おそらく次のようなものだと思われます。今、ユーチューブと提携しているという業者が「動画を見ることで報酬を支払う」といってお金をだまし取る被害が多く出ているからです。

バイトでためたお金が…“動画見るだけ”簡単副業に注意! (NHK)

「YouTube動画のスクリーンショットを送信すれば報酬を得られる」また副業サイト詐欺(NBC長崎放送)

急増「タスク詐欺」の実態を被害者が克明に語る 「副業」で稼ぎたい心理を巧みに突くその手口(STVニュース北海道)

いずれの手口も共通しているのは、指定された動画を見て相手の業者にスクリーンショットをとって送ると、少額ですが報酬が「○○Pay」などの決済サービスを通じて入っています。さらに新たなタスクをこなすと、もっと報酬が得られるといわれて、お金を出させられます。しかし「操作に失敗した」などの様々な名目でさらに要求されて、得られた報酬以上のお金をだまし取られます。

「動画を見て報酬が得られる」詐欺を行うグループは海外組織の可能性

この手口はSNS上の広告やメッセージなどから誘導されることも多いようですが、私のところには電話勧誘の形でやってきたことが考えられます。

そうだとすれば、この副業詐欺を行うグループは、海外に拠点をおいた犯罪組織の可能性が高く、もしお金を払ってしまうと取り戻すのは、極めて難しくなってしまいます。

少額の報酬を手にさせながら、それ以上の大きなお金をだまし取る詐欺の手口は、SNS、メッセージ、電話勧誘など、様々なアプローチで私たちのもとにやってきています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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