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発熱外来の受診時、公共交通機関を利用してよいか? 自家用車がない場合は? コロナ禍で解決できない難題

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

発熱者が病院に行く場合や、受診後に新型コロナ陽性と判明して自宅に帰る場合、「公共交通機関の使用は避けてください」と明記している自治体が多いです。ここで示す公共交通機関とは、電車、バス、タクシーなどです。さて、自家用車がない人はどうすればよいのでしょうか?

自家用車以外になかなか手段がない

本人や同居の家族が自家用車を使って送迎する場合は問題ないのですが、「運転免許と自家用車がある」という条件をクリアしなければいけません。

高齢夫婦などでは、移動手段が電車、バス、タクシーなどの公共交通機関に限られていることが多いです()。家が近ければ徒歩や自転車という手もありますが、発熱している状態で自転車に乗ると転倒のリスクがあり、危険です

図. 発熱外来受診時の悩ましい交通手段(筆者作成)(イラストは、看護roo!、シルエットイラストより使用)
図. 発熱外来受診時の悩ましい交通手段(筆者作成)(イラストは、看護roo!、シルエットイラストより使用)

タクシー大手は、「発熱などの症状がある場合は、ご利用をお控えください」とコメントしている企業が多いです。しかし、普段病気をしたときにもタクシーを使って来院する患者さんは多いことから、発熱者でも利用されている可能性はあります。

軽症者は受診そのものを控えて、早急に病院へ行かなければならない人は救急車を選択するので、「軽症ではないが救急車を呼ぶほどでもない」という発熱者がこの問題の壁にぶつかります

搬送を依頼する

自治体によっては、陽性になった人が公共交通機関を利用できない場合、保健所が移動手段の手配をしてくれることがあります。「自宅に帰る手段がない場合は保健所に相談ください」とウェブサイトに記載している自治体もあります。

しかし、第6波・第7波のような感染者数だと、なかなか保健所に電話がつながりませんし、どこまで頼ってよいのか悩みますね。

民間事業者が患者を搬送する民間救急や介護タクシー、発熱者・陽性者用のコロナタクシー事業を展開している企業もあります。

ただ、民間救急の利用は救急車が必要で公的救急がつかまらない場合に限定されている自治体が多く、発熱者・陽性者用のコロナタクシー事業については運転手が感染したら通常のタクシー業務の運営が止まってしまうことから、なかなか事業者が集まらないという現状です。

事業者数は多くありませんが、民間往診サービスを展開している企業もあります。割高ではありますが、上記の問題を解決できる選択肢であるため、一考に値します。

陽性者の外出は賛否両論

政府は新型コロナの無症状陽性者の外出をマスク着用の条件付きで認める方向で検討を始めていると報道されています。もちろん、生活必需品を買いに行く場合など、限られた場面での話です。SNSなどを見る限り、賛否両論です。

そもそも、「無症状陽性者」自体がなかなかいません。無症状者に対する新型コロナの検査や受診は控える動きになっていますし、陽性者は有症状のことが多いはずです。となると、そもそもこの議論自体が空疎なものになってしまいます。

感染者がここまで増えてしまったので、なし崩し的に社会的な妥協点をさぐる必要があるのかもしれません。もし無症状陽性者の外出が認められたとしても、有症状陽性者が公共交通機関を利用することは容認されないでしょう。

まとめ

公共交通機関を利用しないとなると、周囲への感染拡大を防ぐ解決法は、自家用車を利用することになります。

しかし、運転免許や自家用車がない場合、発熱者用のタクシーを探す、陽性判明後の帰宅に関しては、保健所に相談するか陽性者用のタクシーを探す、といった選択肢になります。

需要に対する供給が少ないことから、これらが現実的な案とは思えず、実際には公共交通機関を利用している人もいるかもしれません。

介護を要するような高齢者では、相談できるケアマネージャーや、地域のかかりつけ医をつくっておくことが重要です。

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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