アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎の有病率と肥満の関係 - コロナ禍前後の変化とは?
【肥満とアレルギー性疾患の関連性 - 韓国の大規模調査から見えてきたこと】
今回は、肥満とアレルギー性疾患の関連性について、韓国で行われた大規模な調査の結果をもとにお話ししたいと思います。
韓国では、2005年から2021年にかけて、11万8275人を対象に、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎の有病率を調査しました。その結果、肥満者におけるこれらのアレルギー性疾患の有病率が、全体的に上昇傾向にあることが明らかになりました。
特に注目すべきは、年齢によって傾向が異なる点です。コロナ禍以前のデータを見ると、39歳以下では喘息とアトピー性皮膚炎の有病率が増加傾向にあったのに対し、40歳以上では減少傾向にありました。一方、アレルギー性鼻炎は全年齢層で増加傾向が見られました。
コロナ禍の影響について分析したところ、喘息とアトピー性皮膚炎の有病率に大きな変化は見られませんでしたが、アレルギー性鼻炎は40〜59歳で増加傾向が続いていました。
この調査結果は、肥満とアレルギー性疾患の関連性を示唆するものであり、特に若年層での喘息やアトピー性皮膚炎の増加は、肥満が引き金となっている可能性があります。肥満は慢性的な炎症状態を引き起こすため、アレルギー反応を悪化させる要因となり得るのです。
【コロナ禍による影響 - マスク着用と社会的距離の効果】
興味深いことに、コロナ禍におけるアレルギー性疾患の有病率に大きな変化が見られなかったのは、マスク着用や社会的距離の確保といった感染予防対策が、アレルゲンや微生物への曝露を減らしたためかもしれません。
また、コロナ禍では感染への不安から医療機関の受診を控える人が多かったことも、アレルギー性疾患の診断数の減少につながった可能性があります。
日本でも、コロナ禍以降にマスク着用が広く浸透したことで、花粉症などのアレルギー性疾患の症状が軽減したという報告があります。マスクは、アレルゲンの吸入を防ぐだけでなく、皮膚への直接的な刺激も軽減する効果がありそうです。
【アレルギー性皮膚疾患と肥満の関係 - 早期の予防と管理が重要】
今回の調査で、アトピー性皮膚炎と肥満の関連性が示唆されたことは、皮膚科医として非常に興味深い結果です。肥満は、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させる要因の一つと考えられています。
肥満は、皮膚のバリア機能を低下させ、炎症を引き起こすサイトカインの産生を増加させます。これにより、皮膚の乾燥やかゆみ、炎症が悪化し、アトピー性皮膚炎の症状が重症化します。
したがって、肥満を予防し、適切な体重管理を行うことは、アトピー性皮膚炎をコントロールする上で重要な要素となります。特に、若年層では肥満とアトピー性皮膚炎の関連性が強いことから、早期からの予防と管理が求められます。
具体的には、バランスの取れた食事と適度な運動による体重管理、保湿剤の使用や刺激の少ないスキンケアによる皮膚バリア機能の維持、ストレス管理などが挙げられます。アトピー性皮膚炎の治療では、必要に応じて抗炎症作用のある外用薬や内服薬が処方されることもあります。
肥満とアレルギー性疾患の関連性は、今後さらなる研究が必要な分野ですが、この調査結果は、肥満がアレルギー性疾患、特に皮膚疾患に与える影響の大きさを示唆しています。皮膚の健康を維持するためにも、早期からの肥満予防と管理が重要だと言えるでしょう。
参考文献:
- Son, Y., Park, J., Choi, Y., Kim, H., Kang, J., Smith, L., Yoon, K. S., Woo, S., & Yon, D. K. (2024). National trends of allergic diseases and pandemic–related factors among individuals with obesity in South Korea: A nationwide representative serial study, 2005–2021. Heliyon, 10(1), e29921. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e29921