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SNSを書かないお盆の国内旅行事情。飛行機利用の「withコロナ」の新たな旅スタイルが始まった

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
お盆初日(8月8日)の羽田空港第2ターミナル。一定の活気が戻っていた(筆者撮影)

 8月8日の土曜日から本格的なお盆がスタートした。しかしながら、お盆初日の羽田空港は大きな混雑が見られなかったが、ほとんど人がいなかった緊急事態宣言中だったゴールデンウィーク期間とは異なり、安全に気をつけながら空港を利用する人で一定の賑わいがあった。

SNSでの発信も含め、「withコロナ」時代の新しい旅のスタイルが動き始めたことを感じる夏休みになっている。

6月頃から夏休み期間の予約が順調に入っていたが・・

 今年のお盆期間は、緊急事態宣言が終了した翌月の6月頃から徐々に夏休み期間の旅行や帰省などで国内線の飛行機の予約が入り始めた。そのような状況から緊急事態宣言中だったゴールデンウィーク中はANAは約15%、JALも20%程度の運航率となっていたが、お盆期間中においては、ANAは約86%(8月7日~17日※8月6日時点)、JALは約83%(8月1日~17日※7月30日時点)の運航率となり、海外旅行は入国制限の影響で無理であっても、国内旅行は昨年の7~8割程度まで回復するのではないかという期待もあった。

羽田空港第3ターミナル(旧国際線ターミナル)は、国際線のほとんどが運休継続しておりターミナル内も閑散としている(8月8日、筆者撮影)
羽田空港第3ターミナル(旧国際線ターミナル)は、国際線のほとんどが運休継続しておりターミナル内も閑散としている(8月8日、筆者撮影)

 しかしながら7月に入ってから東京の新型コロナウイルスの感染者数が拡大し、その後全国的に感染者数が拡大したことで、7月前半から予約の勢いが鈍化し、逆にキャンセルする人も目立つようになってきた。更に政府が前倒しして7月22日から開始したGo Toキャンペーンがスタートしたが、感染者数の多い東京都発着の旅行は除外されたことによるキャンセル、更には8月1日に緊急事態宣言が発令された沖縄方面へのキャンセルが急増することになった。運賃においても、例年に比べて下落傾向となっている。

利用者は半分程度でも羽田空港には一定の活気があった

 筆者はお盆初日の8月8日(土)の午前中に羽田空港で取材をしていたが、まず感じたことは、ゴールデンウィーク初日の4月29日に同様の時間帯に取材をした際には利用客は皆無だったが、今回8月8日は羽田空港内は混雑はしていないが、ターミナル内には一定の活気があった。

ANAが発着する羽田空港第2ターミナル。混雑はしていないが、ターミナルに活気が戻ってきた(8月8日、筆者撮影)
ANAが発着する羽田空港第2ターミナル。混雑はしていないが、ターミナルに活気が戻ってきた(8月8日、筆者撮影)
緊急事態宣言中のゴールデンウィーク初日(4月29日)の羽田空港第2ターミナル(筆者撮影)
緊急事態宣言中のゴールデンウィーク初日(4月29日)の羽田空港第2ターミナル(筆者撮影)

お盆期間の予約は約6割減。95%以上減のGWに比べると回復傾向

 7月31日に航空各社が発表したお盆期間中(8月7日~16日)の予約状況によると、ANAでは前年比64.8%減、JALでも前年比61.2%減となっていることから見ても、利用者は半分弱といったところだ。ちなみにゴールデンウィークの実績ベースで見ると(5月8日発表、4月29日~5月6日の利用実績)、ANAでは前年比96.5%減(4万5228人)、JALでも前年比95.1%減(4万7646人)だった。

