初実戦で伊藤隼が3安打3打点!ルーキー小幡も初安打《阪神・安芸キャンプ》
きのう16日は安芸キャンプ初めての実戦、西武B班(ファーム)との練習試合が行われました。前日の雨でグラウンド状態がよくなかったため練習は安芸ドームとなったものの、天気の回復具合がよくシートノックはメイングラウンドで実施されています。なお、この日は阪神タイガースの藤原崇起オーナーと揚塩健治球団社長、そして安芸市の横山幾夫市長と高知県の門田登志和文化生活スポーツ部長が来られ、ウォーミングアップ前に安芸ドームでオーナーの訓示がありました。
その中で「みんなで競い合うことが力になる。その原点は目標。目標は大きくないといけない。どんな野球選手になりたいのか、大きな目標を持ってやってほしい。大きな花を咲かせられるように」という話をされています。そのあと、この日の“声出し”担当・岩田稔投手が挨拶。「ことし14年目、僕が入団してからリーグ優勝、日本一はありません」という言葉で始まり、それを達成するのが目標と話しました。そして「もう一つの目標があります」と続けた岩田投手。
「1型糖尿病に高校2年の時になって、苦しくて本当に野球ができないのではないかという思いがあり、その悔しさから大学に進んでプロの世界に飛び込むことができたんです。僕が苦しんでいる人たちの希望の星となるために、“やらなしゃあない精神”で頑張るので、よろしくお願いします!」。この言葉にオーナーや社長、チーム全員が大きな拍手でした。
鮮やかな先制攻撃に安芸が沸いた
さて試合は1回、2回と阪神が足を絡めて2点ずつを取り、そのまま終盤へ。投手陣は小刻みに交代しながらも無失点リレーを続けていたのですが、9回に石崎投手がつかまりました。それでも最後は1点差で逃げ切って、特別ルールで行われた9回裏に伊藤隼選手が追加点。5対3で勝っています。
《安芸キャンプ練習試合》
阪神-西武 2月16日
西武 000 000 003 = 3
阪神 220 000 001 = 5
※9回裏までの特別ルール
◆バッテリー
【阪神】岩田-岡本-谷川-歳内-福永-尾仲-石崎 / 片山‐小宮山(8回~)
【西武】平良(2回)-藤田(1回)‐松本直(1回)‐小石(1回)‐大石(1回)‐小川(1回)‐リャオ(2回)‐中塚(1回) / 斎藤誠
◆二塁打 阪神:伊藤隼2 西武:綱島
◆盗塁 阪神:荒木2、熊谷2
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)
1]中:荒木 (4-1-0 / 0-1 / 2 / 0)
2]二:熊谷 (5-1-1 / 0-0 / 2 / 0)
3]右:伊藤隼 (4-3-3 / 0-0 / 0 / 0)
4]左:陽川 (2-1-0 / 0-3 / 0 / 0)
5]一:山崎 (1-1-0 / 0-1 / 0 / 0)
〃打遊:小幡 (3-1-0 / 2-0 / 0 / 0)
6]指捕:小宮山 (5-0-0 / 3-0 / 0 / 0)
7]遊一:森越 (2-0-0 / 0-2 / 0 / 1)
8]捕指:片山 (4-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
9]三:藤谷 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 1)
◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ
岩田 2回 41球 (1-1-1 / 0-0) 140
岡本 1回 20球 (1-0-0 / 0-0) 140
谷川 1回 12球 (0-0-0 / 0-0) 141
歳内 1回 11球 (0-1-0 / 0-0) 141
福永 2回 26球 (1-0-2 / 0-0) 146
尾仲 1回 10球 (0-1-0 / 0-0) 144
石崎 1回 22球 (4-1-1 / 3-3) 146
<試合経過>※敬称略
先取点は阪神。1回の裏、四球を選んだ荒木が盗塁を決め、続く熊谷の左前打で二塁から生還しました。さらに熊谷も二盗成功、暴投で三塁へ進むと伊藤隼が中犠飛。1安打で2点を取っています!そのあと陽川と山崎が連打、2死後に森越の四球で満塁とするも、ここは追加点はなし。
