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「デング熱」が大流行!?虫除け成分「ディート」と「イカリジン」の違いとは?

TOUYA化学系研究者

 蚊が媒介する感染症「デング熱」が世界で大流行し、今年の患者数が1000万人を超え、過去最悪の2023年を大きく上回ったとの報道がありました。(毎日新聞 デング熱、過去最悪の大流行 日本でも「輸入症例」が2.8倍に

 日本では2014年と2019年に感染が確認されています。デング熱には国内で使用できるワクチンや治療薬がないため、政府は、蚊に刺されない対策(虫除け剤の使用など)と蚊を発生させない対策をするよう呼びかけています。(政府広報オンライン 「デング熱」にご注意を! 予防策は「蚊に刺されない」「蚊を発生させない」

 虫除け剤の有効成分として「ディート」と「イカリジン」が広く知られていますが、それぞれ特徴と効果の違いがあります。適切な虫除け剤を選ぶために、これら二つの成分の違いを理解しましょう。

ディート(DEET)

 ディートは虫除け剤の中でも最もポピュラーな成分で、1957年から使用されています。蚊、ブユ(ブヨ)、アブ、マダニはもちろんのこと、トコジラミ(ナンキンムシ)、ヤマビル、ノミ、ツツガムシなど多くの害虫に効果を発揮します。しかし、ディートはプラスチックや合成繊維を溶かすことがあるため、衣服や時計、アウトドアギアには使用の際に注意が必要です。
 また、6カ月未満の乳児は使用しない、2歳未満は1日1回まで、2歳以上12歳未満は1日3回まで、顔には使用しない、という12歳未満の子どもには使用制限があり、敏感肌の方や小さなお子様には刺激が強いと感じられることもあります。

イカリジン(Picaridin)

 日本では2015年に虫よけ成分として承認された比較的新しい成分で、ディートに比べて肌への刺激が少なく、安全性が高いとされています。蚊、ブユ(ブヨ)、アブ、マダニなどに効果的です。イカリジンはプラスチックや合成繊維を傷めることがなく、使用感もさらっとしています。 年齢制限や使用回数制限がないので、小さなお子様でも使用できます。

 蚊は人や動物の体温や呼気を感知して近づきますが、全ての蚊が吸血を開始するわけではありません。蚊は皮膚に針を出し入れして血管を探し、血液の味を確認して吸血するかどうかを決定します。吸血を促進する物質として、血液中のアデノシン三リン酸(ATP)が知られています。

 そして、多くの蚊は満腹になる(腹部が膨満する)前に吸血を停止します。吸血を停止させるシグナルは分かっていませんでしたが、理化学研究所と東京慈恵会医科大学の研究チームは、哺乳類の血液中に存在するフィブリノペプチドAがネッタイシマカの吸血停止シグナルであることを発見しました。(参考:理化学研究所 蚊は腹八分目を知る~吸血停止シグナルの発見~

まとめ:「デング熱」が大流行!?虫除け成分「ディート」と「イカリジン」の違いとは?

 ディートとイカリジンは、どちらも高い虫除け効果を持ちますが、使用するシーンや個人の肌質によって選ぶべき製品が異なります。肌への優しさを重視するならイカリジン、最強の効果を求めるならディートを選ぶと良いでしょう。どちらも、塗りムラがないよう、手のひらで塗り広げることが大切です。ディート製品とイカリジン製品のおすすめ商品については、私のブログ「虫除け有効成分ディートとイカリジンの違いは?おすすめの虫除けグッズは何?」をご覧ください!

化学系研究者

東京工業大学大学院の修士課程を卒業後、化学メーカーの研究者として従事。研究成果がメディアに取り上げられた経験有り。科学やAIを活用したお役立ち情報を書いていきます!

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