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ラトビアに避難したウクライナ人女性ら29人、ドローン工場で働きウクライナ軍に祖国防衛のドローン供給

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

ウクライナではパン工場や図書館で働いていた女性たちが祖国防衛のためのドローン製造

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生品ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。

ウクライナ紛争では最近ではロシア軍によるイラン製軍事ドローンによるウクライナの民間施設やエネルギー施設への攻撃によって150万人以上の市民への電力供給が止まってしまったことや、ウクライナ軍によるロシア領土の空軍基地へのソ連製ドローンによる攻撃などが目立っている。だが、両軍ともに小型の民生品ドローンが監視・偵察だけでなく、爆弾を搭載して攻撃用にも使用されている。

そんな中、2022年12月にはカナダのメディアCBCは、ラトビアのドローン製造会社アトラス・アエロスペースで働く29人のウクライナ人女性を紹介していた。働いているウクライナ人女性は全員が紛争で祖国ウクライナから避難してきた、いわゆるウクライナ難民の方々。ウクライナに家族や旦那を残してきて1人でラトビアに避難している人も多い。ウクライナにいた時にはパン工場や図書館で司書として働いていたという女性もいる。

最初は言葉の壁もあったが、製造の手引きを見ながら覚えていき、現在ではドローン製造に欠かせないスタッフになっているようだ。ラトビアのアトラス・アエロスペースではウクライナ紛争前から民生品ドローンを製造していたが、現在では製造しているドローンの全てをウクライナ軍に供給している。ウクライナ軍が監視・偵察用に使用している。

▼ウクライナから避難してきた女性29人が働いているラトビアのドローン工場を紹介するカナダのメディアCBC

ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍もドローンを監視・偵察、攻撃で多く使用している。「上空の目」として戦場では欠かせない兵器の1つになっている。上空から敵の様子を探り、敵を発見したら、その場所をめがけてミサイル攻撃を行ったり、ドローンから爆弾を投下したり、神風ドローンが標的に突っ込んでいき爆発している。これほど多くのドローンが戦場で活用されているのは人類の戦争の歴史上でも初めてであろう。

ラトビアのドローン工場で製造されているドローンは戦場で使用されるので軍事ドローンだが、監視・偵察用であり基本的には民生品ドローンと同じである。ウクライナ軍では監視・偵察ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載して攻撃ドローンに改造して、ロシア軍への攻撃に使用していることも多い。民生品ドローンと軍事ドローンの境目がなくなったのもウクライナ紛争の特徴の1つである。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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