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3連休初日の国内線、コロナ感染急拡大でもキャンセルはわずか。ただ宿泊施設の新規・直前予約は急激に鈍化

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
羽田空港第2ターミナルのチェックインカウンター(7月16日7時30分、筆者撮影)

 7月の3連休初日となった7月16日(土)の朝の羽田空港は、旅行へ向かう人の姿が多く見られた。前日の15日(金)に東京都内の新型コロナウイルスの新規感染者数が1万9059人を記録し、3日連続での1万5000人超えとなっているが、過去2年間の感染拡大時と異なる傾向が国内旅行では見られている。

3連休のキャンセルは少ないが、新規の予約ペースが鈍化している

 7月16日の朝、羽田空港で取材に応じたANAの小山田亜希子東京空港支店長によると、海の日を含めた今回の3連休において「キャンセルの動きは見られない」と話す。3連休についてはコロナ前(2019年)の8割強まで回復しているとのことで、特に沖縄・北海道方面の予約が好調とのことである。

 ANAとピーチのANAグループ2社の国内線で7月16日の1日で約14万人の利用者になる見込みとのことだ。ただし、新規予約のペースは今週に入ってから鈍化しており、過去の感染拡大時に見られた時のようなキャンセルの動きは現時点では見られないとのことだ。

コロナ前の8割強の予約が入っていることを説明するANAの小山田亜希子東京空港支店長(7月16日、筆者撮影)
コロナ前の8割強の予約が入っていることを説明するANAの小山田亜希子東京空港支店長(7月16日、筆者撮影)

ANA・ピーチの2社合わせて海の日の連休でコロナ前の8割水準に

 参考までに、2020年の海の日の連休では、東京都内の感染者数が再拡大し、Go Toトラベルが東京都発着以外で開始した直後であったが、その時で2019年と比較して25%しか利用者はおらず、昨年(2021年)は東京五輪直前に感染者数が拡大し、緊急事態宣言が発令されていたこともあって2019年と比較して35%の利用者しかいなかった。ただ、今年の海の日の3連休は感染者数の急拡大が見られるが、コロナ前の8割まで戻っている。

朝6時半過ぎが午前中では最も混み合っていた(筆者関係者撮影)
朝6時半過ぎが午前中では最も混み合っていた(筆者関係者撮影)

「予約済みのキャンセルは少ない」。キャンセルする場合には原則通常のキャンセル料がかかる

 航空会社、そしてホテルや旅館などを取材したなかで、口を揃えて聞かれるのは「予約済みのキャンセルは非常に少ない」ということだ。GW明けに感染者数が拡大せず、5月・6月と感染が抑えられていたこともあり、7月・8月の夏休みの国内旅行予約は堅調だったなかで、第7波の可能性が高まる感染の急拡大となったが、コロナ禍の「密」にならない旅行スタイルが確立されたこと、重症化率が低いこと、更には急な感染拡大ではあるが「行動制限」がないことで仮にキャンセルする場合には通常のキャンセル料がかかることもあり、予定通りに旅行へ出かけている人が多いようだ。

羽田空港内のPCR検査センターも多くの人が並んでいた(7月16日、筆者撮影)
羽田空港内のPCR検査センターも多くの人が並んでいた(7月16日、筆者撮影)

国内線ターミナル(第1・第2)直結の駐車場は朝7時15分で全て満車になった。ただ国際線が発着する第3ターミナルの駐車場「P5」には空車があるので満車時は第3ターミナルへ向かうのがおすすめ(筆者撮影)
国内線ターミナル(第1・第2)直結の駐車場は朝7時15分で全て満車になった。ただ国際線が発着する第3ターミナルの駐車場「P5」には空車があるので満車時は第3ターミナルへ向かうのがおすすめ(筆者撮影)

コロナ禍で増えた直前予約が感染急拡大で大きく減少、夏休み中の平日の稼働が心配の声も

 ただ、宿泊関係者から多く聞かれるのは、新規の宿泊予約が鈍化しているとのことだ。キャンセルに比べると新規予約数の方が多い傾向にはあるが、明らかに感染拡大局面に入ってからの新規予約のペースが落ちているとのことで、ある宿泊施設の関係者は「これまでの感染拡大時に比べるとキャンセルは少ないことは明確だが、全国旅行支援も延期となり、県民割・ブロック割は延長されたが、夏休み中の平日の稼働が心配」と話す。コロナ禍で新たに確立された直前予約が感染拡大で見込めなくなる影響を危惧している。

 ANAの小山田東京空港支店長も夏休み全体の旅客動向については、新型コロナウイルスの感染拡大局面に入ったことで「現在精査中である」とした。

「行動制限」はなくても、感染時に仕事への影響が大きいことで、自主的に自粛する動きも出始めている

 取材を進めていると、新型コロナウイルス感染拡大によって、既に一部企業では会食を制限することを検討し始めた企業、家族の感染及び濃厚接触者になったことで食事会をキャンセル・自粛する動きが今週になって出始めている。

 政府も「行動制限」は現時点では求めない方針を示しているが、国民の多くは感染することを防ぎたいことはもちろんであるが、症状の有無に関係なく、感染することによって10日間以上、仕事に影響を及ぼしてしまうことを危惧する人が多く、行動制限がなくても、感染拡大時の外出を控える人も増えつつあるのも事実だ。ただ、旅行においては「密」にならない旅行スタイルが確立されつつあることで予定通りに夏休みの国内旅行に出かける人が多い一方、更に感染者数が増えてくれば、新たな旅行の計画に慎重な人も増えそうだ。

海外旅行のキャンセルはほとんどない状況

 今年は夏の海外旅行へ3年ぶりに出かける人も増えており、円安要因はあるが、ハワイ路線を運航している複数の航空会社関係者によると、ハワイ路線の8月の予約は堅調に推移しており、現状では海外旅行へ出かける予定の人のキャンセルはほとんどないそうだ。

帰国便出発72時間以内のPCR検査が必須であるが、ハワイを中心に3年ぶりに海外旅行へ出かける人も増加傾向に。日本国内の感染拡大による影響はほとんど出ていない(6月30日、ワイキキビーチにて筆者撮影)
帰国便出発72時間以内のPCR検査が必須であるが、ハワイを中心に3年ぶりに海外旅行へ出かける人も増加傾向に。日本国内の感染拡大による影響はほとんど出ていない(6月30日、ワイキキビーチにて筆者撮影)

今後の感染者数、病床使用率など次第で更なる影響が出る可能性も

 この時期に感染拡大がなければ、コロナ前の水準までの国内旅行の回復が期待されていたが、現在の感染状況を踏まえるとコロナ前までの回復は難しいだろう。だが、コロナ禍3回目の夏の中では多くの国内旅行者が観光地で見られる夏休みになりそうだが、今後の感染者数の推移や病床使用率、重症化が進むことで更なる影響が出る可能性もありそうだ。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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