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NASAの探査機が太陽大気に突入!驚くべき新事実とは

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「太陽大気に突入したパーカーソーラープローブ」というテーマで動画をお送りしていきます。

2021年4月28日、NASAが打ち上げた太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が初めて太陽のコロナに到達しました。

コロナは太陽表面の上空を覆う大気層で、皆既日食のときに見たことがある方もいるでしょう。

Credit: NASA/Johns Hopkins APL
Credit: NASA/Johns Hopkins APL

パーカー・ソーラー・プローブは、超高温で過酷な環境を耐えながら太陽探査の任務を遂行しています。

太陽に最接近した探査機は、私たち人類にどのような新しい発見をもたらしてくれるのでしょうか?

太陽コロナに突入した探査機

Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben
Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben

2018年8月12日、NASAは太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ(以下パーカー)」を打ち上げました。

パーカーの宇宙旅行は7年間の予定で、近日点において26回にわたり、太陽に接近する予定です。

2021年4月にパーカーが太陽コロナに到達したのは、8回目の近日点到達のことです。

このとき、太陽磁場の変動を観測したり粒子の採取をしたり、探査活動を行っています。

パーカーは合計26回にも及ぶ近日点通過の中で、金星のスイングバイを利用しながら、太陽との距離を縮めていき、太陽半径10個分の距離まで接近する予定です。

最接近時では、太陽に最も近い惑星、水星の軌道よりも遥かに内側を通ります。

水星は最高温度が400度以上に到達するような灼熱の惑星です。

パーカーには水星よりも過酷な環境を耐え抜く性能が求められます。

この灼熱地獄に耐えられるよう、パーカーは約1400度に耐えられる耐熱シールドによって正面が保護されています。

また、太陽からの距離によって光の強さも大きく変動するため、太陽電池アレイの工夫も施されています。

太陽最接近時においては、地球周回時の約475倍強い太陽からのエネルギーに耐える必要があります。

Credit: NASA/Johns Hopkins APL
Credit: NASA/Johns Hopkins APL

激しい光量の変動を克服するため、パーカーに搭載された太陽電池アレイは太陽との距離に応じて、伸縮するよう設計されています。

これにより、適切な電力レベルを保てるのです。

太陽を間近で観察することで、コロナが太陽表面の300倍以上の温度を持つ理由や、太陽風のメカニズムが解明されるかもしれません。

実際、8回目の近日点通過で太陽の謎について、少しずつ手がかりが集まり始めています。

太陽大気の境界「アルヴェン境界面」

太陽には、はっきりとした表面は存在しません。

太陽は周囲を超高温の大気によって覆われており、強大な重力と磁場によって大気を太陽表面に引きつけています。

しかし、太陽からある程度離れた位置になると、太陽の重力や磁力の影響が弱まり、太陽大気が太陽風として宇宙空間へと飛び出すようになるのです。

太陽大気と太陽風の境目を、アルヴェン境界面と言います。

Credit:JAXA
Credit:JAXA

これまで、アルヴェン境界面の位置はコロナを観測した画像によって推測されていました。

その推測によれば、アルヴェン境界面は太陽表面から10~20太陽半径の位置にあるとされています。

しかし、正確な位置については分かっていませんでした。

Credit: NASA/Johns Hopkins APL
Credit: NASA/Johns Hopkins APL

そんな中、太陽探査機パーカーは2021年4月28日、8回目の近日点に到達した際に、太陽表面から18.8太陽半径の位置において、磁気と粒子が特定の条件を満たしている様子を検出しました。

これは、パーカーがアルヴェン境界面を通過したことを示していると言います。

このとき、人類は初めて太陽大気の内側に探査機を送り込むことに成功しました。

また、今回の近日点通過で、パーカーはアルヴェン境界面の外側と内側を何度も行き来していたことが確認されています。

単純な公転軌道を持つパーカーが何度もアルヴェン境界面の外部と内部を行き来していたということは、アルヴェン境界面はしわくちゃで凸凹した形状をしていることを示しています。

これまで、アルヴェン境界面の位置は正確に観測されていませんでした。今回の観測により、アルヴェン境界面の太陽からの距離と形状を知る手がかりを得たのは、大きな進歩だと言えるでしょう。

ジグザグの磁気構造「スイッチバック」

Credits: NASA's Goddard Space Flight Center/Conceptual Image Lab/Adriana Manrique Gutierrez
Credits: NASA's Goddard Space Flight Center/Conceptual Image Lab/Adriana Manrique Gutierrez

さらに、パーカーはアルヴェン境界面の謎に加え、太陽の磁気にまつわる新しい手がかりも観測しています。

太陽風の磁場は直線的ではなく、Z型のねじれの構造を持っていることが知られています。

この現象を「スイッチバック」といい、どこでどのように形成されるものなのか、現在のところ解明されていません。

スイッチバックという現象については、1990年代から知られており、2019年にパーカーが初観測を果たしました。

その結果、スイッチバックは珍しい現象ではなく、比較的よく見られる現象であることが明らかになりました。

パーカーの観測によるとスイッチバックは太陽表面付近から発生している可能性があるようです。

今回の観測データはこれまでにいくつかの理論で予想されていたこととも一致し、太陽風の発生源を特定することにもつながります。

スイッチバックが形成されるメカニズムについては、まだ詳しいことは分かっていません。

それでも、スイッチバックの発生源の手がかりが解明できたのは、大きな進歩だと言えます。

Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben
Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben

2021年12月現在、パーカーが近日点を通過した回数は10回です。

残すところは16回で、この先さらに太陽との距離を縮める予定です。

太陽をこれまでにはない近さで観測することは、太陽の謎を解明する大きな手がかりをつかむきっかけになるでしょう。

私たち人類を含めた地球上の生物が生命活動を営むためには、太陽の存在は必要不可欠です。

その太陽についてもっと詳しく知ることは、人類の挑戦とも言えるでしょう。

パーカーは人類の期待を背負って現在も宇宙空間を漂っています。

次回の近日点通過は2022年1月になる予定で、再びコロナ内を通過する可能性があります。

パーカーの太陽探査の旅は2025年まで続くため、まだ先は長いです。

それまでに太陽についての新発見が次々と報告されることに期待です。

https://www.sciencealert.com/for-the-first-time-in-history-a-spacecraft-has-touched-the-sun
https://svs.gsfc.nasa.gov/14045
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2021/switchbacks-science-explaining-parker-solar-probe-s-magnetic-puzzle

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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