岩手大学講義出欠確認用スマホアプリ騒動 ~何が炎上を引き起こしたのか~
年末から年始にかけて、岩手大学が導入しようとしている出欠管理システムが大きな話題になり、出欠だけでなく、GPSによる位置特定も行っているのではないかという疑惑から、極端には学生の行動を逐一管理しようとしているのではないか、と主に岩手大学の学生以外から批判のツイートやブログ投稿が数多くなされ、いわゆる炎上状態になりました。ちょうど昨年の春に令状なしでのGPSを利用しての捜査が違法との判決が出たこともあって、GPSの位置情報からのプライバシー流出、さらに「管理」という言葉に過剰に刺激された、相乗効果による結果だと推察されます。現代の学生はプライバシーの侵害はともかく、「管理」に関してはさほど神経質ではありません。幼稚園から小学校、中学校、高等学校、それに大学でさえ、手厚く扱われているからです。この「手厚く」には一人一人の個人情報に基づいた、いわゆる管理が含まれています。管理されることに抵抗はほとんどないのです。もう今では当然のことのようになってしまいましたが、大学でさえ、定期的な学生の個人面談だけでなく、保護者会や三者面談まであるのです。冗談ではなく、授業参観の可否まで考えられています。
炎上の原因は、いかにも出欠確認以外でGPSによる位置情報を収集しているかのようにアプリの説明を行ったこともありますが、出欠における不正の可否にかかわらず、出欠管理を厳格に行うことに快く思わない、かつての大学生が過剰に反応した結果でしょう。
筆者も大学教員であり、実際に現在も大学学部学生に対して講義を行っています。その講義の中で出欠を取るのですが、この出欠を取る手間が無視できないのです。大学の講義自体は出席することを前提としていること、さらに出席することは手段であって、結果ではなく、あくまでも結果はその講義内容の理解であって、極端に言えば、講義に出ずとも講義内容を理解することができればそれで充分なのです。したがって、出欠を取る必要がないという意見も聞かれます。しかし、出欠を取る目的が異なるのです。現在の出欠確認の主目的は、講義内容の理解とは無関係であって、学生の生活管理の一環なのです。私自身は大学生は独立した大人として扱うべきであると考えますが、実際は親の管轄下にあります。大学に来ることなくアルバイトや遊びに精を出す学生に対しては、その事実を親に伝える必要があります。これを怠り、留年でもしようものなら親からクレームが来るのです。また大学生活に慣れず、自宅に閉じこもる学生も少なくありません。これらの学生に対しても十分なケアをする必要があるのです。スマホを用いた出欠管理システムはこれらの学生の早期発見を目的としているのです。