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3連休初日の羽田空港大混雑。直前キャンセル出来ずに予定通り出発。Go Toキャンセル料高額もネックに

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
朝6時30分で長い行列ができている3連休初日の羽田空港第2ターミナル(筆者撮影)

 3連休初日の11月21日(土)の朝6時半の羽田空港。ANA(全日本空輸)国内線が出発する第2ターミナルの保安検査場には長い行列が出来ていた。9月の秋の4連休初日(9月19日)に近い光景で、保安検査場の行列だけ見ると更に長い列になっており、手荷物を預けるだけでも長い時間を要していた。

羽田空港は9月の4連休初日以上の出発客で混雑

 羽田空港の様子を見る限り、駐車場の満車も9月19日よりも早い時間での満車状態であり、新型コロナウイルス感染拡大で3連休の国内旅行をキャンセルしている人は限定的のようだ。9月の4連休の際には5~6割程度の運航率であったが、現在では運休便が減少したことで7~8割程度の運航率になっている。ただし、各航空会社に取材をすると、早い段階で感染者が急拡大している北海道方面への便のキャンセルは目立っているとのことだ。

保安検査場に加えて、手荷物預けにも長い行列ができていた(11月21日午前6時30分ごろ、羽田空港第2ターミナルにて筆者撮影)
保安検査場に加えて、手荷物預けにも長い行列ができていた(11月21日午前6時30分ごろ、羽田空港第2ターミナルにて筆者撮影)
羽田空港駐車場も午前7時前には満車に。最近は「密」を回避するべく、マイカーで羽田空港に来る旅行者も増えている(11月21日午前7時前、筆者関係者撮影)
羽田空港駐車場も午前7時前には満車に。最近は「密」を回避するべく、マイカーで羽田空港に来る旅行者も増えている(11月21日午前7時前、筆者関係者撮影)

18日に東京都内感染者急速拡大も、その時点でキャンセル料高額で予定通りに出発

 東京都の新型コロナウイルスの感染者数で衝撃が走ったのは11月18日(水)。一気に493人に拡大したことで旅行を強行するか中止するのか迷う旅行者が多く出た。これまでの航空会社や旅行会社関係者への取材を通しての最近の傾向として、東京都内の1日あたりの感染者数が300人を超えると「旅行の取りやめを検討する人が出てくる」、そして500人を超えると「旅行のキャンセルが相次ぐ」と言われていた。

 11日(水)に300人を超え(317人)、一部で旅行の取りやめを検討する人が実際に出て、特に感染者が急増した北海道方面へのキャンセルが相次いだ。1週間後の18日(水)には493人、19日(木)に534人になったことで、旅行をキャンセルしている人が多く出た一方、予定通りに国内旅行に出発する人の方が多かったことは、3連休初日の朝の羽田空港での光景からも明らかだ。直前の感染者急増でキャンセルしたくても、キャンセル料負担を嫌って、予定通りに出発している人が多かったようだ。

現行のキャンセル料はGo Toトラベル割引前の金額で計算

 現在、大きな問題となっているのがGo Toトラベルを使った旅行におけるキャンセル料の問題である。この3連休においては、直前で旅行を取りやめる場合には通常のキャンセル料を支払う必要がある。旅行者が誤解しているのが、Go To割引後の金額に対してのキャンセル料ではなく、割引前の元々の金額に対してキャンセル料がかかることになる。

 飛行機・新幹線などの移動と宿泊がセットになったパッケージプランの場合は原則、出発20日前から割引前の旅行代金の20%、7日前~2日前まで30%、前日で40%のキャンセル料が必要となる。宿泊のみの場合は各宿泊施設が設定するキャンセル料ルールに基づいてのキャンセル料となる。4万円の旅行商品でGo Toトラベルの35%割引で実際の支払いは2万6000円であっても、7日前~2日前キャンセルで30%の手数料になると1万2000円がキャンセル料となり、2万6000円の支払い済みのうち1万4000円しか戻らない計算となる。もしキャンセルが前日になると40%のキャンセル料で1万円しか戻らないことになる。

キャンセル料の負担なしなら旅行を取りやめる人は多い

 旅行者から聞かれるのは、キャンセル料がかからないのであれば旅行を取りやめたいが、「旅行を取りやめてキャンセル料を払うくらいであれば、そのまま予定通りに旅行に出かける」という声が大勢を占めている。

 つまり、キャンセル料という金銭的負担がなければ旅行を取りやめる日本国民は多いということだ。真剣に感染者拡大を防ぎたいのであれば、国もしくは自治体がキャンセル料補填を旅行会社・宿泊施設側にすることで旅行者がキャンセルしやすい環境を整えるだけでも、移動を大きく減らすことは今すぐ可能である。既に一部の旅行会社や宿泊施設では独自にキャンセル料を免除しているケースも出てきている。

 ANAによると、国内線利用者は感染者急増前の先週の段階で、11月は前年比の6割、12月は7割、年末年始は8割の予約数まで戻っているが、感染者の拡大が続けば、先週の時点でキャンセルが増えている北海道方面だけでなく、国内全てで予約が鈍化することになるだろう。

最近では年末年始へ向けて国内線の予約が増えていたが、今週に入ってから予約が急激に鈍化している(11月21日午前6時30分ごろ、羽田空港第2ターミナルにて筆者撮影)
最近では年末年始へ向けて国内線の予約が増えていたが、今週に入ってから予約が急激に鈍化している(11月21日午前6時30分ごろ、羽田空港第2ターミナルにて筆者撮影)

21日夜にも政府の方針が示される予定。注目はキャンセル料の取扱い

 20日の夜には新型コロナウイルス感染症対策分科会がGo Toキャンペーンの運用見直しをするように政府や都道府県に求める提言をまとめ、政府も検討に入った模様だ。混乱を最小限にする為には、「キャンセル料なしでの旅行取りやめ」「一定期間、新規のGo Toトラベル適用の予約停止」を柱にしながらも、「既に予約済みのGo To旅行予約はそのまま有効」にするのが適切だろう。

 仮に予約済みのGo Toトラベルが無効になってしまうと、予定通りに旅行に出かける場合に追加負担が生じてしまうことになり、旅行者以上に現場が混乱することになるからだ。キャンセル料の負担をなしにするだけでも、移動を大きく減らすことは可能だろう。

 早ければ21日夕方にも政府方針が示されることになりそうだ。注目は、新規の予約停止とキャンセル料の取扱いになるだろう。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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