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女性囲碁史が開かれるか。藤沢里菜女流三冠「黄金の椅子」名人リーグ入りをかけた大一番に臨む

内藤由起子囲碁観戦記者・囲碁ライター
祖父藤沢秀行名誉棋聖の十回忌にて。2019年10月5日=筆者撮影

若手や女性の活躍が著しい囲碁界。きょう11月18日、藤沢里菜女流三冠が名人戦挑戦者決定リーグ戦入りをかけた1局に臨む。

女性が挑戦者決定リーグ戦に進めば、史上初のこと。注目の一戦に、日本棋院では解説会を行う。タイトル戦や挑戦者決定戦でもないのに解説会が開かれるのはたいへん珍しい。

歴史の扉が開くか、結果は18日深夜までに決まる。

名人戦リーグは「黄金の椅子」

囲碁名人戦挑戦者決定リーグ戦は、9人で打たれる。

棋戦はほとんどがトーナメントで1回負ければその年のその棋戦は終わり。

しかしリーグ戦に入れば、総当たり戦なので負けても打つことができる。またトップ棋士と毎月コンスタントに打てることは、棋士にとっても得がたい機会だし、1位になれば芝野虎丸名人への挑戦権をつかむことができる

リーグ戦に入ることは一流棋士の証であり、評価はもちろん、収入面でもトーナメントで優勝するのにまさるとも劣らない価値がある。

そんなことから、名人戦リーグ戦の枠はいつしか「黄金の椅子」と呼ばれるようになった。

在籍9人のうち3人が入れ替えで、全棋士約480人がトーナメントでこの3つの枠を目指す。

藤沢女流三冠は予選Cの1回戦から元本因坊の王銘エン九段や若手ホープの大西竜平四段、本因坊リーグに在籍している志田達哉八段らをなぎ倒し、8連勝で最終予選決勝までコマを進めてきた。

これまで藤沢女流三冠も最終予選に名を連ねたことはあるが、1回戦で敗退している。

女性が挑戦者決定リーグ戦に入れば、史上初の快挙となり、歴史の扉をひとつ開けることになるのだ。

またもや、一力遼八段が相手

今回の予選決勝、藤沢女流三冠の相手は大学生棋士の一力遼八段。

9月に全棋士参加の「竜星戦」決勝で、上野愛咲美女流本因坊を下して優勝し、女性初の優勝に待ったをかけたのは記憶に新しい。

「女性初」の相手に、短期間で2度もなってしまう星回りになってしまった一力八段。棋聖戦で挑戦者になったり本因坊戦リーグにも在籍したりしている若手で「ポスト井山裕太四冠」の1人なのに、なぜか名人戦リーグにはいまだ入ったことがない。一力八段にとっても負けられない一戦なのだ。

藤沢女流三冠は、11月6日に上野女流棋聖に敗れ、女流本因坊を奪われ、四冠から三冠に後退したばかり。切り替えができているか、精神的影響がどう出るかがポイントだ。

名人戦最終予選は持ち時間5時間。朝10時に開始され、夜中までには決着する見通しだ。

囲碁観戦記者・囲碁ライター

囲碁観戦記者・囲碁ライター。神奈川県平塚市出身。1966年生。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。お茶の水女子大学囲碁部OG。会社員を経て現職。朝日新聞紙上で「囲碁名人戦」観戦記を担当。「週刊碁」「囲碁研究」等に随時、観戦記、取材記事、エッセイ等執筆。囲碁将棋チャンネル「本因坊家特集」「竜星戦ダイジェスト」等にレギュラー出演。著書に『井山裕太の碁 AI時代の新しい定石』(池田書店)『囲碁ライバル物語』(マイナビ出版)、『井山裕太の碁 強くなる考え方』(池田書店)、『それも一局 弟子たちが語る「木谷道場」のおしえ』(水曜社)等。囲碁ライター協会役員、東日本大学OBOG囲碁会役員。

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