「高齢世帯ほどお金持ち」の実態を探る(2014年)
中堅で増える負債、定年退職で増える貯蓄
世代間格差の象徴の一つに挙げられるのが、貯蓄額の違い。貯蓄が多ければ多いほど生活にゆとりが出るのは言うまでも無く、普段の収入にも余裕があることの裏付けになる。その実態を内閣府の調査・資料集約による定点公開の報告書「高齢社会白書」の最新版から確認していく。
歳を経ている人ほど働いている(いた)累計時間は長くなり、貯蓄する「機会」も多くなる。世帯主の年齢で区切った上で、各世代ごとの貯蓄額を見ても、貯蓄は世代が上になるほど増えていく。
20代以降40代にかけて負債が増えるのは住宅ローンの負担によるもの。同じ時期に増加する「持家率」も、その裏付けとなる。50代に入ればローン完済組が増えるために全体平均としての負債額は減り、さらに年収も増えるため、金銭的なプレッシャーは減少する。
60代になると定年退職組が出てくるため年収は減るが、退職金などの上乗せで貯蓄額は急激に増加する。持ち家率も9割を超え、家賃による家計への負担も極少化。単純な貯蓄額の差異に加え、持家率の高さが、高齢層の金銭的余裕を表すことになる。
高齢層は高貯蓄者が多い
全般的には高齢世帯ほど金銭的に余裕があるようだ。しかしこれは全体平均としての値。実際には多種多様な世帯が存在する。そこで「全世帯」、そして「世帯主65歳以上に限定した世帯母体」(=原則的に定年退職後の世帯主がいる世帯)それぞれで、貯蓄の現在高分布を記したのが次のグラフ。
高齢世帯を母体とする分布では「4000万円以上」世帯の比率が高い。これは退職金による上乗せによるもの。面グラフにすると、高齢世帯母体で貯蓄額が多い世帯が、全体よりも多い傾向にあることがはっきりとわかる。具体的には1000万円以上で「全世帯」と「65歳以上世帯」の値の大小が逆転し、2000万円を超えた時点で差が一段と大きくなっていく。
貯蓄を削って日々を暮らす高齢者
高齢層は若年層・中堅層と比べて平均的な貯蓄額だけでなく、高額貯蓄層の率が高い。これは「経年蓄積」によるものであり、同時に年金だけでは不足する生活費のための切り崩し用の資財である。
また公的年金や恩給を需給している高齢者世帯では、その多くで収入源が公的年金のみとなっている。そのため、事前の備えが前提となる世帯も多い。
一方、若年層の貯蓄が少なく、金銭的に余裕が無いのもまた事実。特に40代まではローンもかさみ、家賃負担も大きい。その上可処分所得の漸減などもあり、40代までは貯蓄性向が高まりつつあるとの調査結果も別調査で見出すことが出来る。
お金周りに関するアプローチにおいては、各世代の事情への現状の確認、それに基づいた十分な配慮が求められる。各世代のお財布事情、将来に向けた金銭感覚は「数十年前」と「現在」では大きく異なることに留意しなければいけない。
特に中堅層以降、団塊の世代が、自分達の当時の感覚で現在の若年層のことを語る、想定する事例が増えており、十分以上の留意が必要になる。今と昔は事情が異なる。無い袖は振れないものである。
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