都市計画道路~そろそろ大幅見直しをすべき理由を、税理士・不動産鑑定士が専門的見地から提言する
■都市計画道路とは
皆様も知り合いから「私の家は都市計画道路の範囲にかかっていて色々と制約がある」とお聞きになったことがあるかもしれませんが、都市計画道路とは、自治体が作る都市計画において、将来、設置が予定されている道路と言ってよいでしょう。
道路の予定地の範囲では、一定以上の「ヘビーな建物」の建築が制限されるため、その土地の所有者にとっては都市計画道路の指定があることはマイナスといってよいでしょう。
■都市計画道路の実態とは
不動産鑑定をしていると、たまに「評価対象の不動産が都市計画道路の範囲内」という場合があります。
ここで、よくあるのが、都市計画決定が「昭和20年代の計画決定である、戦災から復興の云々」というように、都市計画決定後、数十年も動いていないパターンです。
ただ、筆者は思います。
ある人の土地に勝手に都市計画道路の計画決定範囲の指定をしておきながら、いつまでも事業認可せず数十年も放置して、その間に制限を加え続けているのって、何なのだろう...と
■都市計画道路計画決定は、税収減にもなっている
亡くなった人の相続税の計算の基準である相続税財産評価基準では、都市計画道路であることによる土地の評価減も認めています。
このため、自治体が定めた都市計画道路の計画決定は、そのまま相続税の税収減の要因にもなり得るのです。
相続税が減るといえば聞こえはよいですが、実際のところは「土地の自由利用の制約」を課した上での話ですから、所有者にとっても、国にとっても不幸な話に他ならないのです。
■車社会も見直されるべき
別の観点からも筆者は思います。
例えば地方で車がないと移動できない地域ならともかく、東京23区や京阪神中心部、その他大都市の中心部等の交通網が発達した地域で、車は必要なのでしょうか。
筆者個人としては、自動車関連のお客様も複数いらっしゃるので、この話を書くのはマイナスな面もあるのですが、それでもあえて書きます。
環境を破壊し、しかも鉄道や飛行機等と比べて遥かに事故被害者の数が多い車を優遇し過ぎだろう...と。
で、あれば、むしろ都市計画道路を見直して車を過剰に優遇するのはやめて、一方で車を削減する施策が必要ではないかと、考えています。
例えばバスやトラック、パトカーや消防車等は社会的に必要ですので仕方がないですが、マイカーはかなりの制限があるべき...と思います。
ちなみに余談ですが、命を守ることも必要と考えています。
鉄道好きの筆者の感覚からいうと、鉄道の場合は「一定以上の速度になると自動的に制限がかかる」システムが導入されている路線がありますが、町でたまに狭い道を高速で走る危ない車を見るにつけ、「この道路ではこの速度しか出せなくする、自動的に速度制限がかかる設備」をつけるべきとも思っていますけれど、いかがでしょうか。
■都市計画道路の計画決定段階での放置は国土の有効利用の阻害
何十年も動いていない都市計画道路の計画決定によって、その土地の所有者には自由利用の制限が課され、しかも税収減にもつながっています。
用地買収の結果、できた道路が「産業の活性化につながり、日本が裕福になる一助」となるのであれば理解できますが、たかだか「そのあたりの住人の車移動が便利になる」程度なのに巨額の資金をかける意味は、筆者には理解できません。
日本社会は既に成熟しています。
で、あれば、これからは「必要性が乏しいのに昔の計画に縛られて無理やり実行する」のではなく、「国際競争力が上がる産業の強化になるものに集中的に資本投下をし、それ以外は既存のインフラを活用する」方向性に改めるべき...と筆者は思うのですけれど、いかがでしょうか。