台風5日先予報 来月から詳しく 強さ予報に課題も
来月14日から、台風の強さ予報が5日先まで延長され、防災対策に弾みがつくと期待される。しかし、強さ予報は改善が進んでおらず、課題も多い。
進路予想図が1つに
タイトル表紙は現在発生中の台風2号の進路予想図です(22日午前9時現在)。左上は3日先まで、右下は5日先までを表しています。2009年に台風の予報が5日先まで発表されるようになってから、このように進路予想図が2つに増えました。なぜ、2つあるのでしょう?
それは暴風警戒域が3日先までしか表示できないからです。この2つを1つにまとめてしまうと、4日先と5日先の予報円には暴風警戒域がないため、台風が弱まる印象を与えてしまいます。誤解を避けるために、わざわざ2種類の進路予想図が用意されたのです。
しかし、来月14日から台風の強さ予報が5日先まで延長されるため、暴風警戒域が途切れることなく表示できるようになります。台風5日先予報がスタートして10年、ようやく進路予想図が統一されます。
強さ予報に向上なし?
台風予報の進歩はコンピュータの性能向上に支えられています。例えば、3日先の台風の中心位置は10年前までは340キロくらい(1999年-2008年平均)誤差がありましたが、今では250キロくらい(2009年-2018年平均)まで縮小しました。
一方で、台風の強さ予報はわずかな改善に留まっています。気象庁太平洋台風センターの年次報告書を参考に、中心気圧と最大風速の年平均誤差を調べました。
こちらのグラフは中心気圧の誤差をみたものです。24時間予報、48時間予報、72時間予報とも、年による変化はあるものの、全体として横ばいです。
次に、最大風速をみてみましょう。
こちらも良くなったり悪くなったりを繰り返し、必ずしも改善が進んでいるとは言えません。
最大風速は台風の強さを決める基準になっているため、誤差を小さくする必要性が大きい。このように最大風速が10メートル違うだけで、強さの表現が変わってしまうのです。
疑似的な観測データを使用
台風の発生、発達には海洋が大きく影響しています。しかし、台風観測のほとんどを気象衛星に頼っているため、現在でも台風中心部の詳細な気象データは入手困難です。そのため、実際の台風に似せた観測データを利用して予測する「台風ボーガス」という手法を取り入れています。
それでも発達期は中心気圧を浅めに予測してしまう傾向があります。一方、成熟期と衰弱期は逆に発達させ過ぎてしまい、台風が徐々に弱まっていく様子を的確に予測できないことが多いです。
台風の強さ予報が5日先まで延長されることで、防災対策への効果を期待する声があります。でも、強さ予報の改善が進んでいない現状は利用者に伝わっていません。誤差を小さくすることはもちろんのこと、誤差があることをわかりやすく伝える手だても必要です。
【参考資料】
気象庁:台風強度予報の5日先までへの延長について,2019年2月20日
RSMC Tokyo-Typhoon Center:Annual Report on the Activities of the RSMC Tokyo
気象庁:台風進路予報の精度検証結果
米原仁,2016:1.2 全球数値予報システムの特性の変化,平成28年度数値予報研修テキスト,気象庁数値予報課,4-11.