しかし2回、先頭の藤谷が投手の送球エラーで出塁。荒木の投ゴロでまたエラーが発生して(ショートの捕球ミス)2人とも残ります。次の熊谷は二ゴロで二塁封殺となるも、熊谷の盗塁で1死二、三塁として伊藤隼が左前タイムリー。伊藤隼は盗塁失敗で2死となったあと、陽川がライトへ大きな当たり!ポールの内か外か…という打球を見守っていた陽川は、一塁塁審の手が回ったため走り出したものの、三塁の手前当たりで歩を緩めます。審判団が集まって協議した結果、ファウルの判定に。スタンドは溜め息でした。
打ち直しの陽川はさらにファウルで粘り、9球目が暴投となって熊谷を還すと、次で四球を選びます。山崎も四球で出ますが、この回も2点で終了。2回を終わって4対0とリードを広げた阪神です。その後は、4回に2死から伊藤隼が右越え二塁打を放つも無得点。7回は2死から陽川が四球を選び、途中出場の小幡はショート内野安打で続きましたが、やはり得点なし。8回は森越の1四球のみとリリーフ陣に抑えられます。
一方の投手陣は、岩田が先頭を森越の捕球エラーで出し、2死後に4番・岡田のヒット(詰まった当たりが左前に落ちた)を許しますが無失点。2回も先頭を今度は藤田の捕球エラーで出して2死後に四球を与えたものの、最後は見逃し三振で予定の2イニングを0点に抑えました。
3回の岡本はいきなり2番・綱島に右翼線二塁打を浴びます。しかし後続は内野ゴロ3つで断って、4回の谷川、5回の歳内はともに三者凡退でピシャリ!ついで福永が登板して、6回は1死から連続四球を与えましたが失点せず、7回は2死から1番の西川にレフトとショートの間にポトリと落ちるヒットを打たれただけ。最後はルーキーの小幡が難なく遊ゴロを処理して無失点です。
8回から小宮山がマスクをかぶって、この回は尾仲が登板。1奪三振の三者凡退でした。4対0で迎えた9回は石崎。先頭から連打を浴びて、1つ三振を奪ったのですが9番の斉藤誠にストレートの四球を与え、1死満塁とします。次の西川に左前タイムリー、さらに綱島にも左前タイムリーを許して2人を還し、これで1点差!なおも1死一、二塁と逆転のピンチで、3番・戸川は二ゴロ併殺打。何とか逃げ切りました。
特別ルールで行われた9回裏、先頭の荒木が右前打を放ち、二盗成功。熊谷は三ゴロで1死二塁、続く伊藤隼が右中間へのタイムリー二塁打!陽川が3つ目の四球を選んで1死一、二塁とするも、小幡と小宮山は連続三振で試合終了です。
ゲームは一番の練習と平田監督
藤原オーナーは「みんなハツラツとしていてよかった。何より勝ったのがよかった。どんな試合でも勝たないと。最後はヒヤヒヤしましたけどね」と話して帰途に。なお朝の訓辞については「1つ1つの結果で一喜一憂せん方がいい。大きな目標を持って、ということ」だったそうです。
では平田勝男監督の談話をご紹介しましょう。「朝の声出しで岩田が決意を述べて、やっぱりオーナーの前でアピールしたいという気合いが入っていたと思うよ」。どんな試合でも勝たないと、とオーナーがおっしゃっていました。「やるからには負けるのは嫌いなので、勝つぞと言ったけど、選手はみんな持ち味を出してくれた。意気込みを感じるので、これから試合に出たり出られなかったりするけど、今の気持ちを続けてほしいね」
試合を振り返って「荒木にしても熊谷にしても、出たら常に盗塁を狙うというね。隼太はこれくらいやって格の違いを見せてくれんと。そうはいっても、3本は打てないもんだよ。結果は宜野座へ報告が行くから。隼太や陽川が格の違いを見せてくれた」と納得の表情です。
熊谷選手も初回にタイムリー、そして盗塁も決めましたね。「去年は宜野座へ行って、今年は安芸スタート。その意味がわかるか?って話をした。何くそ!という気持ちでやらんと。木浪や小幡、内野手が2人も入ってきたし。きょうもいいプレーをしていた。小幡にも声をかけてくれたりね」
その小幡選手については「ゴロを捕ってピュッと投げて。練習よりゲームに入った方が雰囲気はあるね。ヒット1本出てどうかって?そりゃあ違うよ。練習試合だって気持ちが違うもんだよ」と監督自身も楽しそうでした。
また「片山はヒットが出なかったけど、バッティングでも積極的に振っていた。この辺はまだ結果じゃないんでね。荒木や伊藤隼、陽川、熊谷とは違って。小幡や片山は練習でやっていることを少しでも出してくれれば。凡打でどうこうはない。元気を出してやっていたよ。また使いたいと思わせてくれたら。藤谷にしても、エラーのあと必死で飛びついたり。必死さを出してこなきゃ。育成の子は特に。それを感じるやん。藤谷も片山も。次の試合も使いたくなるよ」と平田監督。