 この数字からだけでも、お盆期間中はゴールデンウィーク期間中に比べると半分弱の利用者とはいえ、一定数の国内移動の動きがあることがわかる。8月8日に羽田空港で取材をしていた際にも大きなスーツケースを持った家族連れをはじめ、旅行へ出かける姿も多く見られた。実際に飛行機を利用した人に話を聞くと、半分~7割程度の搭乗率だったとの声が聞こえた。

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ANA・JALともに普通席で満席になっている便はなかった(8月8日、筆者撮影)
ANA・JALともに普通席で満席になっている便はなかった(8月8日、筆者撮影)

帰省のキャンセルは目立つが、旅行は予定通りに出発する人も

 完全に旅行や帰省を取りやめるのではなく、安全に最大限配慮した上で旅行をしている人も多く、東京駅でも通常のお盆に比べると圧倒的に人は少ないが、羽田空港同様に大きな荷物を持った家族連れや旅行者の姿が見られる。携帯電話の位置情報を活用した観光地の人出においても前年比50%以上を記録している場所も多く、まさに「with コロナ」時代の旅行の在り方とも言えるだろう。

 帰省については、高齢者に接する可能性が高いことから直前でキャンセルしたケースも目立つが、旅行については沖縄方面でキャンセルが多く出たが、それ以外の地域については、せっかく予約をしたのでそのまま「密」を避けての国内旅行に予定通りに出発するケースも多い。

羽田空港第1ターミナルのJALチェックインカウンター(8月8日、筆者撮影)
羽田空港第1ターミナルのJALチェックインカウンター(8月8日、筆者撮影)
羽田空港第1ターミナルのスカイマークチェックインカウンター(8月8日、筆者撮影)
羽田空港第1ターミナルのスカイマークチェックインカウンター(8月8日、筆者撮影)

GWに家に戻れなかった単身赴任者もお盆は自宅に戻れている

 またゴールデンウィーク期間中との大きな違いとしては、お盆期間中の帰省は高齢者との接触が増えることから取りやめているが、単身赴任者が自宅に戻るケースにおいては、ゴールデンウィーク期間中は家族から自宅に戻ることを拒絶させられた単身赴任者が多かったが、お盆期間中はほとんどの単身赴任者が拒絶されることなく、自宅に戻れているケースが多い。

関連記事:GWどうする?単身赴任者。新型コロナで赴任先に留まる人、テレワーク早期開始で早めに戻った人の心境(2020年4月24日掲載)

旅行や帰省することをSNSで書かないケースが急増

 いつもであれば、夏休みに旅行や帰省をしている様子をSNSやブログなどで発信する人も多くいるが、今年においてはSNSに一切発信しないで旅行や帰省をしているケースが急増している。フォロワーの中には色々な考え方があることから、余計な火種にならないように配慮しているようだ。いつもは積極的に旅の様子をSNSで発信している人でも慎重になっているほか、「マイル修行」「ポイント修行」のように、現地に滞在せずに乗った便でそのまま出発空港に戻るケースでも発信を控える傾向が強くなっている。

 SNSなどで発信する場合でも、安全面に考慮して旅行に出かけていることを書いた上で発信しているケースも多い。飛行機で旅行する人の中では、今年は特に空港到着後にレンタカーを借りて「密」にならない形で旅行をしている人も多い。ただ、沖縄方面への旅行を強行している人においてはSNSで発信することで、非難を浴びるケースが容易に想定できることから、特に発信を控えている傾向が強いようだ。

「with コロナ」の新しい旅行スタイル

 東京都民以外では、Go Toトラベルを活用して35%引きで、自宅から車で移動できる範囲内で宿泊する旅をしている人もいるが、多くの宿泊施設では感染者数拡大で満室にはなっていないが、ある程度の宿泊があることで経営的に救われているという話も多く聞かれる。

 新型コロナウイルスが収束するまでには、春に想定していたよりも長い時間がかかる可能性が高まっているなかで、安全面に最大限配慮し、感染状況を見ながら旅行をする「withコロナ」の新しい旅行スタイルを模索することになっていくだろう。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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