G・ノーマンが新ツアーの具体案を発表。一方で「PGL」は米欧ツアーとの協調を提案。混沌とするゴルフ界
これぞ、まさに「ネバー・ギブアップの精神」と言うべきか?
PGAツアーに対抗する新ツアーの創設構想を30余年前に打ち出し、実現寸前で阻止されたグレッグ・ノーマンは、立ち消えになったと思われたその構想を水面下で練り続け、サウジアラビア政府や政府系ファンドを後ろ盾にして、今、実現へ向けて動いている。
その新ツアー構想が浮上、いや再浮上してからのこの1年半ほどの間、ゴルフ界は揺れ動き、今年1月ごろには「PGAツアーから20名超が新ツアーへ移籍する」とまで言われてきた。だが、2月になると、世界のトッププレーヤーたちが次々にPGAツアーへの忠誠を誓い、「一体、誰が行くんだ?(誰も行かない)」とローリー・マキロイが強い語調で言い切るほど、新ツアーへの移籍予定者は見当たらない状況になった。
PGAツアーのジェイ・モナハン会長も「我々は前進し続ける」と、勝利宣言とも受け取れる声を上げ、騒動は小休止したかに見えた。
しかし、ノーマンは「これは終わりではない。これは始まりにすぎない」という文面をモナハン会長に送りつけ、そして3月16日(米国時間)、新ツアーの現時点での具体的内容を発表した。
【発表された内容とは?】
新ツアーの名称は、ノーマンがCEOを務めるサウジのリブ・ゴルフ・インベストメンツの名前から取って、「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」とされている。
今年6月から開始され、年間8試合。個人戦とチーム戦の双方が行なわれ、個人戦は48人、チーム戦は1組4名、全12組。予選カット無しの54ホール3日間大会となり、ショットガン形式で一斉にスタートするという。
賞金総額は255ミリオン(2億5500万ドル)。毎回、1試合の賞金総額は2000万ドルとなり、チーム戦のトップ3には、さらに500万ドルが分配される。7試合終了後、個人戦のトップ3には、さらに3000万ドルが分配される。
初戦はロンドンのセンチュリオンCC。米国内では、パンプキンリッジGC(オレゴン州)やトランプ・ナショナルGC(ニュージャージー州)、ジ・インターナショナル(マサチューセッツ州)など米国内の名門コースもその舞台とされている。
そして、8試合目となる最終戦は10月28日~30日。場所は未定だが、チーム戦のみとなり、総額5000万ドルが授けられる予定だそうだ。
【最終判断は選手とツアー】
豪華な舞台、豪華な賞金が用意されていることはわかった。だが、問題は「誰が行くか」「誰が出るか」である。
PGAツアーのモナハン会長は、新ツアーに参加した選手のPGAツアーのメンバーシップは「即停止。剥奪もありうる」と言い切っており、選手は二者択一を迫られることになる。
一方、ノーマンは「選手には戦うための広い選択肢や機会を与えるべき」という大義名分を掲げ、独占禁止法を持ち出して、PGAツアーとの訴訟も辞さない姿勢を見せている。
だが、現実として「誰も行かない」「誰も出ない」ツアーと化してしまったら、試合もツアーも成立せず、訴訟を起こす意味もなくなるだろう。
その一方で、欧米ゴルフ界には、さらなる動きも露呈している。
ノーマンの新ツアー構想とは異なる、もう1つの新ツアー構想、PGL(プレミア・ゴルフ・リーグ)が、マキロイら一部の選手に提案を送り、その内容が3月のアーノルド・パーマー招待やプレーヤーズ選手権の選手会ですでに検討されていたことがわかった。
ノーマンの新ツアーがPGAツアーに対抗する形になっているのに対し、PGLはPGAツアーや欧州ツアーのDPワールドツアーと「協調」することを呼びかけているという。
PGLも個人戦とチーム戦の双方を行ない、年間18試合、1試合の賞金は2000万ドルと高額だが、これらがPGAツアーやDPワールドツアーと合体して行なわれるのなら「悪くない?」と思われ、手を組むことが、PGLの狙いであろう。
PGLはPGAツアーと下部ツアーのコーンフェリー・ツアー、欧州のDPワールドツアーに総額1億ドルを投入することも予定しているそうだ。
目がくらむほどの大金がかかる話ばかり。最終的な判断はプレーヤーとPGAツアーに委ねられる。