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新監督のもとでさらに輝く5人のJリーガー

河治良幸スポーツジャーナリスト
倉田秋(写真:フォトレイド/アフロ)

2022年のJリーグは2月に開幕します。移籍組や期待の若手、カタールW杯をかけた国内組の奮起など、個人にフォーカスしても色んな楽しみ方がありますが、今回は趣向を変えて、新監督のもとでブレイクする選手を筆者の視点で選びました。

もちろん蓋を開けてみなければ分かりませんが、監督のスタイルと選手の特長を掛け合わせて”化学反応”が楽しみな選手を今回はJ1から5人チョイスしています。継続路線のクラブのサポーターは気軽に”傍観”してください。

倉田秋(ガンバ大阪)/片野坂知宏監督

高度なテクニックやセンスに定評のある選手ですが、あらゆる面にハードワークするので、決定的な仕事が求められるところで消耗していたり、勝負所で彼が本来いるべきところにいないことも多くありました。しかし、片野坂知宏監督のチームでキャプテンを任される新シーズン、運動量の使い方に少なからず変化が起きそうです。

状況に応じたポジションが明確になり、周りとの関係も整理されると予想される中で、宇佐美貴史ら個性的な選手たちと”カタノサッカー”をどう実現して行くのか。戦術的なキーマンであるとともに、多くのゴールとアシストに絡む決定的な仕事も期待されます。

安部柊斗(FC東京)/アルベル・プッチ・オルトネダ監督

新潟を率いていたアルベル監督のもとで、キャンプからすでに安部の意識転換しは進行しているようです。”ポジショナルプレー”は戦術ではなくベースの概念ですが、アルベル監督はボールを保持することをポゼッションではなく、ポジショナルと呼ぶように伝えているそう。「ボールを女性のように愛しなさいと言われている」と語っていました。

写真定常/FC東京
写真定常/FC東京

そこからどうボールを持っている選手、持っていない選手が関わってゴールに結び付けるか。非凡な機動力で、前監督のもとでも重用された安部ですが、そこに立ち位置のビジョンが加わることで、運動量がさらに効果的に発揮されて行く期待があります。言い換えると、そこでフィットできなければ若手を含む別の選手に主力を奪われる可能性もあるので、前向きにも厳しさを持ってトライして欲しいものです。

土居聖真(鹿島アントラーズ)/レネ・ヴァイラー監督

すでにJリーグでの実績はある選手ですが、チームの中心としてタイトルに導き、本当にJリーグアウォーズでベスト11やMVP候補にまでなってくるには、もう一皮むける必要があります。本人の希望がかない、鹿島のキャプテンに就任した新シーズンに向けて、どう自分を進化させて行くのか。

写真提供/鹿島アントラーズ
写真提供/鹿島アントラーズ

キャンプでは岩政大樹コーチの指導で気付きを得ていると言いますが、未だ来日していないレネ・ヴァイラー新監督は組織的なボール奪取から縦に速い攻撃を志向する監督であり、相馬前監督から180度転換される訳ではありませんが、より連動性の中に位置的優位のビジョンが加わるはず。そこに土居のセンスがどうミックスされて行くのか。新時代の鹿島のキャプテン像とともに楽しみです。

松本昌也(ジュビロ磐田)/伊藤彰監督

J2優勝を果たした磐田で左サイドから柔軟な攻撃参加で、遠藤保仁を軸とした創造的なサッカーに彩りを加えていたのが松本です。そこに伊藤彰新監督が全体の設計図を明確に提示して、位置的優位を奪いに行くサッカーを植え付けることで、さらに戦術的なキーマンとして重要性を増しそうです。可変性の高い3バックで、左ウイングバックにありながらインサイドのプレーも増えそうです。

筆者撮影
筆者撮影

南野拓実と同じ1995年1月生まれの松本はアンダーカテゴリーの代表選手として、多くの国際舞台を踏むなど、期待されてヤングタレントでした。そこから大分ではJ3降格、飛躍を誓った磐田でも主力に定着したシーズンにJ2降格を経験しました。3年ぶりに戻ってきたJ1の舞台。キャリアを大きく左右しうるシーズンで影響力のあるプレーをどれだけ示せるか注目です。

中野伸哉(サガン鳥栖)/川井健太監督

昨年はJ1史上最年少の開幕スタメンや飛び級でのU−24日本代表入りなど話題を集めましたが、大畑歩夢の同じ左サイドでの台頭などもあり、途中出場やリベロも経験するなど、激動のシーズンとなりました。川井健太新監督になってベースとして引き継がれる部分もありますが、相手より自分たちからアクションを起こして、思考を奪にに行くスタイルが中野の成長力をさらに引き出しそうです。

筆者撮影
筆者撮影

ボールを握りながら人もボールも動いて行く中で、連続性の高いプレーを得意とする中野のスペシャリティも発揮しやすくなる。主力だった選手の大半が移籍したことで不安の声も大きい鳥栖ですが、浦和に移籍した大畑を除けばポテンシャルの高い若手が多くのこり、そこに小野裕二や藤田直之など経験豊富な選手の復帰、さらに垣田裕暉、西川潤など楽しみなタレントがミックスされています。それでもパリ五輪にも期待のかかる中野のさらなる輝きこそが躍進の鍵でしょう。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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