金正恩の様子が変だ…「焦り」が「暴走」につながる恐れ
金正恩党委員長の様子がおかしい。北朝鮮国営の朝鮮中央通信は27日、金正恩氏が妙香山(ミョヒャンサン)医療器具工場を現地指導したと伝えた。金正恩氏は、同工場について一定の評価をしつつ、「一部の欠陥もある」とし、「一部建物の外壁タイル面の平坦度がよく保障されず、継ぎ目も合っていない、ある部分は壁塗りの面も均等でない」と、不満を述べた。
金正恩氏は現地指導でたびたび不満を述べたり、時には怒りを露わにしたりする。3年前にスッポン養殖工場をした際、管理不備に激怒。支配人を銃殺させ、その視察時の動画をテレビで放映させたことがある。ただ、今回の現地指導では肯定的な評価をしている部分もあり、大事には至らないかもしれない。
父親を批判
気になるのは、金正恩氏が現地指導で2回連続して不満を述べていることである。朝鮮中央通信は24日に、金正恩氏が金剛山観光地区を現地指導したことを報じた。今回の現地指導と合わせて日時は不明だが、数日前と思われる。
金剛山観光地区の現地指導で金正恩氏は、「見ただけでも気分が悪くなるごたごたした南側(韓国)の施設」と韓国側が建設した施設を罵倒し、撤去まで指示した。金剛山観光事業を南北和解の象徴にしたい韓国の文在寅大統領に対して冷や水を浴びせた形だ。
さらに、金正恩氏は「容易く観光地を明け渡して何もせず利を得ようとした先任者らの間違った政策」「政策的指導を担当した党中央委員会の当該部署が金剛山観光地区の敷地をむやみに明け渡し(後略)」などと述べた。金剛山観光事業は、故・金正日総書記と金大中元韓国大統領との間で合意されたものだ。「先任者」「党中央委員会の当該部署」などと表現しているが、父である金正日氏の過去の政策を批判したわけで、北朝鮮の最高指導者としては異例の発言と言える。
(参考記事:愛人女優を「ズタズタにして処刑」した父親への金正恩の反感)
金正恩氏が医療工場を現地指導した同じ日には、金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長が、米国に対して対北政策の転換を求める談話を発表した。
金正恩氏はこの数日のうちに、父の時代の政策を否定しながら韓国を罵倒し、米国に対して不満をぶつけた。米朝関係、南北関係が膠着状態に入りそうな雰囲気を見せるなか、金正恩氏は相当、苛立ちを募らせているようだ。この状態を打開できなければ、金正恩氏はまたもや北朝鮮国内で、恐怖政治の暴走を始めるかもしれない。