最後に「ゲームに入ってくると、いいよね。いろんな課題や性格が見えてくる。一番の練習だよ。いい緊張感があるね。きのうも8時間しか寝てないもん(笑)。ワクワクするね。ランナーが出たらどうするのかな?どういうバッティングするのかな?ってね」と笑顔の締め。なお俊介選手だけ出なかったのは「若い子を出したいから、ちょっと我慢してくれるかと言った」とのことでした。
実戦モードで見つかった課題
選手のコメントは、まず陽川尚将選手です。初戦で1本出て「あとはボールの見極めだったり、そういうところ」だと言います。とはいえ3四球ですからね。「2打席目(10球目で四球)が一番よかった。しっかり粘って。収穫のある打席だったと思います」。生きたボールへの対応という段階?「そうですね。きょうは真っすぐのファウルが多かったので、あす以降そういうところを修正していきたい」。ちなみに幻のホームランは「切れたのが見えたんでファウルやと思っていたら、審判が手を回してビックリ(笑)」だったようです。
次に、ベンチからもライトの守備位置からも大きな声が聞こえた伊藤隼太選手。打っては3安打3打点ですね。「結果が出るに越したことはないんですけど、今の時期によすぎても…と思います。結果としていいスイングができているので、今の時期として悪くはないかなと。“いい”とは言えないですが」。そして「この時期に打ったからどうとか、ないですね。それよりも捉えきれなかった打席を反省して、そっちにフォーカスしたいですね」とのこと。
熊谷敬宥選手は先制タイムリーと2盗塁でした。「1試合目の1打席目で出たのはよかったですけど、そのあとの打席が…。でも盗塁は自分のタイミングでいけました。今、スタートをいろいろ試している最中です。1つ1つ試していきたい」。平田監督が「何くそ!」のススメを。「監督から『ここにいる人は、そういう気持ちを持たないとダメだ』と言われました。二遊間の競争も激しいし、頑張ります」
「勝って嬉しかった!」とルーキー
ルーキー・小幡竜平選手は2打席目で内野安打。セーフになった瞬間、ベンチから大きな歓声と拍手がありました。「もう~嬉しかったです!」。聞こえていた?「はいっ、聞こえました」。初ゲーム、前半はベンチだったけど、大きな声を出していたようで。「プロになって初めての試合で、緊張はしなかったんですけど、どういう流れか探りながら。熊谷さんや横田さんに聞きながら見ていました」
代打での出場については「あまり緊張しなかった。シッカリ振ることだけ考えて打席に入った」そうです。「途中からいくというのは聞いていて、試合中に『代打あるから準備しとけよ』と」。ベンチ横で素振りを始めた頃ですね。それで4回はネクストバッターズサークルに入ったけど、回って来なかった。「はい」。5回の先頭で代打出場となっています。
そして初ヒットが内野安打。「もう、思いきり走りました(笑)」。初球打ちでしょう?「ファーストストライクを絶対に振ってやろうと思っていた。シート打撃とかでも、ファーストストライクにしっかり準備しとけと言われていたので」。守備は打球が飛んでも落ち着いて普通に処理していたように思います。「守備位置について言われていることがあって。バッターを見ながら位置を変えるとか。考えながらやっていきます」。試合に勝つのはやっぱり嬉しい?と聞いたら「はいっ!嬉しかったあ~」と18歳らしい笑顔でした。
松井稼頭央監督の談話もどうぞ
実は西武の松井稼頭央2軍監督も、この日が初采配だったんですね。その感想を聞かれ「僕も楽しみにしていました。対外試合で、これだけのファンの方の前でやるとなるとまた緊張感も違ってきますし、同じチームの紅白戦ではなく、違うチームだからこそ、収穫プラス反省も出た」と話しています。
収穫は?「全体的にミスが出ても、打つ方で取り返す。また最後まであきらめない。内容的には非常によかったんじゃないかなと思います」。反省、課題は?「練習してそれを次につなげていく。ミスしたら反復して練習したらいいし、恐れないで積極的にやろうと言っているので、その代わりミスしても前を向いてやろうと伝えている。それが、きょうは出てくれた」
指揮を執るのは難しい?「そこまで采配は振るっていない。きょうは選手がどう動くのか、どういうことを思ってやるのか、で」。相手チームで印象に残った選手は?「岩田くんにしても、うまい投球といいますか、うまく打者をかわしてましたし。伊藤(隼)くんにしても陽川くんにしても、ルーキーの小幡くんも楽しみ」。選手と監督としての対外試合は違う?「違いますね。試合の状況を常に把握していないといけないですし」
もと阪神の平尾博司守備走塁コーチに挨拶ができなかったので、20日の練習試合(高知東部)が無事にできるよう祈っています。
<掲載写真は筆者撮影>